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世界経済に影響があるアメリカの債務上限問題

経済トピック
2023.05.19

アメリカの債務上限問題が世界経済に影響を与える可能性がでてきました。今回は、債務上限問題の内容、背景・経緯、今後の見通し、影響についてご紹介します。

 

債務上限とは、アメリカ政府が発行できる国債などの総額は法律で定められていることを言います。上限を引き上げるにはアメリカ議会の承認が必要となり、認めらなければ国債の元本や利息を支払うための資金が調達できず、債務不履行(デフォルト)に至ります。

 

現在、債務上限は31.3億ドル(4230兆円)ですが、既に上限一杯であり、上限を引き上げる必要があります。しかし、バイデン政権と議会下院の多数を占める共和党が対立し、引き上げる見込みが立っていません。これが債務上限問題であり、6月にはアメリカ政府の資金繰りは行き詰まるとも言われています。

 

ここまで至った原因として、コロナ禍による財政支出の拡大と政治対立の激化があります。

 

アメリカ政府は2020年以降、失業者への給付を拡大する等、コロナ禍対策として財政支出を拡大してきました。財政支出拡大は国債の大量発行に繋がり、債務は拡大しました。

 

こうした債務拡大は、伝統的に財政支出の縮小を目指す共和党の反発を招いています。特に支出縮小を信奉する共和党保守派の反発は大きなものです。共和党は下院の多数を占めていますが、過半数からの超過分は小さいため、党幹部は保守派の意向を無視できません。その為、財務支出縮小の声は更に大きくなっています。

 

このような背景があり、債務上限を引き上げたいバイデン政権と共和党の対立となり、債務上限の引き上げができない状況となっているのです。

 

今後の見通しは正直分かりません。現実にデフォルトとなった場合、アメリカ経済に与える影響が大きい為、最終的にはバイデン政権、共和党ともに妥協するとの見方もあります。しかし、年々アメリカ政治の二極化は激しく、双方妥協できないまま6月にアメリカ政府の資金繰りが行き詰まり、デフォルトに至る可能性もあります。もしデフォルトになればアメリカ建国(1776)から初めてとなり、アメリカの威信低下に繋がりかねません。

 

最後に、アメリカの債務上限問題が与える影響について考えてみたいと思います。

まず、アメリカの景気悪化が懸念されます。デフォルトになると、金利が上昇し、不動産ローンやクレジットカードの利息増が家計に打撃を与え、企業の投資も減速します。そうでなくてもアメリカは物価高や金利引き上げによる金融不安に直面している為、ここでデフォルトが加われば景気悪化に陥る可能性が高くなります。

 

アメリカの景気悪化は、日本の輸出産業にも大きな影響を与えます。また、デフォルトは日本の金融機関が保有しているアメリカ国債の価値も低下させ、銀行経営にも影響を与えます。債務上限問題は日本の景気にも影響を与えるものですので、しばらくの間注視が必要です。


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