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みじめな気持ちもときには大切

小宮一慶のモノの見方・考え方
2022.01.25

電車に乗っていると、私のように紙の新聞を読んでいる人はめっきり少なくなり、ほとんどの人はスマホ画面を見ています。もちろん、これ自体は別に悪いことではありません。スマホで新聞の電子版や本を読んだり、中には英語の勉強をしている方もいらっしゃるからです。スケジュールチェックやメールのやり取りをしている人もいます。

 

一方、スマホで朝からゲームをやっていたり、動画コンテンツを見ている人も少なくありません。ショップサイトのザッピングをしている人も見かけます。もちろん、これも咎めるほどのことではありません。私が問題だと思っているのは、スマホで勉強などの自己啓発をしている人と、単に暇つぶしをしている人の格好が、一見したところでは同じだということです。どういうことかというと、以前だと、朝の電車の中では、日経新聞を読んでいる人、一般紙の人、スポーツ紙の人、勉強の本を読んでいる人、小説の人、マンガの人、そして何も読んでいない人が、一目瞭然に分かりました。しかし、今は、皆同じ格好なのです。それでは、恥ずかしい気持ちや、向上心が湧きにくいと思います。ましてやみじめな気持ちにはなりません。

 

さらには、ユニクロやGUの洋服を着ていれば、見た目もきれいだし、どこへ出ても問題はありません。私も、今年はユニクロのコートを着ています。とても快適です。以前なら、着ているものも、高級品かそうでないかは結構分かったものですが、その差もないのです。つまり、今の時代は、スマホを持ち、ユニクロを着ていれば、恥ずかしい気持ちやみじめさを味わうことがないのです。しかし、そのことが向上心をおおいに削いでいることにも注意が必要だと私は思っています。

 

以前、あるお客さまで、MIT(マサチューセッツ工科大学)で学ぶ日本人学生の話をビデオで見たことがありました。彼の話で、驚いたことがありました。彼は20代なのですが、東大を半年でやめてMITに留学したそうです。MITでも成績優秀で、トップ10%に入っていたのだそうですが、それではダメだと思い、トップ1%の人を中心に付き合うことにしたそうです。そうすると、彼は「本当に惨めな気持ちになった」というのです。MITでトップ1%というのは、ノーベル賞級の頭脳を持った人も少なくないと思います。そして、ときには惨めな気持ちになることが大切だと、彼は後輩たちにアドバイスをしていました。

 

今のこの国では、普通にしていれば、惨めさや劣等感を味わうことが少なくなりました。ある意味良い社会かもしれませんが、向上心もなかなか生まれません。自ら惨めさを求めてより高いレベルを目指す人たちは、残念ながら海外に行ってしまうのかもしれませんね。


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