3月16日の日経新聞朝刊にて、森永製菓がチョコレート菓子「小枝」など50品の出荷価格を5月31日から順次引き上げられると報道されました。これは原材料や包装資材の価格上昇によるものであり、競合でもある明治でも5月1日出荷分から値上げすると報じられています。
著しい原材料の値上げの中、収益確保に向けては出荷価格の値上げは避けて通れない判断だったと思います。これに対して市場がどのように反応するのか不透明な点はありますが、その見通しを探る為、直近の菓子市場の動向について探ってみました。
2021年の菓子市場の状況はこれから明らかになると思いますが、2020年の菓子市場についてネット上で確認された2つの情報源の概要をご紹介するとともに、その市場動向を探ってみたいと思います。
「令和2年 菓子の生産数量・生産金額等(推定)に係るコメント」(菓子関連会社が加入する全日本菓子協会の発表 http://anka-kashi.com/images/statistics/r02.pdf )
・2020年はコロナ禍ということもあり、小売金額は19年3兆4,298億円から20年3兆2,242億円と対19年比で▲2,056億円、▲約6%減少しています。
・全体としては売上金額が減少している訳ですが、菓子の分類、商品別に見ると、その増減にはバラつきが見られます。
具体的には、職場の仕事の合間に食する「チューインガム」、「飴菓子」が減少したり、観光や贈答需要と連動しやすい「和菓子」、「洋生菓子」が減少する一方、巣ごもり需要により「ビスケット」、「スナック菓子」の売上が増加しています。
「製菓メーカー5社が語る「コロナ禍のビジネス戦略」売れた菓子、売れなかった菓子は?」(BUSINESS INSIDER https://www.businessinsider.jp/post-226534 )
・分類別の売上増減については全日本菓子協会の発表とほぼ同様です。加えて、商品別にみてみると、巣ごもりで毎日食べる為、小容量よりは大きな袋でまとめられた商品、及びロングセラー商品が好調に推移していたということが目にひきました。
これは私の所感ですが、ある程度長い期間に渡って食べていくという想定から、消費者があまり冒険することなく、無難なロングセラー商品を選択していたのでは、ということを考えました。
・但し、菓子メーカーもロングセラー商品に依存するばかりではなく、ロングセラー商品のリニューアル、新シリーズに取り組んだり、ウィズコロナを見据えた「ひとり時間で仕事や勉強の合間」に対応できる新商品に取り組んでいたことが紹介されています。
・また、不足するたんぱく質やビタミンが摂取できる健康志向の商品展開にも力を入れているとのことでした。
2つの情報源から見えてくることは、コロナ禍、ウィズコロナという環境変化の中で、消費者からみたお菓子の位置づけが、「職場での仕事の合間」や「観光用・贈答用」といった位置づけからより「家の中でのもの」の比重が更に高まったと言えそうです。特に2020年は、安心感・安定感といったイメージ連想からロングセラー商品が選好されたのではないでしょうか。
しかしながら、ロングセラー商品も元々こうした需要の変化を見越していたものではなく、本格的なウィズコロナ時代、またコロナに限定されない健康志向等の顧客ニーズに挑戦しようとしている菓子メーカーの動きも垣間見えるところです。
今回の価格値上げにより、消費者が菓子を選ぶ目が更に厳しくなることが想定されます。
その時にロングセラー商品に安住していたのか、もしくは新しい環境変化に対応しようとしていたのか、によって選ばれる菓子、選ばれない菓子がまた新たに見えてくるかもしれません。