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適正な「投資」のあり方を考えることの重要性

経営のヒント
2022.03.24

筆者がかつての職場にてご支援したオーナー系メーカー様のお話です。経営計画や生産改革などのテーマにて、数年に渡ってご支援差し上げました。同社は社歴数十年、人が口にするものを生産・販売するなか、環境変化の波に乗って成長し、売上高は10年程度で二桁億円台から数百億円にまでなりました。

 

筆者への依頼の背景には、様々な「内部固め」が十分できてこなかった、組織のほころびが出始めていた、などへの経営陣の危機感があったと記憶しています。

ようするに、急に市場が形成・拡大していく中でそれに乗り遅れまいと各機能(営業、生産など)ごとの“規模拡大”を優先して成長したものの、直近では成長鈍化むしろ減少の入口が見えてきて、いざ足元を見てみると、「様々なことが企業・事業規模に見合った形で整備できていないのではないか」とお感じになられたのだと思います。

 

こうして、最初のテーマとして経営計画作成のご支援が始まりました。経営者(オーナー)の方には大きな信頼・期待を頂いてスタートしたにもかからず、部門長などからは売上高以外の数字情報や生産関連の情報を頂けない、工場内の視察をさせて頂けないなど、ご支援を進めるにあたっての紆余曲折はありましたが、どうにか、筆者らは限られた情報の中で計画作成やPDCA、生産改革などの一連のご支援を差し上げ、同社を離れました。

 

問題はここからです。その後、生産現場での“人的ミス”がきっかけとなり、同社製品を口にした消費者に甚大な被害が生じてしまいました。その後の原因追及で様々なことが明るみになっていきます。直接的な要因は“人的ミス”ですが、実際の製造工程が標準作業手順書(SOP)に準拠していない、むしろ正規の手順書とは別に裏手順書を作成・運用、品質検査の省略、品質管理データの改ざんなど、本来あってはならないことが行われていたようです。全部か一部かはわかりませんが、こうした実態を経営層も認知していたにも関わらず長年黙認され、かつ、現場からの指摘も黙殺されていたようです。残念ながら、参画していた筆者らにも一切明かされていませんでした。

 

※実際の状況を大幅に改変して記載しております

 

<上記事例から思うこと>

同社は高い営業利益率(20%台)と大変潤沢な現預金を有していました。業界内でも、さらには、一般的にメーカーとしてもかなり高水準で、ゆえに当時から、将来に向けた投資(生産現場(Man, Machine, Method)の改善投資など)が少ないことを課題にも挙げていたのです。規範意識の醸成含めた現場人材への教育投資、ミスや不正を未然に防ぐフェイルセーフの仕組み、チェック体制、さらには現場の様々な声を経営層が吸い上げて改善していく仕組みなどへの投資も含めてです。

 

前述の事象をあらためて考えみると、コンサルタントへの情報提供がスムーズでなかった点は「うしろめたさ」「実態を明らかにされたくない」などの思惑を感じますし、残念な結は、いつかは起こるべくして起きてしまった、のかもしれません。

一歩引いてみると、売上・利益の規模を追求するあまり、本来必要であった「投資」がなおざりにされてきてしまったがゆえ、なのだろうと思います。

「投資」とはハード面の設備投資だけを意味しません。IT技術を使う・使わないに限らず、ソフト面での、経営層と現場とのコミュニケーションの“仕組み”、部門間・部署間の連携の“仕組み”、従業員個々における規範意識やそこで働き続けることへの意識・働きがい、これらの“仕組み”を適切に運用する知識・技能なども経営にとってすべて「投資」の対象です。

ハード面は目に見えるがゆえにわかりやすい面もあるので、むしろ注意深く現状を捉えて意識的に施策展開していく必要があるのはソフト面の方かもしれません。

自社では現状が日常すぎて上記のようなソフト面を具備しているのか・いないのか、機能しているのか、といったことが見えにくくなっているのならば、まずは点検のために「外の目」を活用するのも一手なのかもしれません。


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