本日は、
「俯瞰して景気の全体像をとらえる景気指標も、一歩掘り下げると具体的な実感の湧く情報とつなげて理解することができる」
というお話をしたいと思います。
GDPや消費者支出、機械受注等の景気指標にアンテナを立てることは、日本や世界の景気動向の全体的な動きを俯瞰してとらえることにとても役に立ちます。また、お客さまの事業に合わせて景気指標を活かして、経営判断や、経営陣全体でアンテナの角度を広げること、日々の仕事に役立てていただくこともできます。
経営会議などで、景気指標を議題として経営の現状や先行きについて議論することはとても大切です。最初は空回りするかもしれませんが、積み重ねていくうちに仕事と景気指標がつながってきて、アンテナが立っていきます。
ただ、積み重ねていく前に空回りしすぎて、外部指標に関する議論項目自体がなくなってしまうケースもあると聞きますし、私も実感があります。お客さまの経営会議などで景気指標を活用して外部環境の状況を皆さんに説明して理解していただく際に、不慣れな段階でもある程度空回りしないために「一歩掘り下げて具体化する」ことをご紹介したいと思います。
例えば「機械受注」であればさらに1歩深掘りをして、産業別の機械受注の動向などを見ることによってよりお客さまの会社の実情や、お客さまの実情にフィットしてとっつきやすくなります。
お客さまの経営会議に一緒に参加している弊社の野間が、弊社が活用する景気指標を一歩踏み込み、内閣府の資料から機械受注の業界別のものを添付してお客さまに提示しました。そのことによって、お客さまの中での議論が一気に花開きました。
お客さまに対してより自分事として捉えていただくためには、その機械受注をさらに踏み込んで産業別で把握することが大切です。参加している方が興味を持っていただけるところまで、ともすれば抽象的になりがちな指標を具体化していくことで自分事、お客さま事をしていただけるようになります。
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/juchu/2022/2204juchu-1.pdf
(内閣府 機械受注統計調査報告(本文))
2022年4月における機械受注は前年同月比で+19%となっており、全体的に見れば投資意欲が旺盛であることが見て取れます。一方で、同じ2022年4月においても、内閣府の機械受注統計調査報告書を見ると、需要者が非鉄金属の業界の機械受注については、△77%となっています。
そのため、お客さまの業界やお客さまの主要顧客が非鉄金属にかかる製造業である場合には、その先行きに対しては楽観視できるものではありません。非鉄金属についてはロシアのウクライナ侵攻による先行き不透明感も影響しているものと思います。全体としての機械受注は景気の先行指標なので、全体だけを見て前年対比19%伸びているので先行きは悪くないと言うような認識を持っていただくとミスリードを促すことにもなります。
目的に応じて、景気指標についても鳥の目と虫の目と言うようにフォーカスを調節しながら見ていきたいものです。
特に、俯瞰して経済のこと見ることに慣れていない方であればあるほど、今の仕事に直結してイメージできる具体的な事柄に興味を示していただきやすいと思います。
また、同じく会議に同席した野間からの情報なのですが、景気ウォッチャー指数と言うものがあります。これは中小企業の経営者の方やタクシー運転手の方など景気に敏感な人からヒアリングをして数値集計をしているものです。
この景気ウォッチャー指数も全体間で捉えて日本全体の動きを把握することも大切なのですが、内閣府のホームページに「景気ウォッチャー調査 景気判断理由集」という項目があります。この欄にはインタビューの結果の概要が記載されており、エリアと業種ごとにその人たちが実感している声が載っているのです。
https://www5.cao.go.jp/keizai3/2022/0512watcher/watcher2.pdf
(内閣府 景気ウォッチャー調査 景気判断理由集)
例えば、
近畿の木材木製品製造業(経営者)
「あまりの早さでニュースが進んだため、すぐには対応できず、販売価格にも転向できていないため、現在は取引が逆ざやに近い状態である。今後は販売価格への転嫁や、船の運賃の適正化等で利益を確保し、売り上げの増加につなげるよう努力していく。」
といったような具体的なコメントが、エリアごとに、業種ごとに記載されています。
公表情報と言うものは、このようにリサーチしてみるとかなりの部分が具体的に見えてきます。もちろん優先順位や、状況次第ですけれども、活用しない手はないと思います。
実際に数字だけで捉えるよりも、このようなインタビュー結果の声を聞くこと、それと普段接しているお客さまからの声を照らし合わせながら総合判断すると言うことができれば、景気判断、先行き予測や、現況判断に深みが増します。
このように新聞や経済指標などを見るときは、関連する情報を一歩踏み込んで見てみることも役に立つのではないでしょうか。