空き家問題が深刻になりつつあります。
数年前に、「未来の年表」(河合雅司著)という本がヒットしたことを覚えている方もいらっしゃるかもしれません。
未来の年表は、日本の主に少子高齢化や人口構造問題から未来の日本において起こりうることを予測した本です。
書籍の表紙を見るだけでも、
「2020年に女性の半数が50歳以上」、「2024年に全国民の3人に一人が65歳以上」、「2022年3戸に1戸が空き家に」、「2039年に火葬場が不足」 など、厳しい年表がつづられています。
9月4日の日経新聞の1面にも「家余り1000万戸時代へ」という記事がありました。
2018年の住宅総数6241万戸程度であり、そのうち既に849万戸(13.6%)は今の段階でも空き家であるということです。
更に、そのような状況において2023年には6546万戸へ住宅が増える(5年で300万戸程度の増)ということです。
単身世帯の増加などによって人口減少時代に関わらず世帯数は減っておらず、すでに1割以上も空き家という環境の中で新たに住宅が増加していることになります。
ピーター・ドラッカーも言うように、人口動態は非常に予測しやすい外部環境指標となります。
中長期的に見れば、単身世帯も高齢世帯が多く、いずれ空き家になるものも多く存在すると考えられます。何かとてつもない出来事が起こらない限り、人口動態など構造的に予測可能な事実から導き出されることは実現していきます。
少子高齢化に起因した問題としては、ここ10年ほど取り沙汰されている後継者問題も上げられます。
経営者の平均年齢は60歳を超えており、後継者不在率は6割を超えているといわれています。
会社においても住宅と同様に、空き家問題が深刻化しているといわざるを得ないでしょう。
会社経営においては、空き家は許されません。そこにはお客さまもいらっしゃり、従業員さんもそのご家族もいらっしゃいます。
この経営における空き家問題も含めると、日本は二重の空き屋問題に苛まれているといえるかもしれません。
住宅の空き家であれば、空き家データベースを作成し移住などの希望者とのマッチングを行い、必要に応じたリフォームや建て替えを行い有効活用ができるものもあるかもしれませんし、そのような取り組みが一部で進行しています。
会社の空き家問題(後継者不足)についても、M&A仲介会社などがそのマッチングの役割を担っておりビジネスが活況に推移しています。(上場会社の年収上位ランキングをみても明らかです)
ただ、会社の空き家問題の顕在数に対してマッチング機能が少ないという点と、住宅の空き家と比べてまだ空き家になる前の意思決定が求められるという心理的な面からも順調に引継ぎが進んでいるとはいいがたい面があります。
今後、「未来の年表」などでも構造的に予想される人口構造問題に起因する社会的現象や、人口構造問題以外の、例えば世界のEV化など、すでに趨勢が決まってしまい動き出した事態(将来の自動車のガソリン車、EV車、HV車の構成比はあたかも人口構造の年齢別構成比を示しているように見えます)から想定されることなど、時間の経過とともに顕在化することから目を背けずに、正面から向き合ったときに社会に対してできることはなんでしょうか。
悲観的になることは簡単ですし、私自身もそのような気持ちは隠せませんが、向き合って解決するスタンスの中から見える大きなチャンスがあることも事実です。例えば、後継者不足の課題などはそこをうまく事業基盤の拡大につなげることもできるかもしれません。
経営において外部環境を洞察する際など、見たくない現実も踏まえてリスクシナリオを想定し、そこに向き合っていく姿勢が求められるといえるでしょう。見たくなさすぎることほど皆が目を背けるので、ひょっとしたらその中にチャンスの芽が隠れているかもしれません。