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多勢は要らぬ。一人でいゝ

今週の「言葉」
2022.10.07

今週の「言葉」は、西郷南洲思想(西郷隆盛の思想)の継承者として有名な頭山満の遺した言葉です。『頭山満言志録』では次のように記されています。

「如何なる大事業にも、決して多勢は要らぬ。一人でいゝ」、誰一人誰が何と云っても俺がやり抜くと云ふ、真に決心有る者が立てば必ずや大成するものぢや。」(原文ママ)

 

頭山はこの言葉の意味をキリスト教や仏教の起こりを例にして次のように解説します。

「数億の信徒を有する基督(キリスト)の大宗教も釈迦の仏教も、詮じつむれば基督一人の信であり、釈迦一人の信である。僅々一人の信念の深さ、之が即ち世を蓋(おお)ふの大宗教の本体ぢや。」(原文ママ)

 

頭山満の私淑する師は常に西郷でした。その幕末維新の業を最後は自らの死を以って西郷は大成しましたが、その死後、西郷家を訪れた頭山が半ば勝手に借り受けた西郷の愛読書が大塩平八郎(江戸後期の陽明学者、大坂町奉行与力)の『洗心洞箚記』(せんしんどうさっき)です。陽明学とは「致良知」「知行合一」の二つを原理とし、良い心の実践を重んじた学問です。この陽明学が武士道とも融合し、佐藤一斎、佐久間象山、吉田松陰、そして西郷等、幕末の志士に浸透し、後の明治維新の推進力になったことは疑いの余地がありません。

 

明治の近代化から約150年。現代は、資本主義、自由主義を基軸にした社会にある中、昨今は個人も国家も国際社会も混迷の度合いを強めていると観るのが多くの識者の一致したところの様相です。その基は何かを問えば、自主・独立した個人と国家の少ないことではないでしょうか。お互いに依存の度合いを強めてきましたが、その根本は常に自主・独立なのです。『大学』にあるように、平和も自由も、国が良く治まるのも、常に「修身斉家治国平天下」、つまりは個の修身からなのです。頭山は「修身こそ最強」とも言います。これが弱まると世の中が乱れる。大塩の前著では「人間は本来、完全であり、自由である。」と説きます。人間一人ひとりには固有の無限の可能性があるとの意です。

これはドラッカー先生の「誰もが良い資質をもっている」ゆえにそれを発露させることが世の中をより良くする根本だとの教えと同じです。お釈迦様も「自己こそ自分の主である」とし、「戦場において百万人に勝つよりも、唯だ一つの自己に克つ者こそ、じつに最上の勝利者である。」(『ブッダの真理のことば 感興のことば』岩波文庫)と頭山の言葉と相通じています。

 

過日、ユーグレナ社長の出雲充氏が「4年後の2025年には、明治維新の時のような、あるいは終戦の時のような、信じられないほどの価値観の変化が起きます。」(グロービス主催、あすか会議2022、第2部全体会「爆速経営~激変するマーケットで成長を実現する方策~ 」)と仰っていました。

それは「社会に貢献したい」を働く動機にしたミレニアル世代(198095年に生まれた世代)とZ世代(96年以降に生まれた世代)が、労働人口の半分を占めるようになるからとの意見でしたが、それは大いに賛同するだけではなく、原点に返る思いです。いわば「先義後利」、原理原則です。

社会への貢献は一人ひとりの正しい考え方に基づいた自立、そしてその実践を通じてのみ、「一隅を照らす」のです。失敗はその成就のための糧です。組織はこうした自立心のある一人ひとりが土台でなければただの烏合の衆です。理念は自らが共感するもので、教えられるものでも押し付けられるものでもない筈です。

ミレニアル世代をはじめ真の自立とは何か、頭山満や福沢諭吉の書でも良いし、或いは山田恵諦『一隅を照らす』(大和出版)も大変読みやすくこのことを導いてくれます。

真の世の為人の為に尽くそうとする社会の原点回帰、またそうした社会を次世代に引き継ぐため自らも実践してゆく、そうしたリーダー(同志)を一歩一歩育んでいくことに今後も貢献してゆきたいと、頭山の一言を以って心を新たにした次第です。


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