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一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂うること勿れ。只だ一燈を頼め。

今週の「言葉」
2022.12.16

出典:佐藤一斎『言志四録』

 

今週の「言葉」は、ちょうど一年前にKCクラブで推薦図書としてご紹介した知る人ぞ知る佐藤一斎『言志四録』の根幹をなす一節を選びました。

佐久間象山、河合継之助、西郷隆盛、そして吉田松陰などをはじめ、実に多くのリーダーの行動の火種となり、幕末維新の志士たちの根本思想になった本書。

西郷は直接の門下生ではありませんが佐藤一斎先生の『言志四録』全1133条の中から西郷が熟読の後、特に心に残った101条を選び出し、自ら書き留め、常に傍らに置いたものを死後、旧高鍋藩主の秋月種樹(あきづきたねたつ)が出版に向けて動き、明治211888)年に『西郷南洲手抄言志録』として世に出したものも残っています。

さらに西郷の人柄を大変気に入っていた明治天皇が西郷の抄録した本書を読まれ、「朕は再び西郷を得たぞ」と言わしめた書でもあります。

 

一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂うること勿れ。只だ一燈を頼め。

この言葉の意味は、「永い人生のうちには、暗い夜道を歩くようなこともある。しかし、ひとつの提灯を提げていけば、いかに暗くとも心配することはない。その一灯を信じて歩むほかはない。」との意です。

人生でも、経営でも、そしてあらゆる仕事においても、ゴールの見えない暗闇を歩むときがあります。そんな時に「一燈」を頼むものがあるか?と問う強烈な一言。この場合、経営に置き換えて考えれば「一燈」とは理念、信条、ビジョンとして置き換えると分かりやすいでしょう。また個々の人生においては、志、生きる目的、或いは座右の銘(信念まで高めたもの)とも言い換えることができます。

 

わたしは複数の企業でリーダー塾を実践させて頂いております。時期的に最終成果課題としてビジョンを語って頂いたり、学んだことをどう実践するのかといったことを発表してもらっています。

知ったことは即実践、これは『言志四録』の根本教義である「陽明学」の基本理念である「知行合一」に通じます。幕末志士たちのあの行動力、現代では三島由紀夫さんの姿を思い浮かべれば、相当強烈な行動力を生み出した教義です。

いま私たちに不足しがちな深い思考力と共に、この行動力。行動力の根幹にあるのがこの「一燈」をもっているかどうか、になるわけです。特にリーダーを務める人、或いは自分の人生のリーダーたらんと思う人は、自分を突き動かす何かを心に抱いているか、このことを深く見つめなければなりません。その心は常に言動に、或いは組織の長であればビジョンに直接的に表れます。それゆえに、関わる多くの人々の人生にも影響するのです。

 

実は、似た言葉は孔子も『論語』の中に残しています。最後にその一節を紹介します。

 

「子曰わく、賜や、女予れを以て多く学びてこれを識る者と為すか。対えて曰わく、然り、非なるか。曰わく、非なり。予れは一以てこれを貫く。」(出典:『論語』衛霊公第十五の三)

「孔子がおっしゃった。『子貢(弟子の一人)よ、お前は私が多くを学んでそれらすべてを理解しているとでも思っているのか?』すると子貢は、『はい、思っております。違うのですか?』と答えた。すると孔子は、 『違う。私はただ一つの事を貫いているだけなのだ。』とおっしゃいました。」のとの意です。

 

皆さまの人生の目的、或いは、仕事における目的が達せられるために、その「一燈」を提げて先行き不透明な時代をしっかりと歩まれること、祈願いたします。


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