最近読んでいた2冊の本に同じようなことが書いてありました。一冊は松下幸之助さんの「物の見方 考え方」(PHP文庫)、もう一冊が日本ハムファイターズを2度の日本一に導いたコーチ、白井一幸さんの「神コーチング~人が育つ言葉」(日経BP)。白井さんは雑誌の連載も寄稿されていて、それも楽しみに読んでいます。タイトルの言葉は白井さんの言葉です。
白井さん曰く、「俺が責任を取ってやるから、思い切ってやってこい」は大間違い、ということだそうです。一見格好良いし、なぜ?と思いませんか。
白井さんによると、その理由はこうです。
・自分に責任がないと思えば、部下に言い訳の余地を作ってしまい、本気でやろうという気持ちを削いでしまう。
・俺が責任を取ってやるといいながら、うまく行かなかったときにその部下を責めがちであり、そうすると信頼関係は崩れる。
・そもそも、会社で起こることは全部経営者が、部下が行う仕事は上司が、責任を取る覚悟を持っているもの。口に出すまでもなく、任せた結果失敗したら、任せた側が責任を取ることはいうまでもない。
ではどのような言葉をかければよいかというと、「君の仕事を見ていて、自信をもって任せられると思うから、自分の責任においてしっかりやってくれ。任せたぞ。」と相手に責任を与えるのだそうです。その責任感が行動力を生むし、試行錯誤もする。
そしてうまく行かなかった場合も「結果の責任は任せた自分にある」と、頑張りには感謝を伝え、結果からは学びを促し再度チャレンジの機会を与えるべきと仰っています。
もうひとつ、前提として白井さんが言われているのは「すべての仕事は任せられる人にしか任せてはいけない」ということ。
責任を持たせ任せるまえにしっかり教育をし、判断力を養い、この人に任せられるかを見極めること。任せられないと見極めた人には任せてはいけない。これがなくては、良い結果も期待できませんし、本人を潰してしまう事にもなりかねないからです。
一方の松下さんは、こう述べられています。
「まどろこしい点もあるであろうが、部下にまかせるということが必要である。~(中略)~なるほど経営者とか指導者は率先垂範して仕事をする責任があるが、それは基本的な心構えの上でのはなしである。仕事は一人ではできない。一度に四方八方へ目を配ることもできない。それ故に部下の人たちに、それぞれの責任でそれぞれの立場で仕事をしてもらう必要があるのである。それには部下をいたわり、鞭撻し、彼らが仕事をできるように与えるという態度が経営者の立場にある人たちには望ましい。~(中略)~しかし、こうはいっても、ここで絶対に忘れてはならないことが一つある。それはどんなやり方をしても、責任だけは自分にあるのだということを、はっきりに認識するということである」
松下さんは、コーチングという言葉はご存じなかったかと思いますが、部下にとって重要なのは、自分の頭で振返り、成功や失敗を見出しかみしめる体験を重ねることということだと仰っています。自分で責任をもって考え、創意工夫できる人が会社の未来をつくると考えられていたからこそでしょう。
そして、これからの時代においては、このように人を育てることは、ますます必要なことだと思うのです。