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日銀新総裁は金融政策を正常化せよ!

小宮一慶のモノの見方・考え方
2023.02.14

日銀の新しい総裁に経済学者の植田和男氏が4月から就任する予定です。日経新聞は最有力候補だった雨宮副総裁は辞退と報じましたが、それほど今後の日銀の金融政策運営は難しいということでもあるのでしょう。アベノミクスを推進し、「異次元」と言われるまでの金融緩和を行い、一時は景気浮揚に成功したものの、任期の後半にはそのカンフル剤が利かなくなり、異例の10年国債利回りの金利調整まで行う「イールドカーブ・コントロール(YYC)」を行いましたが、金融政策に限界が来ていることは明らかです。

アベノミクスにより、日銀はもうこれ以上できないくらいに金融緩和を行ないましたが、アベノミクスは日銀を「使い切った」と言ってもいいでしょう。これを少しでも正常な状態に戻すことが急務です。その理由はいくつもあります。

 

ひとつは、少しでも金利を上げておかないと、次に景気後退が来たときに何もできないからです。米国では、コロナにより政策金利(一日だけ銀行間で貸し借りする金利)をゼロ近辺まで落としましたが、景気の回復やインフレに対応するために、現状では4.5%~4.75%に誘導しています。景気後退に備えて「のりしろ」を作ったわけです。景気後退に備える「フリーハンド(自由度)」がそれだけあるのです。

一方、日本では、米国同様の政策金利はゼロにへばりついたままで、10年国債利回りの上限も0.5%しかなく、次に景気後退が来た時の自由度はほとんどありません。アベノミクス開始当初135兆円だったマネタリーベースも現状では640兆円とほぼ限界まで膨らんでいます。

もうひとつの大きな理由は、国民生活のためです。2000兆円と言われる個人金融資産のうち、約半分の1000兆円は預貯金です。もし、これに1%でも金利がつけば、10兆円の金利がつきます。約20%の税金がかかりますから、8兆円が国民の懐に、2兆円は税として国に入るわけです。2%ならその倍です。

この話をすると、借金の多い企業などが大変という話をする人がいますが、この国がここ30年間ほとんど成長していない大きな理由は、ゾンビ企業が多く生き残っていることだと私は考えています。ゾンビ企業で働く人は給料も高くなく、十分な社員教育も受けられません。政府がM&Aの後押しや社員研修に支援するなどしながら、金利上昇により企業の新陳代謝が起こることのほうが望ましいのではないでしょうか。

金利が上がれば、名目GDP250%程度の財政赤字を抱える政府も大変になるという意見もあります。もちろんその通りですが、金利が上がれば、現状日銀に実質的にファイナンスを押し付けている財政の規律についても、もう少し真剣に考えると思います。

多額の国債を抱える日銀も金利上昇により、その国債の含み損が増えるという懸念がありますが、日銀が原則としている国債の満期保有のスタンスを貫けるなら、日銀は金利上昇により実質債務超過となっても、当面は問題は起こらないと考えられます。

現状の異常な金融政策を継続することは、日銀のみならず、日本経済の将来のためにも良くないことは明らかです。急激な引き締めは現状無理としても、新総裁には徐々に「まともな方向」に政策を転換していくことを強く望みます。


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