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技能実習制度廃止に向けた動き

経済トピック
2023.04.14

4月10日に政府の有識者会議が、外国人労働者の受入制度の一つである技能実習制度の廃止と新制度創設を提言しました。

年々人手不足が深刻化している中、外国人労働者は大事な働き手となっており、経営者の皆さまのご関心も高いと思います。今回は、現在の技能実習制度の概要と問題点、有識者会議の中間報告案、また今後の見通し、課題について考えてみたいと思います。

 

【現在の制度概要及び問題点】

現在の技能実習制度の概要は下記の通りとなります。

①趣旨:    人材育成を通じた国際貢献

②転職:    技能を学ぶことが目的である為、転職は原則不可

③日本語能力: 特に定めなし

④職種:    87職種に特定

⑤監理団体:  監理団体による監督が必要

 

従来より、現状の制度に対していくつかの問題点が指摘されていました。

まず①ですが、人手不足が深刻化する中で、実態としては人材確保として利用されており、制度の趣旨と実態が乖離しています。

 

また、②の「転職は原則不可」も大きな社会問題を引き起こしています。多くの企業が実習生の方々に適切に処遇する一方、セクハラ・パワハラや賃金不払い等に直面する実習生の方もいます。転職が原則不可となっている為、実習生の方々がこのような状況に直面しても、我慢するか、もしくは失踪して不法就労することが多発していました。

 

③の監理団体による監督についても、監理団体と企業が癒着し、監督が不十分な場合があるとの指摘もあります。

 

これらのような問題もあり、技能実習制度は海外からも批判を受けています。今後、国内で更に働き手が減少する中で、有識者等の間では制度見直しの必要性が従前から提起されていました。

 

【有識者会議の中間報告書案】

上記のような問題点も踏まえ、有識者会議では、現在の技能実習制度を廃止し、新規の制度を創設することを中間報告書の中で提示しています。

①趣旨:    人材確保と人材育成

②転職:    一定の制限のもとで現行から緩和して転職を許容

③日本語能力: 就労開始前に一定の日本語能力を求めることを検討

④職種:    特定技能制度における12分野と一致させる

⑤監理団体:  不適切な団体を排除させる為、要件を厳格化

 

前述の通り、現行制度が人材確保で利用されていることを直視し、人材確保を趣旨に明記しています。

 

また、転職を認めることで、実習生の方々が不条理に我慢したり、失踪したりすることを防ごうとしています。また、監理団体についても不適切な団体を排除することとしています。

 

【今後の見通し、課題】

今回は、中間報告案ということですので、最終報告ではまた変わることがありえます。

特に、転職の緩和については、「給料が高い職種の人材が流出してよりいっそう、人手不足に陥る産業が出る」との声もあったようで、一定の制限がかけられる可能性もあります。

 

いずれにしても、今回の制度見直しは外国人労働者受け入れの大きな転換点となりそうですので、今後も注視していきたいものです。


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