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育てる側と育つ側:人材育成の真実と成長を促す対話の力

経営のヒント
2023.08.22

私はよく、人は育てるものか、育つものかという問いを立てることがあります。
その狙いは、育てる側である方々に、ジレンマに向き合っていただくことにあります。

「育てる側」といっている時点で矛盾をはらむトピックなのですが、なんとか部下に活躍してほしいと願っても思い通りにならないことがあります。だから、放っておこう、そもそも自分も勝手に育ってきた、と考えたりします。…とはいえ、本当にそれで良いんだろうか…と、モヤモヤしてほしいのです。

私の考えは「育つようにする」というものです。

植物にたとえるのも語弊があるかもしれませんが、やはり勝手には育たないですよね。いや、雑草は勝手に育っているという向きもあるかもしれませんが、彼らも、どこでも育つわけではありません。育つ環境に恵まれて育ちます。土壌や日光、水などです。

私たちにできるのは環境を整えることや、ときに適切な水や肥料を与えることです。育つこと自体は、彼らしかできません。機が熟さないと花も咲かないし、実もできません。その時を私たちは待つしかないのです。

人材育成の研究知見にロミンガーの法則というものがあります。「人が成長する7割は業務経験、2割が薫陶、1割は研修である」というもので、70:20:10の法則ともいわれています。この法則の解釈には注意が必要です。決して、業務経験だけが重要ということではありません。この結果は、経営幹部として活躍する人たちに「これまでに役立った出来事」について聞いた内容を分析したものになります。回答者は「仕事での経験に上司からの助言、研修による気づきによって今の活躍がある」といった答え方をしています。つまり、複合的なわけですね。

だから、経験だけで勝手に育つわけではない、薫陶や研修によるインプットも大切なのです。植物でいえば肥料のようなものです。また、そのタイミングも重要です。成長を見守り、次のステージにいくための機会を適切に作っていく必要があります。

繰り返しますが、育つことは本人にしかできません。

自分の後継者を育てよ、という話もありますが、大切なのは、何を基準としているかです。自分と同じようなことができるようになることを求めるのか、それとも自分も想定していなかったような活躍を求めるのか。こう聞かれれば、後者ということになりますが、現実には、前者のアプローチをとっていることが多いと思います。

自分と違う相手に自分と同じことを求めるのは無理があります。

そもそも、本当に相手のことを私たちは理解しているでしょうか。

ここで、人間と植物との違いをあげるとすれば、相手との対話があります。部下は、何を感じていて、どうなりたいのか、何を大切にしたいのか、対話によって、私たちは相手のことを知ることができます。また、私たちと対話することで彼らのリフレクションが進み、育つきっかけとなるでしょう。つまり、これが上司からの薫陶です。

加えて大切なことは、その対話を通じて、「育てる側」である上司もアンラーンすることです。自分とは考え方が違う相手との対話から、相手へのアプローチを変えることを学んだり、自分の先入観によって、相手と組織の可能性を狭めてしまっていることに気づく機会となります。

そのような建設的な相互作用を起こしたくて、ときにモヤモヤするような問いを投げかけています。


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