最近、企業経営では「DE&I」という言葉が聞かれるようになりました。
DE&Iとは、組織における、Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包摂性)という3つの概念を表しています。
「多様性」のなかでも、女性活躍については特に大きく取り上げられることが多いですが、ここでいう多様性はもっと広いもので、性別や年齢、国籍、障がいの有無、価値観、趣味嗜好等も含みます。
大企業は今やDE&Iへの取り組みを重視しているのは明らかですが、実は中堅・中小企業の経営においても重要になってくることではないかと思っています。
一つめの理由として、日本企業における一つの大きな問題は、労働人口の減少であり、中堅・中小企業における採用の難易度はますます上がっています。中堅・中小企業こそ、多様な人材を活かしていかねば、とても必要な人材を賄うことはできないのです。
ただし、単に労働力を賄うためだけを理由にして良いのでしょうか。
そうではなく、多様な人材を活かすことこそが、これからの企業経営にとってもプラスになると考えます。これが二つめの理由です。
社会を取り巻く環境は多様な人や価値観で構成されるようになっており、変化もとても早くなっています。今や単一の価値観しか持たない組織は、とても変化について行けず、多様なお客さまの声も聴くことができないのは自明のことです。たくさんのアンテナで変化を掴み、多様な力や強みを柔軟に組みあわせて活かし、組織の強みに変えていくことが必要です。老いも若きも、性の違いも、国の違いも、すべての力が必要なのです。
現代のマーケティングとイノベーションを起こす組織は、多様性を包摂する組織なのです。
最後に、DE&Iの実現におけるポイントを一つお伝えします。
少し前まではDE&Iは、D&Iという二つの概念で、多様な人材を喜んで心理的安全性を持って受け入れる環境を指していましたが、そこに「公平性」という概念が加わりました。「多様性」の実現において、よくある誤解が「平等」です。「平等」は、みなが同じ条件の下であるということを指します。一方で、「公平性」はその力を発揮する機会が同じになるように、必要に応じて一人ひとりに合わせて条件を調整することを言います。
壁の前で背の高さが違う人たちが並んでいるときに、背の高さに合わせた台に乗っている絵を見られたことがある方もいらっしゃるでしょう。
例えば、力のいる仕事の現場で、補助マシンを導入するなどして体格差のある女性でも同じ成果を出せるようにする、日本語が流暢ではないスタッフにも分かりやすい図解のマニュアルを用意するといった例が挙げられます。
多様性を包摂するために必要なのがこの「公平性」なのです。この「公平性」を理解していることは、企業のなかの多様な人材活用の取り組みの基準においてとても重要です。様々な場面で何が正解か迷ったときは、この「公平性」について考えてみてください。
DE&Iという流れにおいて様々な取り組みや工夫が始まっています。それを面倒なものだと受け取るのか、チャンスだと受け取るのか。
持続可能な企業は、きっと後者であると思います。