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贅肉を落とし為すべきことに集中する-ドラッカーの製品類型から-

経営のヒント
2024.01.10

正月休みでなまった体を動かしに久しぶりにスポーツジムへ行きましたが、年齢を重ねるごとに運動不足と贅肉が悩みの種となっています。

さて、企業の経営でも同じようなことが起きているのではないかというのが今日のお話です。

若い企業と創業して時間が経った企業の違いとして、長年行ってきた事業、商品やサービスの在り方、商習慣や社内慣行等が何層にも重なっているということが挙げられます。良い意味では「経験」です。一方で「不要なもの、見直すべきものが認識されないまま放置されている」という負の意味も持ち合わせます。

現代は環境の変化が激しく、自社を取り巻く環境やお客さまの変化に敏感である必要があります。その変化を感じ取り先を見て、適切なタイミングで動くことが求められますし、既存の商品やサービスが陳腐化することを織り込んで、常に一歩先の準備をし続ける必要があります。

そのうえで、特に中堅・中小企業のように人や資本のリソースが限られている企業様の場合は、常に「自社のリソースを適切に配分し続ける」ことが特に課題となります。「今」において収益を最大化するために、また、「少し先の未来」において新しい収益の柱を作るために何にリソースを「今」投じるべきかという選択が必要になります。
具体的には、お客さまや市場からみての価値を測り将来性や成長性を検討すること、実際の売上の数字から先行きの兆候を見つけること、成果としての収益状況を見て課題を発見すること、そのような活動を常に行い、不要な事業活動(=贅肉)を捨て、必要なものにエネルギーを使っていくことが企業を成長させ存続し続けていくために必須なのです。リソースが限られた規模の小さな企業ではこのリソース配分による経営への影響が大きいため、特にしっかりと見極めてバランス感覚を持って取り組む必要があります。

見極めるべき対象は、商習慣や社内慣行もありますが、今回は事業や商品・サービスについて見極めるための類型として、ピーター・ドラッカー氏の「創造する経営者」に紹介されている11の分類をご紹介します。少し長いですが非常に参考になる内容です。類型の解説内容は書籍の表現を踏まえつつ分かりやすくまとめてみました。

1)今日の主力製品
現在ピークを迎え、大きな売上、利益をあげ、貢献利益が大きい。ゆえに資源配分が過剰になりがちなことに注意し適切な資源配分を心掛ける。

2)明日の主力製品
すでに貢献利益が高く、これから大きな成長を待つ商品。放っておいても好調であるがゆえに資源を追加されていないことがあるが、ここにこそ十分な資源を投入し大きな成長を促すべき。

3)生産的特殊製品
限定された特殊な市場でリーダーシップを持つ効率的な製品。

4)開発製品
市場に導入中の潜在成長力を期待される製品。最高の人材を充てるべきだが人数は抑える。注意するべきは10)の製品にならないこと。

5)失敗製品
対処の必要がない問題製品であり、自ずと市場から消える。企業が健全であれば失敗のリスクは痛みを伴いつつも回復できる。

-下記は「問題となる製品」-

6)昨日の主力製品
先に挙げた1)と同じような売上はあるがもはや利益貢献をしていない。無理やりに手段を尽くして市場に残り作業量が増えている。古き良き製品であり皆に愛されているが、衰退を遅らせるために膨大なエネルギーを割いてしまっている。

7)手直し用製品
一つの明らかな欠陥さえ手直しができれば、かなりの売上高、成長、市場のリーダーシップを獲得できるもの。その手直しは容易であり一度限りとする厳格な条件が必要。

8)仮の特殊製品
顧客や市場のために特殊製品として細かく差異を設けた製品として販売しているが、標準化や統合により広い顧客や市場のニーズを満たすことができるもの。

9)非生産的特殊製品
市場において顧客が代価を払おうとしてない無意味な差別化を行っている製品。利益を週出し、不相応に資源を使っている。

10)独善的製品
成功すべきと思いながら成功が望めない製品であり、これまで多額の投資をしてきたために現実を直視できなくなっている。そもそも新製品の成功確率は低いものであることを認識し、あらゆる新製品は判断をするための時限を設定するべき。

11)シンデレラ製品あるいは睡眠製品
予想以上の業績を上げており、チャンスを与えればうまくいくかもしれないが、十分な支援や資源を与えられていない製品。現在の主力製品の座を乗っ取る可能性もあるため投資を躊躇しているうちに、他社が見つけて成功する可能性がある。支援を強化し人材の質を高めるべき。

 
皆さまの企業の事業、商品・サービスに当てはめてみて、如何でしょうか。贅肉といえる事業や商品・サービスは上記類型では、特に「昨日の主力製品」「非生産的特殊製品」「独善的製品」が当てはまりそうです。

 今のまま慣れた生活を楽に続けたいと思っても、早晩そのツケを払う日がやってきます。
常に現実を直視し、贅肉を落として機敏に動く身体をつくっておくこと、為すべきことに集中する習慣により新陳代謝が活発な体質をつくっておくことを心掛けたいものです。

新年の計を立てるにあたり、ご参考になれば幸いです。


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