本日は人材育成について考えてみたいと思います。
人が育つということはとても多くの論点があります。そして、人材が成果を出すまでには、何も変わっていないように見える時期があります。それはイメージとしては、バスタブに水が溜まっていっている状況に似ています。
一定以上水が溜まって、溢れたときに一気に成果が出るようなイメージです。特に変わっていないように見えていた人がいきなり変わって成果を出し始めるケースがあると思います。それは、少しずつその人の中で変化は起きていて、しかしそれが成果という形で表れていなかっただけなのです。
また、バスタブは透明ではないので、以下の図のように人財育成の取り組みの中で人が育っていないように見える(バスタブに水が溜まっているかわからない)ことがほとんどでしょう。それでも忍耐で待つことによっていずれ成果がでることを期待している経営者の方はとても多いのではないでしょうか。
ケース①のように、しっかりと取り組みの効果があり、いずれ成果につながるケースと、ケース②のように取り組みの効果がなく、また、育成される人に意欲や覚悟がなければ水が流出してしまうケースもあります。そうすると結果何も変わらずに時間だけが過ぎるケースもあることでしょう。はたから見ていてもこれがケース①かケース②か判別できないのが難しいところです。
この境目には3つポイントがあります。
- A:育成の取り組みが目的に対して適切かどうか
- B:育成対象の人材に意欲と覚悟があるか(スキルや知識の習得であれば覚悟までは求められないですが、後継者や次世代のリーダーなど覚悟が求められる育成環境が経営課題になる論点かと思います)
- C:育成対象の人材の器と可塑性(変化できる力と意欲)
これらのどれかが足りないと、時間だけが過ぎて取組の割に人材が育たない事態となってしまいます。簡単ではないですが、人材と人材育成の取り組みに関心を持って、丁寧に向き合うことが大切です。
また、人材育成にはそれぞれの育成対象者の強み・特性や育成対象課題に応じてバスタブのサイズや水の溜まり方に違いがあります。
わかりやすい例で言えば、パソコン操作のスキルと経営者になるための見識・胆識を育てるのではバスタブの大きさに大きな差があることがわかると思います。特に、人間学やリーダーとしての姿勢などについては、学びと一生にわたる実践が伴う大きなバスタブのイメージで、水が溜まるまでにはとても多くの時間を要します。一方で、パソコンのスキルや会計の知識などについては、比較的小さなバスタブであり、すぐに仕事上の成果につながりやすくもあります。このようなスキルや知識については、客観的にも測りやすいのですが、人格的な部分などは計測もしづらいですし、なかなか厄介な問題です。
また、育成対象者の強み・特性によって、課題に応じた水の溜まり方に差が出ます。
よく聞く話としては、スタートダッシュでの成長は速くて器用なのだが、その先のリーダーとしての伸びがないといったケースや、スタートは不器用でもたついたものの、そこから傍流を歩いた結果、気が付いたらすごいリーダーになっていた、といった人の様々な歩みです。
ここに簡単な答えはないでしょう。
上記の3つのポイントと、人の希望と強み・特性を理解して、必要な対話を重ねることと、経営者・リーダーとして、自らが学び成長する姿を示すことが必要なのだと考えます。