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景気指標である「企業倒産件数」から考えたこと ~●●倒産が増える~

時事トピック
2024.01.18

115日に東京商工リサーチがプレスリリースを発行し、2023年の企業倒産件数が8292件となり、4年ぶりに8000件を超えたと発表しました。

今日は、景気を検討するための代表的な指標でもある「企業倒産件数」から考えたことをお伝えできればと思います。

■企業倒産件数の推移は?

ここ20年ほどで企業倒産件数が最も多かったのが2008年の15646件。リーマンショックの影響によるもので、2023年の2倍近くの数字です。いかに倒産が多かったのかということがわかります。

そこから徐々に倒産件数は減っていき、2016年から2019年には約8000件を推移。2020年には新型コロナウイルス禍となり、ここで政府が、売上が減少した個人事業者や中小企業向けに実質無利子・無担保で融資を行なうというゼロゼロ融資を実施。それにより、2021年・2022年は6000件近くと倒産件数は抑えられました。

そして2023年、再び8000件を超え、増加に。この背景には、ゼロゼロ融資の返済が本格化を迎え、その返済ができずに倒産するというケースが増えてきていることがあります。俗に言う「ゼロゼロ融資倒産」です。

2023年の企業倒産の特徴は?

そして、そこに追い打ちをかけて起こっている倒産があります。それが「物価高倒産」と「人材不足倒産」です。

2023年の倒産のうち、全体の95%を従業員20人未満の小規模企業が占めていました(東京商工リサーチより)。

物価高により仕入価格が上がっているのにもかかわらず、経営規模が小さいため交渉力が弱く、取引先への販売価格の転嫁を要請しにくい状況があったと考えられます。実際、物価高倒産は、2023年に775件と前年の320件から142.2%増となっています。また、人を集められずに十分なサービスや商品を提供できないという人材不足倒産のケースは、2023年に260件と前年の140件から85.7%増加しています(帝国データバンクより)。

■今後の展望は?

2024年以降、企業倒産件数はどう推移していくかを考えるにあたって、一番の注目は「2024年問題」です。

建設業界や医療業界において罰則付きの時間外労働規制が20244月から適用されます。それにより、同じだけの仕事をこなそうとすると、今以上に人手を増やす必要があります。それにより人件費増となり、企業経営を脅かすという問題が2024年問題です。

また、人手を増やすための採用コストの増加や人事獲得競争に勝つために年収を上げなければならないということも考えられ、さらなるコスト増につながると言われています。

そしてここに、ゼロゼロ融資の返済の最後のピークが4月ごろとなり、それ以降の倒産件数が増える可能性が高いと言われています。

また、じわじわとですが、ある倒産も増えてきています。それは「後継者不足倒産」です。2023年に564件と前年の476件から18.5%増加。

60代以上の経営者は、企業全体の50%超となっており、「全国企業 後継者不在率 動向調査」によると国内企業の2/3にあたる65%が後継者不在ということが明らかになっています(帝国データバンクより)。何らかの手を打たない限り、間違いなく「後継者不足倒産」が増加していくことが考えられます。

こんな倒産が増える可能性も

家の近くにコンビニをFC1店舗経営している会社が仮にあったとします。このコンビニがなくなったとしたら、果たして消費者は困るのでしょうか。おそらく困らないでしょう。それは、次に近いコンビニに行けばいいからです。この会社は、代わりがいるという状態であり、なくてはならない存在にはなっていないと言えます。

なぜこのような例を出したかと言うと、上記のような会社は今後、「理念(存在意義)不足倒産」に陥る可能性があると考えます。なぜかと言うと、こういった会社には、働き手が集まらなくなると予測するからです。

仕事柄、若者と接する機会も多いのですが、若者の仕事観の変化を実感しています。「お金を稼ぐために働かないといけない」という発想をあまり持っていないように感じます。「働くことに対して価値を見い出せていない」というほうが正しいかもしれません。彼らにとっては「仕事をすることはあたり前」ではありません。そうした若者たちに対して「働くことの価値や意義」を発信して、感じられる会社でなければ、働いてもらうことすらできなくなる未来が遠からず迫ってきていると考えています。

先ほどのコンビニの会社を例に取れば「他のコンビニと変わらない」=「社会になくてはならない会社ではない」=「自分の存在意義を感じづらい会社」と若者は感じる可能性があります。

一方で、同じコンビニという業態であったとしても、仮に「地域の多くの方々とのタッチポイントがコンビニという存在価値。だからこそ地域をもっと明るくする存在になれるし、なりたい。」という理念を掲げ、「お客様との関係を重視して、よく来店するお客様のことをしっかり覚えていて、常連客として対応する」ということをしているような会社であれば、そこに意義を感じ、若者が集まってくる。そんな時代が来ることを予測しています。

松下幸之助さんは「この会社がなくなったら、社会に何らかのマイナスをもたらすだろうか。もし何らのマイナスにならない、言い換えれば、会社の存在が社会のプラスにならないのであれば解散してしまったほうがいい。」と言っており、その言葉からも「理念がないから倒産する」、「自社がどう世の中に役立っているのかを働き手に感じてもらえないから倒産する」、そんな時代の入口に我々は差し掛かっているのではないかと考えています。


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