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M&Aは企業戦略に従う

経営のヒント
2024.02.16

中堅・中小企業の経営者の方々からも普通にM&Aの話題があがるようになって、随分時間が経ちました。中堅・中小企業では、後継者がいないためにM&Aで外部の法人・個人に事業承継する「事業承継型M&A」が増えています。中小企業庁の試算によると、2025年までに70歳を超える中小企業の経営トップ245万人のうち、127万人の後継者が未定とされていることもあり、事業承継型M&Aの潜在需要は13兆円超といわれ、35年まで件数が増加し続けるとされています(日本経済新聞電子版130日記事より)

本記事をお読みの経営者の方々のなかにも、多数のM&Aに関わる情報を受け取る方は多いのではないでしょうか。「自社を売ってくれ、というDMをもらったよ」、「こんな企業を買いませんか、と銀行から話しをもらったよ」という声はよくお聞きします。

うっかりするとM&Aの情報におぼれてしまいますので、おぼれる前に「自社にとって適切な」M&Aの対象先を選ぶ必要があります。本記事では、企業を買収する側の視点に立って、M&Aの主要目的と対象先を選ぶ考え方についてお話ししたいと思います。

M&Aの主要目的と対象先を選ぶためには、まず企業戦略を再確認する必要があります。

企業戦略のフレームとして有名な「アンゾフのマトリックス」では、市場と商品・サービスの2つの軸で次の4つの企業戦略を提示しています。

①市場浸透戦略:既存市場×既存商品・サービス
②市場開拓戦略:新規市場×既存商品・サービス
③商品・サービス開発戦略:既存市場×新規商品・サービス
④多角化戦略:新規市場×新規商品・サービス

この4つの戦略ごとに、M&Aの主要目的と対象となる企業像が異なってきます。戦略ごとに考えてみます。

①市場浸透戦略

市場浸透戦略は、既存の市場に対して既存の商品・サービスの提供を徹底することです。

この戦略の時のM&Aの主要目的は「いかに効率よく市場に商品・サービスを提供するか」になります。この目的を実現するためには、同じ事業を展開している同業他社がM&Aの対象先となってきます。

自社と同業者が一緒になると、同じ取引先に対する売上は2社の合計となる一方で、重複している営業や物流を集約することで効率よく市場に商品・サービスを提供できます。

②市場開拓戦略

市場開拓戦略は、新規の市場を開拓し、既存の商品・サービスを提供することです。

この時のM&Aの主要目的は、「既存の商品・サービスを提供する新規市場を獲得する」になります。この目的を実現するには、自社として新規となる市場を持っている同業他社や、市場開拓力がある下流の商社などがM&Aの対象先となってきます。

③商品・サービス開発戦略

商品・サービス開発戦略は、既存の市場に提供する新規の商品・サービスを開発することです。

この時のM&Aの主要目的は、「既存の市場に提供する商品・サービスの開発力を獲得する」になります。この目的を実現するには、商品・サービスの新規開発力がある同業他社や、商品を提供している上流の仕入先メーカーなどのがM&Aの対象先となってきます。

④多角化戦略

多角化戦略は、新規の商品・サービスを開発し、その商品・サービスで新規市場を開拓することです。

この時のM&Aの主要目的は、「目指している新事業を獲得する」ことになります。この目的を実現するためには、新事業を既に展開している企業がM&Aの対象先となってきます。

ここまでみてきたように、戦略によってM&Aの主要目的や対象先が決まってきます。まさに、「M&Aは戦略に従う」です。私がご支援させて頂いたM&Aを振り返っても、戦略が明確になっていると、M&Aの目的、対象先が明確であったと思います。

ぜひ、M&Aの情報におぼれる前に、企業戦略の再確認と、M&Aの目的、対象先を明確にして頂ければと思います。


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