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「BtoBでの円満な値上げ」

知恵のバトン
2024.04.23

中小企業におかれまして、値上げ(原材料費、人件費等の価格転嫁)をどのように円満に実現するのかに悩まれておられます。お客さまとの継続的なお取引を考えると、打診のマイナス影響(転注など)の懸念もあり、そもそも踏み出しにくい側面もあるのだと推測します。
打診に踏み切ったとしても、お客様側の事業サイクルや年度予算もあるなかで、「ご事情は察しますが、今/今年度は難しい」「1担当者としては値上げをお受けしたいが、会社のOKをもらうのは難しい」などの返答も予想され、実感としては、数か月~半年などごく短期での合意や業績効果の実現への奇策はないと感じます。さりとて、値上げに向けた活動を始めないことには仕方がなく、下準備も含め、業績影響が出るまで最低でも1~2年の期間を要する「全社的活動」として取り組む必要があると思います。値上げの活動方針としては、「値上げ要請を受け入れざるを得ない」との納得合意を目標にその妥当性を訴えていくことであり、短期的・中長期的な活動がありますが、
1.値上げのできるだけ合理的な理由を伝える
2.自社の優位性を伝え、仕入れる「必然性」を醸成する
が大事だと感じます。

1.合理的な理由について
先方に納得感を得てもらうための材料(根拠)を示すことになります。ポイントは、企業努力では吸収が難しいこと、便乗値上げではないことを伝えていく点です。
たとえば、

①業界全体で値上がりしていることを示す
自社に限らず、”業界全体として”、事業環境が値上げ・値上がり局面にあることを示します。
自社原材料の市場価格推移や自社業界からの卸値推移などの数字面のほか、自社の業界団体などから顧客業界に向けた値上げ受け入れへの要請書などが発出されている場合は応援材料になり得るかもしれません。

②値上げ幅(%)の妥当性をコスト分解して示す
どの程度の値上げ幅にせよ、先方は幅の高低への(こちら側の事情を踏まえた)判断基準を持ちえないため、先方の予算・資金事情や判断基準が全面的に適用されがちです。
自社の事情を「隠す」のではなく一定程度「オープンにする」という方針で、材料費、労務費、製造経費、その他管理費の上昇度合いや見通しをお伝えします。値上げ交渉の作戦にもよりますが、総額一発で示すより、「それならば仕方ない」という流れを作りやすくなるように感じます。

2.自社の優位性と調達の必然性について
自社の製品・サービスの優位性(特徴・良さ)をお客さまに確りと”伝えます”。
日常の営業活動などで既になさっていることと思いますが、値上げ局面での交渉を支えるベースとしても大事なので触れておきます。
強調しておきたいことは、「良さの伝達」です。実際、中小企業へのアンケート調査(*)によれば、「優位性の伝達」と「価格反映」は相関関係があるようで、伝達ができている企業ほど価格反映が進んでいる傾向がうかがえます。

(*)2020年版中小企業白書 第2-2-4図
外部リンク:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2020/chusho/b2_2_1.html

値上げへの気運・情勢もあり、想定よりはすんなりと受け入れてもらったという声も伺うものの、やはり一筋縄にはいかない活動だと思います。これからのヒントになればと思います。

このことについて、私のなかで印象深い話しが最近ありました。それは、お客さまとともに、ある地方都市の菓子メーカーさんにお伺いしたときのお話しです。この菓子メーカーさんは創業者である現社長さんが一代で拡大され、その商品の評価も高く、現在は香港やオーストラリアといった海外にまで輸出されています。社長さんとお話しをすると、75歳というご年齢を感じさせない活力がありました。

お話ししたのち、菓子工場の方に案内して頂きました。非常に整然とされ、また社員の方々も無駄がない動きをされている現場です。製造ラインを一巡りしたのち、商品が保管されるスペースに移動しました。その時です。社長が商品の一つを取り上げ、商品である菓子を食べ始められたのです。

私は一瞬少しとまどったのですが、私のお客さまが、「ここの社長はとにかく自社の商品を食べられるのですよ。私もそれを見習って自社の商品を食べるようにしています。」とお話しされ、この突然起きた状況を理解できました。社長は、自社でつくった商品をお客さまにお届けしてもよいものかどうか、自分が食べることで確認していたのです。恐らく、自分が食べてよくないと思ったら、商品の改善にも努められてきたのでしょう。また、私のお客さまのお話しによると、この社長さんは競合他社の商品もよく食べられているとのことです。それにより、自社の商品が競合よりもよいのかどうかを知り、自社商品に磨きをかけているのでしょう。頭が下がる思いがしました。

「お客さまに自社商品を食べて頂き、美味しいと喜んで頂く」ことを目指すならば、自分が食べて、美味しいと思わなければ実現するわけがありません。そんな基本的なことを、この社長さんから改めて学ばさせて頂きました。

【コンサルタント:斎藤 創】


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