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円安の進行について

時事トピック
2024.04.26

円安が進行しています。425日で一時15570銭台をつけるなど、34年ぶりの水準の円安の流れが止まりません。

皆さまも気にされていることと思いますが、あらためてこの円安の構造について基礎的なところから考えてみたいと思います。

為替の変動要因としては、一つに特定はできず、主に以下のような項目が複合的に絡んでいます。それぞれ一般論について見てみましょう。

・金利差 
⇒ 一般的に金利が高くなった国の通貨は上昇、低くなった国の通貨は下落の傾向

・貿易収支・経常収支 
⇒ 一般的に貿易収支が黒字になると通貨高になります。米国への輸出が増えれば代金をドルで受け取りそれを円に換えるためです。逆に貿易収支が赤字になると通貨安になる傾向があります。ここにサービス収支、所得収支も含めた経常収支についても同様の傾向があります。

・物価変動 
⇒ 一般的にインフレになっている国は通貨安になる傾向があります。インフレとは物の価値の上昇=通貨の価値の下落だからです。

・マネタリーベースの差 
⇒ 円とドルの間でマネタリーベース(≒通貨供給量)の相対的な変動があると為替に影響すると言われています。例えばドルに対して円のマネタリーベースが増加した場合には、円安の方向に動く傾向があると言われています。

では、上記のそれぞれの項目について現状を見てみましょう。

・金利差
⇒ 以下のURLにあるように、20233月までは金利差(10年国債利回りの差)とドル円レートが概ね相関していることがわかります。

https://am.jpmorgan.com/jp/ja/asset-management/per/insights/market-insights/guide-to-the-markets/guide-to-the-markets-slides-apac/fixed-income-currency/gtm-jp-usjaintratedif/

2024424日時点での10年物国債利回りは日本0.885%、米国4.642%となっています。3月末時点では、同日本0.725%、米国4.2%であり、3月末からの上昇幅で言えば、共に上昇はしているものの米国の上昇幅が大きく、円安ドル高に振れることはある程度必然であると言えるでしょう。

・貿易収支・経常収支 
⇒ 20242月の貿易・サービス収支は△3365億円となっており赤字傾向。一方で経常収支については、26,442億円で大幅黒字となっています。貿易・サービス収支においては赤字のため円安に動く理由にはなっていますが、経常収支では大幅に黒字なので、所得収支として海外に投資をした会社などからの配当・利子等を円に転換することによって円高に振れる要素も考えられます。
しかし、この円安水準ということはどういうことでしょうか。金利差に引っ張られているということも当然ありますが、経常収支のうち配当や利子等の所得収支については、グローバル企業がドルのまま海外に再投資していることが考えられます。この場合には、円に転換することがなく為替に影響を与えなくなります。日本に投資の魅力がない、また、円で給与をもらう人材に所得が還元されていない場合には考え得る状況です。グローバルで稼いだ所得が日本国内に還元されていない可能性があります。

・物価変動 
⇒ 消費者物価で比較すると、日本の20243月の消費者物価の前年比は+2.6%となっています。一方で米国は前年比+3.5%となっています。米国は20226月には前年比+9.1%の水準まで上昇していたことを考慮すると幾分落ち着いています。日本は、20231月に前年比+4.2%を記録してはいますが、もともと物価の上がりが遅かったこともあり、現状も米国の物価の落ち着きに比べると相対的に物価が過去と比べると安定していると言えるかもしれません。
ここで注意が必要なのは、米国は3.5%の物価上昇に対して、金利が5%程度(3月末の政策金利であるTB3か月は5.23%)ついています。つまり、モノの価値の上昇を金利がカバーできていることになります。特に直近の物価の上昇幅の安定により、この傾向が顕著です。日本は逆に、大規模金融緩和を解除するとしつつ、いまだに金利がほぼ0%(3月末の政策金利であるコールレート翌日物は0.022%)であり、3%近くある物価の上昇をカバーできていません。円を持っていると日本国内において、どんどん価値が下落していく状況ということです。

・マネタリーベースの差 
⇒ ドルと円のマネタリーベースの比較をしたチャート(ジョージソロスが着目したということで、ソロスチャートと呼ばれています)を見ても、コロナ禍以降のマネタリーベースの増減は日米で大きな差がありません。日米ともに大規模緩和を行っており、相対的に為替に大きな差がでるほどのマネタリーベースの差は確認できません。

このように、一般的に言われている為替の変動要素を見ていくと金利差と物価、そして、おそらく日本のグローバル企業の対外直接投資などが影響した円安が進行しているものと想定されます。

根本にあるのは、日本経済の弱さとそれを踏まえた日銀の金融引き締めの難しさ、その足元を見られて円安が進行している姿が見えてきます。

円として保有することで、物価上昇に対して価値が目減りする貨幣を好んで持つ企業もあまりないということで、経常収支の黒字も為替に良い影響を与えておらず、国内において商売をする企業、特に海外からの原材料などを調達して国内に販売する企業などは苦境に立たされる状況は構造的に続くものと考えざるを得ないのかもしれません。


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