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「中小企業が元気になれば、日本は元気になるのか?」について考えてみた

時事トピック
2024.03.27

少し前のニュースで話題となっていたベースアップ。大手企業では、33年ぶりの大幅アップの水準となったと発表がありました。次の段階として、中小企業がどのくらいの水準まで持っていけるかということが焦点になっています。その背景として、日本の企業数に占める中小企業の割合が約90%と言われており、「中小企業が元気になれば、日本は元気になる」と言われるゆえんとなっています。

そこで今日は、「中小企業が元気になれば、本当に日本は元気になるのか?」について調べてみて考えたことをお伝えできればと思います。

■企業数から考えるとどう見えるか?

日本全体でどのくらいの企業数があるかということを調べてみました。

まず、企業数をカウントする際に「会社・企業」をどのように定義しているかを見てみました。

総務省統計局の「会社の定義」よると、「会社企業とは、経営組織が株式会社(有限会社を含む)、合名会社、合資会社、合同会社及び相互会社で、本所と支所を含めた全体をいう。単独事業所の場合は、その事業所だけで会社企業となる」とあります。

上記で定義された「会社・企業」は、日本に約368万社あるとされています。

次に中小企業の定義ですが、以下のようになっていました。

資本金総額5000万円~3億円以下(業種によって変わる)
従業員数50~300名以下(業種によって変わる)
『中小機構「中小企業の定義」より』

中小企業は336万社で、たしかに全体の約90%を占めています。

さらに調べてみると、中小企業の中に「小規模事業者という会社が含まれる」とありました。

従業員数5~20名以下(業種によって変わる)。
『中小機構「小規模事業者の定義」より』

そして、その数を調べてみると小規模事業者は、約300万社で全体の約80%を占めています。

このことから、「日本の企業の全体の90%は、中小企業が占めている」というよりも、「日本の企業の全体の80%は、小規模事業者が占めている」というほうが正確な表現になることがわかります。

■従業数という切り口で考えるとどう見えるか?

次に、従業員数という切り口で見ていきたいと思います。

日本全体の従業員数は、約4800万人で、そのうち中小企業は、約3300万人(全体の約68%)とされています。『経済センサス活動調査より』

仮に、先ほどの小規模事業者の従業員数を平均5名と仮定すると、300万社×5人=1500万人となり、全体の約30%になります。

小規模事業者に焦点をあてると、
・企業数全体では、約80%
・従業員数全体では、約30%
となり、企業数のわりに、従業員数の割合は少ないことがわかります。

一方で、中小企業の中から小規模事業者を引いて考えると
・企業数全体では、約10%(約36万社)
・従業員数全体では、約38%(約1800万人)
となり、日本の多くの従業員数を雇用しているのは、「中小企業全体-小規模事業者」の企業ということが見えてきます。

■中小企業の経営状態は?

では、中小企業の経営状態は、どのようになっているのでしょうか?

国税庁が2023年に公開した「国税庁統計法人税表」によると、2021年度に決算を迎えたすべての法人で、赤字企業の割合はは65.3%。その多くが中小企業と言われています。

なぜ、赤字の中小企業が多いのか?

その背景はいくつかあると思いますが、大きいのは税金対策(節税対策)だと考えます。利益が出るとそこには税金がかかりますが、赤字ですと税金はかかりません。また極力税金を払いたくないということから、利益が出るか出ないかにとどめておくことということを行っていることが考えられます。

赤字だと会社はつぶれないのか、という疑問も出てくるかと思いますが、赤字でも会社はつぶれません。会社がつぶれるのは、「お金が支払えない・返せない」となった時。

ですので、それらの赤字企業は「自分たちが食べていくだけで良い」、もしくは「銀行などから借入を続けて存続できれば良い」と考えている可能性があります。

■赤字経営の会社に小規模事業者が多いと考えた理由

このような会社は、小規模事業者が多いのではないかと考えます。その裏付けは、会社を成長させようとする意志があまりないということ。ゆえに小規模事業者の状態になっていると考えます。

もう少し言えば、多くの小規模事業者の経営者は、会社を長期で存続することをあまり考えておらず、自分の代で終わらせることを考えているのではないと思います。

それはなぜか?

「利益が出ないと内部留保がたまらないため、純資産が増えない」⇒「純資産が増えないと、自己資本比率が高まらない」⇒「自己資本比率が高まらないと、長期での会社の安全性が高まらない」⇒「会社の安全性が高まらないと、投資もできない」=「長期で会社を存続させることに関心を持っていない」

このように利益を出さないということは、会社を長期で存続させないという経営者の意思表示ということが言えます。

投資ができないということは、従業員の待遇改善もできなければ、より良い商品を作るための設備投資もできないということになります。

■中小企業支援とはどうあるべきか?

現状の小規模事業者を存続させることは大事な話ではありますが、小規模事業者への支援に注力することで本当に日本が元気になるのかというと疑問が残ります。

なぜか?

上記でわかるように、小規模事業者の経営者にその気があまりないからです。
国の政策によってゾンビ企業が増えているという事実もあります。

ゾンビ企業:数年にわたって債務の利払いすらままならず経営が破綻状態にあるのに、銀行や政府などの支援によって存続し続けているような企業を指す。

日経の記事では、議員で中小企業政策に反対する人はいないとも言います。
しかし、このままではゾンビ企業が増えるだけではないでしょうか。

そうした時に、中小企業支援として、どう考えるべきかということですが、上記で挙げた「中小企業全体-小規模事業者」の企業への積極支援ということが考えられます。

「中小企業全体-小規模事業者」の企業
・企業数全体では、約10%(約36万社)
・従業員数全体では、約38%(約1800万人)

上記の企業は、成長への意思がある可能性があり、今後の拡大の可能性もあります。

経営者に長期で会社を存続させる意思があるとするならば、経営者自身や会社の都合ではなく、もう少し広い視野でものごとを見ている可能性があると考えます。

例えば、
・自社の商品を通じてお客様に喜んでもらえている
・働く仲間が幸せ(経済的にも精神的にも)
・地域をよくしていきたい
・業界をよくしていきたい
・良いものを次の世代にも引き継いでいきたい

自分の代だけでは実現できないかもしれないことを目指している可能性があるのではないかと思います。

こういった考え方の経営者のもとで働くことによって、従業員にとっても良い影響を及ぼし、また地域や業界に対しても良い影響を及ぼしていく可能性があります。

「中小企業全体-小規模事業者」の企業の成長の中で、小規模事業者で働く従業員を「中小企業全体-小規模事業者」の企業へ移していくことができれば、雇用という面での課題はクリアできるのはないかと考えます。

言い換えると、少しでもお客さんによくなってもらいたい、従業員に幸せになってもらいたい、業界をよくしたい、地域の役に立ちたい、世の中のためになることがしたいと考える経営者が増えることが、日本を元気にすることにつながるのではないでしょうか。


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