―ピーター・F・ドラッカー「マネジメント」
今日は事業とマーケティングについて考えてみたいと思います。
ドラッカーさんが「マネジメント」のなかで、事業を定義することが大切であるとし、その最初のステップとして挙げているのが、「顧客は誰か」という問いです。
この問いに対して、彼はこう言っています。
「顧客は誰か」との問いこそ、事業の目的とミッションを定義するうえで、最初に考えるべき最も重要な問いである。易しい問いではない。まして、答えのわかりきった問いではない。だが、この問いに対する答えによって、企業が自らをどう定義するかが決まってくる。
なぜ、これほどまでに「顧客は誰か」を考えることが事業において重要なのでしょうか。
もう少し噛み砕いてみます。
ひとつは、最終消費者(エンドユーザー)はどの事業にもいるが、さらにその間に中間の顧客がいるということです。メーカーであれば、流通事業者はもうひとりの顧客です。エンドユーザーのニーズをくみ取ることは重要ですが、場合によっては、流通事業者がその顧客に対してアピールできるように工夫することで多くの需要を創出できることがあります。例えば、様々な食材とあわせる「鍋スープ」が売り場で野菜やお肉と一緒に買われるようなパッケージ等で訴求しているのをご覧になったことがあるでしょう。
逆に、エンドユーザーから遠い事業の場合は、近い顧客(直接の納品先など)だけのニーズではなく、その先に繋がる顧客へ思いを馳せることで、製品の魅力や競争力をあげるヒントが見つかるかもしれません。工業製品などで使える思考ですが、今の時代、下請けや孫請けで苦しい事業の場合、思い切って上流の商流へ食い込むチャンスにも繋がりそうです。
さらに言えば、自分たちで固定観念化させている顧客像に疑いを持ってみるということにも、この「顧客は誰か」という問いをぜひ使っていただきたいと思います。
時代は変わっています。ニーズも変わっています。自社の商品やサービスを転用すれば、他に新しい顧客像が見つかる可能性があります。自分たちで思い込みのままに顧客を限定していることはないでしょうか。
その技術は他の業界や製品の役に立つのではないか?国内だけで考えていたが、海外にも需要があるのではないか?女性のものと思っていたが男性にもニーズがあるのではないか?など、既存の思い込みの枠を外して常に「顧客は誰か」を問い続けることは、新しい事業や収益のタネを探すことと同じです。
「顧客が誰か」を問うことは事業そのものの定義の根幹なのです。そして、この「顧客は誰か」は常に変わりゆくものとし、問い続け、事業を再定義し続けなくてはなりません。問い続けるためには、他の業界への関心、社会への関心、お客さまが見ている世界への関心、そしてそれらのこれからの変化への関心が必要です。
「顧客」を決まりきったものとしていたとお感じになられたら、腰を上げ立ち上がって、自社がお役に立てる「顧客は誰か」を見渡し、そして探し続けて頂きたいと思います。