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「自民党総裁選に思う」

小宮一慶のモノの見方・考え方
2024.08.27

自民党総裁、つまり次の首相を選ぶ選挙が行われます。早々と出馬を表明した小林鷹之氏はじめ、石破茂氏、小泉進次郎氏、河野太郎氏など、12名の名前が今のところ上がっています。
推薦人20名の確保も影響しますが、早く出馬表明したほうが得とか、9月まで待つべきかという戦術的な理由で、出馬のタイミングを図っている候補者も少なくありません。

今回の総裁選の最大の特徴は、政治資金パーティーでの資金の裏金化問題を受けて、麻生派を除く多くの派閥が解消された中で行われるということです。
そのため、これまでの派閥内での力学や年功序列というものが考慮されなくなり、「我こそは」と思う人たちが名乗りを上げているということです。

ある程度の政治経験を積み、本当に能力とやる気があれば派閥の意向に関係なく総裁(=首相)に立候補することは悪いことではないと考えます。
ただし、首相になろうという人には、この国を具体的にどういう形にしたいのか、そしてそのためには何をしなければならないのかということを具体的に説明する義務があります。
「散歩のついでに富士山に登った人はいない」のです。
自身の権力欲や、派閥はなくなったが、議員間での力学、つまり選挙後の大臣や党役員などのポスト獲得などの思惑で、首相が決まるということは国民にとってはたまったものではありません。

きれいごとを並べてくれと言っているのではありません。人口減少、それに大きく関係する少子・高齢化が急速に進む中で、経済も本当に心もとない状況です。
円ベースの名目国内総生産は直近の4-6月で年換算600兆円を初めて超えましたが、ドルベースで見ると、コロナ前の5兆ドルを大きく下回る4兆ドル程度です。
資源の大部分を輸入する日本にとってはドルベースでの購買力は極端に落ちており、世界の主要国の成長スピードからも大きく後れを取っています。国際的な競争力が落ちているからです。
海外旅行に行くのも躊躇する人も増えています。国民が貧乏になっているからです。さらには財政の悪化に伴って将来の社会保障の維持も危うい状況です。

こういう現状の中で、どういう政策をとるのかを明らかにする義務は次期首相を目指す人には当然あるべきだと私は考えます。
繰り返しになりますが、それもきれいごとを並べるのではなく、あるべき姿と、それをどういう方法で実現するかを具体的に述べてほしいのです。

新総裁が決まると、それほど遠くない時期に衆議院を解散して総選挙となるでしょう。そのときにも政策の議論が必要なことは言うまでもありません。
立憲民主党もほぼ同じ時期に代表選挙を行いますが、2009年からの民主党政権時を思い起こす人も多く、このままでは国民の支持を得るのは難しい状況です。
しかし、この際、現実味のある、つまり夢物語でない、しっかりした政権構想を掲げた人を党首に選べば、国民からの支持を取り戻せる可能性もあります。
さもなければ、次期衆院選では、都知事選の蓮舫氏の惨敗を思い起こさせるような結果となる可能性もあります。

いずれにしても、この国の現状を考えればこの困難な時期を乗り越えられるリーダーが必要なことは言うまでもありません。
そのことと関連して、二大政党を前提とした小選挙区制が機能していないことや、首相公選制も含めた選挙制度改革も議論すべき時期ではないかと考えます。

【小宮 一慶】


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