先日、ある経営者の方とお話をする機会があり、その方から「金入さんがどうこうというわけではないが、経営コンサルタントには、あまり良いイメージを持っていない。コンサルタントを使うことに積極的ではない。」と話されていました。
確かに、いろんな経営者の方々とお話をさせて頂く機会がありますが、そうお話される方は少なくありません。
そこで今日は、「中堅・中小企業は、経営コンサルタントを使うべきなのか、使うのであればどう考えれば良いか」について考えたことをお伝えできればと思います。
■コンサルに良いイメージがない理由とは?
まず、中堅・中小企業の経営者の方が、コンサルタントに対して、良いイメージを持っていない理由について、経営者の言葉から考えてみました。
・経営者の言葉①:「教科書通りのことしか言わない」・「現場に合っていない」
コンサルタントからMBAや経営本に書いてあることを話され、「机上の空論だな」、「頭でしかわかっていない」と感じる。そしてコンサルタントに対して「うちの会社のことをわかっていない」と思う。
・経営者の言葉②:「うさんくさい」・「良いことしか言わない」
「これをやれば売上が上がりますよ」、「これをやればうまくいきますよ」という話をされ、「そんなにうまくいくなら苦労はしない」、「経営者の仕事がわかっていない」と感じる。そしてコンサルタントに対して「じゃあ、自分でやればいいじゃないか」と思う。
ここから考えられるのは、コンサルタントに対して、まずは大事な会社の経営について話をしてよい人物なのかという「人としての信頼度」があまり高くないということが挙げられます。
言い換えれば、「人としての信頼度が高い」と感じるコンサルタントであれば、可能性が出てきそうです。
■コンサルを使ったほうが良いのか?
次に考えたのが、中堅・中小企業は、コンサルタントを使ったほうが良いかどうかということです。ここで見ていきたいのが、中堅・中小企業の経営者の置かれている環境についてです。
<執行の風圧>
簡単に言えば、目の前のことでいっぱいいっぱいになっている状態。執行は、短期的な時間軸で、目の前のことをより良くしていくこと。社長の目の前では、いろんなことが起こる。現場のフォローをすることもあれば、会議やミーティングも多い。現場で起こる問題や課題への対応もある。そうなると、目の前のことに意識が偏りがちになる。
<コルセットがない>
これは何を言っているかというと、大手企業との対比。大手企業はコルセットがある。株主からの目線、金融商品取引法からの視線、社外取締役からの視線など外部からのプレッシャーにされされていて、自由にできない。一方で、中堅・中小企業にはそのプレッシャーがない。圧力をかける存在がない。だから、言い訳しやすいし、公私混同しやすい状態になる。
<なりゆきの引力>
「GoodはGreatの敵」な状態。「うまくいっているんだから、このままでいいんじゃないか、そこまでがんばらなくてもいいんじゃないか」という気持ちになってしまう。そして、チャレンジすることに臆病な状態になる。
まとめると、中堅・中小企業の経営者は、なかなか経営に集中できていないという環境にあると考えます。
上記のことに対して、ひるまず立ち向かえる経営者であれば、コンサルタントを使う必要はないと考えます。一方で、経営者も完璧ではないので、上記のことをやり切ることは簡単ではありません。そうした状況を支援してもらうということは、ひとつの切り口ではないかと考えます。
■コンサルタントに何を期待すれば良いか?
上記の経営者の環境を考えた際に、コンサルタントに求めるもの・期待するものとは、どのようなものになるのかを考えてみました。
・鏡
自分の顔が見えないように、自社のこと、経営者自身のことについてを正確に把握することは簡単ではありません。さらに言えば、執行の風圧やコルセットがない状態になると、なおさら見えづらくなります。そうした際に、自社の現在地や経営者自身の仕事を見直すという機会が必要になると考えます。その時に、鏡のように自社や経営者自身を映し出してくれる存在が期待されます。
・問いと刺激
これは特に経営がうまくいっているときに言えることなのですが、そうなると「こんなものでいいか」、「そこまでがんばらなくてもいいか」という気持ちになっていきます。しかし、現状維持やなりゆきは、衰退の始まりになりかねません。そうした際に、「そもそも何のために自分は経営をしているのか?」、「次の目標は何なのか?」ということを自身に問いかけるとともに、「このままじゃいけない」、「さらに良い会社を目指そう」という気持ちに持っていく必要があると考えます。そういった問いと刺激を与えてくれる存在が期待されます。
・翻訳家
経営者の大きな役割は、会社の方向性やビジョンを示し、そこに導くことです。しかし、方向性やビジョンを幹部や社員に伝え、動かしていくことは簡単なことではありません。そうした際に、幹部や社員がどう感じているのか、何を考えているのか、どうしたいのかということを把握する必要がありますが、なかなか経営者に本音を話してくれません。そこで、経営者と社員の橋渡しをする役割や存在が期待されます。
このように考えると、経営者の仕事も大変な仕事ですが、コンサルタントの仕事も簡単な仕事ではありません。そうした認識を持っているかということもコンサルタントを判断するひとつの切り口になると考えます。ぜひ参考にして頂けますと嬉しく思います。