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消費税減税で日本は良くなるのか?~国民に内緒で事実上の増税を続ける政府への提案~

時事トピック
2026.08.10

政府は85日に食料品の消費税率を20274月から2年間に限って1%に下げる方針を閣議決定しました。社会保障の財源として定着していた消費税。これまで自民党が苦心をして上げてきた消費税を逆に下げるという決定に金融マーケットや世論は懐疑的な見方をしています。そこで今日は、「消費税減税や給付付き税額控除以外の減税の手段はないのか?」という減税について調べて考えたことをお伝えできればと思います。

■賃上げが進むが実感が湧かない理由
ここ数年、日本では賃上げが進み、名目賃金(現金給与総額)が毎年2%近く上がっています。2024年・2025年には、平均5%以上の賃上げを実現しています。

しかし、ニュース番組を観ていると、国民は賃上げによる実感をさほど持てていないと報道されています。その理由として、所得税の「超過累進課税」という仕組みの影響があるとのことでした。そこで、所得税の「超過累進課税」という仕組みについて調べてみました。

日本の所得税の制度は、年収(所得)が上がれば上がるほど、税金を多く支払う仕組みになっています。具体的には、所得税の額によって、所得税の税率が変わる設計になっており、所得金額が多いほど、税率が上がります。ですので、仮に賃上げで給料が上がったとしても、所得税の税率が上がっていくので、手取りが増える感覚よりも税金が増える感覚の方が強くなっていく仕組みとも言えます。

では、賃上げがあった際に、手取りがどうなるのか具体的に見てみたいと思います。課税所得700万円のケースで、かなり単純化して考えてみます。

賃上げで5%アップすると:7,000,000×1.05=7,350,000
増加分は35万円です。 

では、増加分の所得税はどのくらいになるのか?
700万円は税率23%帯です。増えた35万円にも基本的には23%の所得税がかかります。 

350,000×0.23=80,500
つまり所得税は約8万円増えます。

さらに住民税がかかります。
住民税は概ね10%なので:350,000×0.10=35,000
3.5万円増えます。

社会保険料も増えます。健康保険・厚生年金なども通常は増えます。会社員ならざっくり「給与増加分の約1415%前後」を本人が負担します。仮に15%とすると:350,000×0.15=52,500
5.3万円増です。

賃上げで増えた35万円から
所得税:約8.1万円
住民税:約3.5万円
社会保険料:約5.3万円
を引くと:350,000−80,500−35,000−52,500=182,000

年間の手取り増は約18万円程度、月あたり約1.5万円前後。税金の中でも所得税の割合が高く、賃上げが実現できても、手取りが増えたという実感が湧かないのは、所得税の影響が大きいことがわかります。 

■消費税減税では効果が少ない理由
冒頭でもお伝えしました通り、現在日本が進めようとしている減税が「消費税の減税」です。試算では年間約5兆円の減税となると言われています。

消費税の減税で期待される背景として挙げられるのが「物価高」です。物価が上昇している局面で、そこに消費税がかかる負担を減らそうという期待があります。また、全世帯に広範囲に恩恵が得られるということもこの施策を進める要素になっています。

この効果、本当に得られるのでしょうか?

実はそうならない可能性があります。どういうことかというと、消費税を減税することによって、モノの値段が下がるわけではありません。なぜかというと、販売者(小売業者)が商品を仕入れる際には消費税がかかります。販売者としては、その消費税分も含めた価格設定をします。そのため、モノの値段が今よりも安くなることはほぼあり得ないと考えられます。

また、近年は販売に関わる資材や消耗品の値上げ、物流に関わるコストの上昇、人手不足による人件費・採用費の上昇などお店を運営するための費用が上がっています。そのため、現在よりもモノの値段は高くなることが予想されます。

それらを踏まえると、消費税の減税によって企業側が「値下げ余地ができる」ではなく、「コスト上昇を吸収できる」と判断する可能性が高く、食料品の販売にかかる消費税だけ下げても、結果的にお店で支払う金額が変わらない、もしくは支払う金額が増えたということが起き、想定する恩恵が得られない可能性が高いのです。

■消費税減税よりも所得税減税では?
今の日本の局面を考えた際に、私の中でひとつの仮説が浮かびました。 

「所得税を減税したほうが、効果が高いのではないか?」というものです。

シナリオはこうです。
1.日本全体で賃上げが起きる
2.累進課税で所得税収が自然増する
3.政府の税収が増える
4.その一部を減税で国民へ戻す
5.手取り改善で消費を支える 

日本の現在における課題の打開のポイントは「賃金の手取りが増えたという実感」だと考えます。

ここまで日本政府や企業が目指してきたのが、「デフレから脱却し物価が適切に上がる状態にすること。そして、賃金(現金給与総額)を上昇させること」でした。現在、ここまでのことは実現することができるようになりました。しかし、現在起こっている問題は、賃金が上がったのに、手取りが増えたという実感が持てないことです。

上記でも話した通り、消費税の減税をしてもその恩恵は得られません。また、現金給付したとしても、一時的な効果でしかありません。その中で、手取りの実感を持てる施策が、所得税の減税だと考えます。

330万円超 ~ 695万円以下」の課税所得の世帯の所得税率は現在20%。仮に、これを3%下げて17%にしたとすると、年間約10万円、手取りが増えると試算されます。

195万円以下」、「195万円超 ~ 330万円以下」、「330万円超 ~ 695万円以下」の層の所得税の税率を下げることによって、生活に特に困っていると考えられる国民に手取りの実感を持ってもらうことができ、その効果は高いのではないかと考えます。

■財源の問題は?
ここで問題になるのが、消費税の減税と同様に、財源の問題です。

仮に「330万円超 ~ 695万円以下」の課税所得の世帯の税率は現在20%を17%に下げたとした際に、どのくらいの減収になるかを試算してみました。

330万円超 ~ 695万円以下」の層は、約1,500万人〜2,000万人程度で全納税者の2535%程度と考えられます。仮にこの層が3%減税になったとすると、1.5兆〜3兆円程度の減収に。日本の所得税の税収は、約2223兆円規模なので、712%の減収となります。

この減収分をどう確保すれば良いのか?

私はこう考えました。賃上げで所得が上がれば、所得税収は上がる。その上がった分の税収で補填すればいいのではないか。ちなみに、仮に日本全体が5%の賃上げができたとした際に、どのくらい所得税収が上がるのかを試算すると、

国税庁資料では、2025年度予算ベースで
・源泉所得税:約18.2兆円
・申告所得税:約4.4兆円 

合計で、18.2+4.4=22.6
22.6兆円規模です。

5%の賃上げが実現できたとすると単純計算で、「所得税収22.6兆円×賃金上昇分の5%=1.13兆円」この分、政府は増収となります。

所得税3%減税の財源は1.53兆円。そこには足りてはいませんが、1.13兆円は財源として確保できると言えます。「消費税の減税の財源5兆円をどうするか」という問題に比べると、財源の規模を抑えられるため、実現のハードルは消費税の減税よりも低いと言えます。

■国民に内緒で事実上の増税を続ける政府
日本は、長いデフレから脱却し、インフレ局面に入っています。ここ5年の所得税収を見てみると、

2020年:約19兆円
2021年:約21兆円
2022年:約22兆円
2023年:約23兆円
2024年:約23兆円 

と安定的に上昇傾向にあります。この大きな要因は企業による賃上げ。日本の所得税の設計は、増税をしなくても、国民の所得が上がるとどんどん税収が上がる仕組みになっています。いわばこれは、国民に対して事実上の増税をしていることと同義。賃上げをして一番得をしているのは政府という見方もあるということです。

そこで思うことは、企業と同様に国も成果を上げた分を還元するという考え方があってもよいのではないかということです。プラスの循環が国の所得税の設計の影響で止まっているという見方です。

■まとめ
最後にまとめになりますが、現在、日本政府が進めようとしている消費税の減税。期待したい効果が得られない可能性が高い。効果の本質は「手取り実感」。そのための施策としての「所得税の減税」。

シナリオはこう。
1.日本全体で賃上げが起きる
2.累進課税で所得税収が自然増する
3.政府の税収が増える
4.その一部を減税で国民へ戻す
5.手取り改善で消費を支える 

このシナリオを回すことによって、経済が好循環のスパイラルに入ると考えます。この考え方が正しいとは思いませんが、消費税の減税だけが議論されることへの警鐘として受け止めて頂けると嬉しく思います。

金入 常郎


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