今回は金利のお話をしましょう。
金利には、短期金利と長期金利があります。短期は1年以内、長期は1年を超える金利です。どちらも関連性はありますが、その決まり方は少し違うところがあります。
まず短期金利ですが、これは日銀が決めている「政策金利」に連動します。政策金利は、「コールレート翌日物」といい、銀行間で1日だけ貸し借りする金利の市場に、日銀が毎日介入することにより金利を維持しています。現状はおおむね1%です。そうなるように、日銀が市場に毎日介入して資金の需給を調整しているのです。
短期金利は、先にも述べたようにこの政策金利に連動して動きます。多くの企業は、借入れを行う際に「TIBOR(東京銀行間金利)」を基準とした金利を使っています。
短期はもちろん、長期の借入れでもこのTIBORを基準にした借入れを行っているところもあります。金利を半年見直しというような場合には、その時々の6カ月物のTIBORが基準金利となり、これにいくらか上乗せした金利で借入れを行います。このTIBORは自由金利ですが、政策金利に連動して動きます。
政策金利ですが、おそらく9月17日、18日に開かれる次回の政策決定会合で0.25%上がり、1.25%になると考えます。市場はこれを結構見越しており、TIBOR6カ月物はこのところは1.59%程度までじわじわと上昇しています。
その理由は、ひとつはインフレです。直近のインフレ率は1.8%と日銀が目標としている2%よりは低いものの、企業物価が7%以上、輸入物価は30%程度上昇しており、インフレが再燃する確率が高いのです。また、現状のインフレ率は、政府がガソリンなどの補助金を出していることで押し下げられており、それがなければ日銀は2.7%程度の上昇と推測しています。
もう一つの理由は、円安です。介入で155円程度まで押し戻しましたが、現状は160円近辺まで戻っています。米国が利上げする可能性もあり、それでは円安がさらに進む懸念があり、日銀による利上げが求められています。
日銀としては、9月の政策決定会合で0.25%の利上げを行い、年内かあるいは来年初にさらに0.25%利上げし、政策金利を1.5%程度にしたいと考えていると私は思っています。
一方、長期金利は、現状は自由金利です。以前、黒田総裁の頃に「イールドカーブコントロール」という名のもとに長期金利市場に介入をして押し下げていましたが、それは各国中央銀行にとっては異例のことで、現状では市場の需給に任せた自由金利です。代表格は「新発10年国債利回り」で、現状では2.9%程度です。
高市首相が就任した昨年10月には1.6%程度でしたからずいぶんと高くなりました。これは、首相の積極財政に対して市場が政府の財政赤字拡大を懸念しており、国債を売っているからです。国債は、売られると利回りが上がるという仕組みになっています。
食品にかかる消費税を1%に減税し、残り1%分は低所得世帯に配るということですが、高市首相は、毎年5兆円程度必要となる財源を12月に明らかにするとしています。市場はその財源の確保に懐疑的で、長期金利の高止まりが続いているのです。
おそらく、政府は、税収増をあてにしているのと、いざとなれば外貨準備の含み益を使うのではないかと私は考えています。
税収増については、4-6月の実質GDPの伸びが年率1.1%のプラス、7-9月はほぼ横ばいとの見方が強いですが、微妙です。外貨準備に関しては、現状1.3兆ドル弱ありますが、1ドル=80円程度と円が非常に高かった時にドル買い介入で取得したドルを多額に持っているので含み益が相当あるのです。いずれにしても、財源をきちんと明示できなければ長期金利は3%を超えるでしょう。
このように、今後、短期金利は政策金利の動きにともない上昇、長期金利は積極財政の財源次第ということです。日銀、政府の今後の動きに注目です。
小宮 一慶