ここ数年、経営がうまい社長とそうでない社長の違いについてよく考えてきました。今日はその中の「社長と社員の関係性」という観点で見えてきたことをお伝えできればと思います。
■社長は自然と横柄になる?
これまで500人以上の社長と接してきた経験がありますが、次のような傾向があると感じます。
「社長は、上に立つ時間が長くなるほど、自分より上の立場の人と接する機会が減り、そのような相手への接し方を少しずつ忘れていく」
具体的には・・・
社長になる
⇒自分より上の立場の人がいなくなる
⇒自分より上の立場の人への対応をする機会がほぼなくなる
⇒自分より上の立場の人への対応を忘れていく
⇒自分を律する基準がゆるくなっていく
⇒対応・態度が横柄になる(社員目線から)
この結果、社内において、社長のスケジュールは共有しなくてOKになったり、社長は会議に何も言わずに遅れてきたり欠席したりしてもOKになったり、社長だけ社用車が高級車やファミリーカーになっていてもOKだったりと、社長だけ許される基準やルールが暗黙の了解でできていきます。
さらにその状態が進むと、社長の公私混同がひどくなっていきます。会社のお金で、平日にプライベートでゴルフに行ったり、高級クラブに毎晩飲みに行ったりするようになっていきます。
その結果、社員から「社長は態度が横柄だ」、「社長だけなぜそれが許されるの?」、「社長だから仕方がない」という見方をされるようになっていき、社員からの信頼を失っていきます。そして、社員は働く気持ちが著しく下がり、働かなくなっていきます。
■部下がやっても許せるか
何も意識しなければ、社長は知らず知らずのうちに横柄な振る舞いになりがちです。
では社長はどのようなことを意識すれば良いのか?
弊社代表の小宮は、「部下がやっても許せるか」を基準にすれば良いと言います。
例えば、社長が外部の講演会やセミナーに参加し、その場で居眠りをしていても問題ないのでしょうか。社長は自分の時間を自由に決められるので、問題ないのでしょうか。では、社員を外部の研修に参加させ、その社員が研修中に居眠りをしていたら、それは許されるのでしょうか。
社員が何も言わずに会議に遅れてきたら許されるのでしょうか。
社員が平日に会社のお金でゴルフに行っていたら許されるのでしょうか。
社員が社用車として高級車を買っても許されるのでしょうか。
多くの社長は、それは許されないと判断するはずです。
社長だけ特別・社長の特権だから良いのでしょうか?
社員が何も言わないからといって、本当に問題はないのでしょうか?
確かに社員は何も言いません。しかし、何も言わないからと言って、社員は社長の特権を容認しているわけではありません。多くの場合は「言えないだけ」です。言ったら、評価が下がるかもしれない、叱責されるかもしれないというようなことを考えるからです。
社長自身の行動が、部下がやっても許せるものなのかを自問自答することが重要になります。
■「部下がやっても許せるか」プラスアルファが必要
一方で、多くの社長を見ている中で、「部下がやっても許せるか」だけでは、社長の行動を律することは不十分ではないかと感じることがあります。どういうことかというと、以下を見て頂ければと思います。
社長と社員の関係性という観点で見てみると、次の3つのパターンに分かれると考えます。
1.社員を上から見る社長
2.社員を対等だとみる社長
3.社員を下から見る社長
<1.社員を上から見る社長>
これは、先述の何も意識できていない横柄な社長のパターン。「部下がやっても許せるか」も意識ができていない状態です。
<2.社員を対等だとみる社長>
これは、社員を家族や友人と捉えている社長のパターンです。「部下がやっても許せるか」を意識した行動をしています。一方で、家族や友人という関係性のため、「言わなくてもわかるだろう」、「自分の至らない点は指摘してくれるだろう」と考えています。
<3.社員を下から見る社長>
これは、社員を自分より上の立場の人と捉え、敬意を払うべき存在として接しているパターンです。「下から」とありますが、決して「へりくだる」・「社員に迎合する」という意味合いではありません。このパターンの社長は、「部下がやっても許せるか」の行動をするだけではなく、社員への感謝やねぎらいの気持ちを言葉や態度でしっかり表します。社員に対する気遣いを忘れません。
たくさんの社長を見てきましたが、多いのは1と2のパターン。2のパターンの社長は、悪くないのですが、家族だから・友人だからという甘えが出てしまいがちです。さらに言えば、このパターンの社長は、「社員は、社長と対等だと考えていない」ということに気づいていないことが多いと感じます。社員は、組織の責任者である社長を、家族や友人と同じような対等な存在として見ることは難しいものです。
一方で、経営がうまい社長は、3のパターンの社長です。「部下がやっても許せるか」+「社員への敬意」の行動があります。冒頭に述べたように、社長になると上の立場の方への接し方・対応を忘れていきますが、経営がうまい社長は忘れません。それは、社員を上の立場の方と捉えて接しているからです。3のパターンの会社で働く社員は、社長や会社に対して、信頼が増すだけではなく、恩返しをしたいという気持ちが高くなる傾向にあります。
社長という立場だからこそ、「部下がやっても許せるか」を基準にするだけでなく、「社員への敬意」を行動で示すことが重要です。
この2つのことを実践できる社長ほど、社員から信頼され、結果として組織も強くなっていきます。ぜひ一度、ご自身の日々の行動を振り返るきっかけにしていただければ幸いです。
金入 常郎