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今週の経済の動きと経営の切り口 ~今後のサプライチェーンへの影響~

経済トピック
2021.09.24

「今週の経済の動き」については、「今週の日経新聞の数字トピック30!」と合わせてお読み頂くことで、より理解が深まる構成になっております。
「数字トピック30」に記載している数字に関しては、※( )で番号を記載しておりますので、ぜひ参照下さいませ。

 

経済全体の動きでいえば、デルタ株の影響で世界的に見ても景気の回復が思ったよりも伸びていない状況が続いています。
世界の実質経済成長率も5.7%と当初の予定よりは低下しています。※(1)

中国経済も想定よりも伸び悩んでおり、さらに中国恒大の問題が大きなリスクファクターになる可能性もあります。33兆円に相当する負債総額で中国のGDPの2%にあたる額がデフォルトの危機にあると言う状況です。※(22)

 

日本は2021年4月から6月の実質経済成長率が1.9%しかなく、また2021年7月の消費者物価指数上昇率もマイナス0.2%と世界的に物価が上昇している状況の中で需要そのものの不足が際立ち、経済の回復状況も周回遅れといった具合です。

45歳定年制と言う言葉が取り沙汰されるように、少子高齢化(約3640万人が65歳以上、かつそのうち25%以上が働く高齢者)※(18)

を迎える状況の中で、財政問題を抱える中での年金や医療費の社会保障問題が残っています。結局ある程度高齢者になっても働き続けるために様々なスキルを持つ必要があると言う共通認識ができつつあると言うことなのでしょう。

人生100年と言う言葉のきっかけになった、リンダ・グラットンさんのライフシフトと言う書籍にもあるように人生をいくつかのステージに分けて、それぞれのステージで活躍して長いこと労働できるようにしていかなければ社会も成り立たないような状況になってきていると言う事でもあります。

 

コロナ関係で言えば、今週は特に今後の社会を占う上で重要な情報が出てきたと感じています。特にワクチンの感染防止効果の持続性や、接種証明の動きなどが挙げられるでしょう。例えばファイザーのワクチンを接種してから4ヶ月後に予防効果が53%まで減退する、一方でモデルナは4ヶ月後に92%を維持するといったような情報です。※(8)
3回目の接種を2回目接種完了後から8ヶ月後に開始する検討が始まったことなど、継続的にコロナ時代を生きていく上で必要な社会制度の枠組みを決める情報が出てきています。※(9)

 

また、自民党の総裁選は誰が次の総裁になるか非常に読みづらい状況になっています。国民人気は河野太郎さんが一番ではあるものの、自民党内での少数と言う意味ではまだまだ先が見えません。
ただ、誰が次の総裁になったとしてもコロナ対策など短期的にクリティカルな課題については大きな差は無いものと考えられます。

 

一方で、企業の経営者も同じ事ですが中長期的に日本をどの方向に進めていくのかということについては例えば国防に対するスタンスや、少子高齢化など人口問題、財政政策、財務規律に対する考え方、エネルギー政策など各候補者ごとに考え方の差が現れています。
また、TwitterなどSNSにおける名前の数、キーワードの数などで、民間の動向をある程度見れるようになっていることも今更ながら注目に値するのではないかと思います。例えば、岸田さんや高市さんは守り抜くと言う言葉がキーワードになっているようです。

 

 

■サプライチェーンへの影響

新聞をより効果的に読んでいただくためには、現在及び中長期の時間軸で物事を考えることが大切だという話をしました。

とは言え、中長期の目線になかなか慣れない状況の中で新聞にどのように興味を示していただくか、新聞を読みたくなるための新聞の必要性というところについて述べてみたいと思います。

 

今の段階で会社を運営していくために必要な調達関係について新聞から得られる情報を見ておくと言うことです。

今週は特に、サプライチェーンに関する記事が多かったです。例えば自動車業界において持たざる経営から脱却する動きが出ています。
9月16日の記事で、自動車、「持たざる経営転機」と言う記事がありました。トヨタや日産が半導体の在庫を増やしていると言うことです。

半導体にしても、ウッドショックと言われている木材にしても、供給が滞った場合には在庫を保有している経営の方が有利に働きます。一方で、在庫を保有しすぎるとキャッシュフローに悪影響与えることになります。また倉庫等のキャパシティーが不足している場合には物流効率の悪化を招くことにもなりかねません。

 

コロナの影響で、サプライチェーンの分断が起き、需要と供給のバランスが一時的におかしくなっている状況の中では、キャッシュフローの効率や物流効率などを一時的に無視して、サプライチェーンの分断のリスクを最小化する方針をとっていると言う事です。

 

新聞やニュースを読み、物の調達が滞ってしまうかもしれないと言う情報を得ること、そしてそれだけではなくそのものの滞りを踏まえて自社としてはどのような経営判断を下すのかと言うところまで踏み込んで考えることが経営においては重要になっていきます。

もともと財務状況が悪い会社であれば、物の供給の滞りが起こる可能性があったとしても在庫を増やして供給の安定化を図る事はなかなか取りづらい戦略でもあります。

 

トヨタなど財務体質も安定している会社であれば、在庫を一時的に増やしてその分資金調達によって運転資金を増加させるなどの施策をとることによって供給不足に対する対応も可能となってきます。もっともトヨタの場合には、サプライチェーンが東南アジアも含めて長に渡っているため東南アジアのデルタ株の影響によって生産そのものが滞ってしまうことになります。多岐にわたる部品についてすべてを在庫によって保有する事は現実的ではないと言う事でもあります。しかしながら、そのような中で優先順位をつけるとすると半導体と言う自動車においてはもはや欠かすことができない部材を優先的に在庫として保有すると言う経営判断をしたことになります。

 

特に半導体においては台湾のTSMCが先端半導体の92%の生産を担っており、地政学的にも非常に調達が危ぶまれる状況になっていると言えるでしょう。

経営の実践には様々な情報や知識が必要です。ただ単に新聞を読んで半導体や木材が不足していると言う状況を知るだけでは経営は実践できません。これに合わせて、自社の資金の状況がどのような状況であるかと言う把握や、在庫を増やすことが自社の財務内容にどのような影響及ぼすかと言う運転資金の基本的な知識といったものを複合的に考えた上で経営判断と言うものが下されます。

また、前回記載させていただいた内容のように情報には時間軸が必要です。一時的に在庫を増やして供給不足の社会情勢を乗り切るだけであればそれは短期的な運転資金を調達すれば足りる話かもしれません。一方でこのサプライチェーンの不安定さはどこまで続くのかと言う時間軸の読みも必要になってきます。

 

コロナワクチンにおいては、ファイザーが接種後4ヶ月で効果が53%まで下落すると言う報告書をあげています。
このような状況とワクチンの世界的な分配の不均衡がなかなか是正されないような状況を見ると、継続的にコロナの影響がサプライチェーンに影響をし続ける可能性も否定できません。ワクチンが必要な数できたとしても、それが適切に世の中に分配されるかどうかはまた別の話です。これはワクチンに限らず様々なことにも言える話になってくるでしょう。政治や安全保障、地政学的な問題も踏まえながら洞察を深める必要があるでしょう。

 

コロナの影響も国内だけではなく、海外の状況、国ごとのワクチンの分配状況や接種率、そしてワクチンが最も進んだ国においてどのような社会的な問題が起きているのかどういったことにまで目を配ると日本の先行きやサプライチェーンの全体像に与える影響が見えてきます。

 

視野と時間軸を広く持つモードで新聞を読むこと、そして目先の自社に大きな影響を及ぼす項目を集中的に読むこと、これらの2つのモードを組み合わせることによって経営のクオリティーに与える影響が異なってきます。また先ほども申したように財務的な基礎知識など様々な知識を複合的に判断することによってよりクオリティーの高い経営ができるようになってくるということです。

 

情報や知識は、個別にバラバラに持っておくだけではなく、例えば新聞などの記事をきっかけにしてつなげて考えてみることによって思考の幅や深さ時間軸が自由に調整できるようになってきます。

 

ウッドショックをキーワードにして考えてみると、アメリカのケースシラー住宅価格指数などもつながっていきます。
そしてケースシラーを軸に考えてみると、資本主義の2極化とアメリカの金融政策、そして潤沢な資金が住宅需要に流れていくことによって住宅に使用される資材が高騰すると言ったようなつながりが見えてきます。

 

昔、連想ゲームと言うテレビ番組があったのご存知でしょうか。私は団塊ジュニア世代なのですがそれ以上の世代の方々にとっては馴染み深い番組だったかもしれません。個別の記事のキーワードを連想ゲームのようにしていてそれぞれつなげていく。そういった習慣を身に付けていただくと新聞の読み方や思考力が高まっていくことを実感していただけるのではないかと思います。

マインドマップと言われるようなものでキーワードを書いてつなげてみるということも有効だと思います。
無料で使えるマインドマップソフトがあるので以外に紹介をしておきます。メモの取り方も様々な工夫をすることによって新聞の読み方や形や人生への活かし方が変わってくることでしょう。

※マインドマップツール「Coggle」:https://coggle.it/


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