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今週の経済の動きと経営の切り口 ~経済再開による世界的なインフレ懸念と日本企業のコスト増リスク~

経済トピック
2021.10.14

「今週の経済の動き」については、「今週の日経新聞の数字トピック30!」と合わせてお読み頂くことで、より理解が深まる構成になっております。「数字トピック30」に記載している数字に関しては、※( )で番号を記載しておりますので、ぜひ参照下さいませ。

 

 

世界経済の2021年の実質成長率は5.9%の予測となっており、各国様々な状況はあれどもおおむねの動向が見えてきたと言えるかもしれません。※(1)
世界的にコロナ(デルタ株)の影響と需要と供給のアンバランスによるインフレの加速の影響を織り込んだ現実的な見通しが出てきました。
日本においては9月の街角景気指数が42.1で前月比7.4ポイント上昇した。2ヶ月ぶりの改善を示しています。※(2)
米国の財政のがけ問題は12月まで債務上限が延長されひとまずリスク回避となりましたが、中国恒大問題なども含めて根本的な問題は解決されずにくすぶっている状況。※(3)

中長期的に見れば金融緩和の正常化は世界的な流れとなるため、それらを見越した現状のインフレ傾向及び局所的なバブル的な現象との綱引きが行われる流れとなるでしょう。

 

国内のコロナ関連で言えば、既にワクチンを2回接種をした人口が66%程度となっています。ワクチン接種の総数は1億7000万回を超えてワクチンの接種は比較的順調に進んでいると言えるでしょう。※(13)
このような中で、新規感染者数も大幅に減少傾向にあり経済の再開も進んでいる状況といえます。
特に打撃を受けた飲食店については、10月2日から8日については1日あたりの来店客数が14万人※(4)となっており宣言期間中の9月最終週に比べると2割強来客数が増えた計算となるようです。

海外では、もう1歩も2歩も早くこの状況が達成されており経済再開における需要と、今までのコロナ禍における供給制限のアンバランスから局所的な物価高騰や全体的なインフレが起きている状況でもあり、景気全体感に大きな影響を及ぼしており、今後日本においても経済再開に伴う人モノと需要とのバランスからの諸問題が起きてくる可能性もあります。

 

もう少し先の時間軸で言えば、波の大きさはともあれ第6波が来る事はほぼ確実視されています。今後も新規感染者数の揺れ動きがある中で医療機関のキャパシティーの問題があります。

医療機関の平均利益率は6.3%であり、2019年度の0.2%から新型コロナウィルスの病床確保向けの補助金を受け取ったことによって利益の向上が見られる。※(14) 一方で、コロナ患者受け入れには病院による差がありモラルハザードにつながっていることも懸念されます。実際に重症者や中等症者の病床受け入れ数が増えていない状況を考えると今後のテコ入れが必要な状況であると言えるでしょう。日本は人口あたりの病院数では世界1、2位を争う水準であるものの、大規模な医療機関が少ない分コロナ対応が病院数の数に対して充分実現できない体制となっています。※人口当たりの病院数は世界で2位だが、人口当たりの医師数は31位。(出所:OECD)

このような構造的な問題に対してどのように対応していくかと言うことが今後の中長期的な課題になることでしょう。もちろん治療薬の開発が進むことによって症状が全体的に緩和され、医療キャパシティの問題は徐々に解消されていくことが想定されますが、今後も起こりうるパンデミックリスクに備えて今回のコロナ禍で露呈された構造的な問題についての対応はいずれにしても必要なことでしょう。

 

足元では原油高と円安が進んでいます。
これは当たり前でありますが輸入物価指数の上昇を示し、日本が直接原因ではないコストプッシュインフレを促すことになります。
9月の輸入物価指数は31.3%上昇※(5)で、企業物価指数は6.3%上昇しています。※(6)

これに対して消費者物価指数の上昇がないと言うことでエネルギー高や円安で値上がりした調達コストを消費者に転嫁できていない企業の業績圧迫が懸念されます。中国においても同様の傾向が顕著にみられています。

企業におけるコスト高や生活における物価の上昇による生活のしにくさがじわじわと真綿で首を絞められるように効いてくることになるでしょう。
一方で、さらに懸念されるのは日本人及び日本企業そのものの購買力です。足元の需要悪化の状況の中で日本企業は収益を上げづらくなっています。その中で海外の要因によって上がった物価によって生じたコスト高を吸収できるのか、海外マーケットにとって日本の購買力に魅力がなくなってしまえばどんどんと調達そのものができなくなる事態が想定されます。

戦略物資については自国での生産能力を高めることによって地政学的リスクを排除しようとしています。
例えば中国では半導体の自国調達率70%を目指していますが現在ではまだ10%半ば程度に留まっています。※(7)

日本においてはTSMCの半導体工場が2024年から稼働する見込みで来年着工となります。※(22)
調達するのにコストがかかると言う事はコスト高・業績悪化につながりますが、そもそも調達できないとなると死活問題に発展しかねません。事業そのものが立ち行かなくなり国そのものの運営に支障をきたすことになります。

将来のリスクに過剰に心配する必要はありませんが、経営や人生におけるリスクの先読みの発想もアンテナを立てて新聞を読むことによって鍛えられます。


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