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深掘り経済指標【有効求人倍率】

経済トピック
2021.12.14

「今月の深掘り経済指標」【有効求人倍率】

今月取り上げる経済指標は、「有効求人倍率」です。有効求人倍率とは、仕事を求めている人の数に対して求人の数がどれだけあるのか表した指標で、「求人数÷求職者数」で計算されます。

 

例えば有効求人倍率が1.2倍であれば仕事したい人100人に対して120人分の仕事があるということで、ミスマッチがなければみんな仕事に就ける状態ということです。基本的に景気が良くなれば求人が増えるので倍率が上がり、景気が悪くなると求人が減るので倍率が下がります。そのため雇用面から景気を判断する上で重要な指標になります。

 

直近で発表されている10月の全国の有効求人倍率は1.15倍、つまり仕事したい人100人に対して115人分の仕事がある状態です。コロナの影響で一時と比べて下がったものの、有効求人倍率の水準はそれなりに高い状態となっています。
ここ数年は人手不足が社会問題になっていますが、過去の有効求人倍率(年度平均)を見てみます。

 

・1973年度(高度成長期ピーク):1.74倍
・1990年度(バブル絶頂期):1.43倍
・2009年度(リーマンショック後の最悪期):0.45倍
・2018年度(人手不足が社会問題):1.62倍
・2020年度(コロナ感染拡大):1.10倍

 

2018年度はバブル絶頂期以上に有効求人倍率が高く、いかに人手不足が深刻だったかが分かります。リーマンショック後は派遣切りの影響で“年越し派遣村”と呼ばれる一種の避難所が開設されましたが、近年景気が悪くなってもその種の話題を聞かなくなったのは仕事自体は沢山あるからということですね。

 

ここ数年、有効求人倍率が格段に上がったことで経営者にアドバイスする機会が増えたのが採用面接の目的です。従来の目的は応募者の考え方や人柄、スキル、ポテンシャルが自社の求めているものに合致しているか見極めることだったと思います。しかし、最近の採用面接において重要なことは、応募者にこの会社に入社して仕事をしたいなと思ってもらうための“惹きつけ”です。

 

前述した通り、コロナの影響で下がったとはいえ有効求人倍率は依然として1倍を超えており人手不足の環境であることは変わりありません。企業としては人材確保に苦労している反面、雇用される就業者側からしてみると、沢山の企業の中から自分が行きたいと思う企業を選ぶことができる、いわゆる「売り手市場」の状況です。特に人柄も良くポテンシャルの高い就業者は就職活動を始めると沢山の企業からオファーが殺到します。勿論、採用面接本来の目的である見極めもしつつ、仕事の実態や働き甲斐、良い面も悪い面も包み隠さず正直に話すことで自社の魅力を伝える“惹きつけ”が重要になります。

 

 

かつては採用面談というと企業側が候補者を一方的に見極めるという意味合いが強く、ストレス耐性や志望度の強さを測るなどの理由で圧迫面接も頻繁に実施されていました。しかし、このような人手不足の世の中でかつてと同じようなやり方で採用面接をしていたら応募者からも世の中の変化についていけていない企業という烙印を押され、向こうからお断りされるのがオチだと思います。

直近では緊急事態宣言解除に伴い、飲食業中心にサービス業の採用が増加しているという報道を目にすることが増えてきました。アルバイト人員の争奪戦も発生しているようで、時給も上がっているようです。
オミクロン株の状況次第ですが、行動制限緩和に伴う経済の回復と共に有効求人倍率も上昇していくのではないかと思われます。

 

 

 

「今月のKC景気指標ピックアップ」

 

■新設住宅着工
11月30日に発表された10月の新設住宅着工数は前年同月比10.4%増となりました。増加は8ヶ月連続で伸び率は4年9ヶ月ぶりの大きな伸びとなっています。昨年はコロナの影響で住宅展示場が閉鎖されるなど住宅関連の営業活動が制限されたことが反動の要因ではありますが、他の消費関連と比べて住宅関連の消費は旺盛です。
持ち家だけに絞ってみると前年同月比16.6%増と12ヵ月連続で増加と、テレワークの普及でより住宅環境を改善する動きが広がっているようです。実は私もコロナ禍で仕事がほぼテレワークとなった時期に、自宅での仕事の環境を考慮して家の住み替えを行いました。ハウスメーカーの担当の聞くと注文住宅のニーズとして、集中してオンライン会議ができる個室の書斎を作りたいという方が以前と比べて大幅に増えたそうです。昨年はお客さまの会社の役員会に参加している際、堅苦しい雰囲気の中、お子さんが乱入するという状況にも遭遇しました。やはりDX社会において自宅の仕事環境はとても重要ですね。

 

 

 

■所定外労働時間
所定外労働時間とは、分かりやすく言うと残業時間(休日出勤含む)です。12月7日に発表された10月の所定外労働時間(全産業・パート含む)は前年同月比2.1%増となっています。昨年の10月が11.1%減と大幅に減少したことを考えるとコロナ前と比較して残業が減っている状況が続いていることが分かります。在宅勤務が増えて無駄な残業が減ったと言われていますが、その傾向は良い意味でこれからも継続すると思われます。
お客さまの会社の月次の数字を見ているとコロナの感染が拡大して目に見えて減ったのは上記の残業代の他、旅費交通費と接待交際費です。残業だけでなく無駄な出張や会食も減ったということですね。コロナは人類にとって本当に大きな脅威であり、試練でしたが社会の合理化・効率化を進めるという意味ではプラスの側面もあったと思います。
なお一つ気掛かりなのはパート労働者に限って見た所定外労働時間です。昨年の10月に20%減と大幅に減少したにもかかわらず、今年の10月も5.1%減と減少傾向が続いています。正社員の残業は戻っているのに、パート労働者の残業は減り続けているということです。パート労働者の世帯が一概に低所得という訳ではありませんが、コロナが原因で困窮している世帯が増えているであろうことが予想され、政府によるピンポイントでの支援が望まれます。

 

 

 

■機械受注(船舶・電力除く民需)前年比
機械受注は設備投資の3~6月先の先行指標です。分かりやすく言うと、ここの数字が良くなってくると設備投資増え、悪くなってくると設備投資減るということです。
2020年度は前年比で見ると、ほとんどの月がマイナスでしたが、今年度に入ってからはずっとプラスが続いています。直近の10月は足踏み状態となりましたが、4月以降は概ね二桁増が続いており(7月:11.1%、8月:17.0%、9月:12.5%、10月:2.9%)設備投資意欲が大きく改善していることが読み取れます。
前述の通り、コロナ禍で設備投資を控える企業が増加しましたが、リーマンショック時と異なり設備投資の戻りは早いです。特にコロナ禍で加速したDX関連の投資意欲は高く、機械受注の推移を見ていても当面は積極的な投資が続くと見られます。
インバウンドの減少に伴うホテル投資や、テレワーク推進に伴う都心オフィスの投資環境は厳しくなると思われますが、インターネット通販の拡大に伴う物流センターの投資の話などは依然として多いと感じています。


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