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今週の経済の動きと経営の切り口 ~様々なテーマへの情報アンテナと中長期目線の重要性~

経済トピック
2021.12.24

「今週の経済の動き」については、「今週の日経新聞の数字トピック」と合わせてお読み頂くことで、より理解が深まる構成になっております。「数字トピック」に関連る数字があるものは、トピック番号を※()で番号を記載しておりますので、ぜひ参照くださいませ。

 

■全体感

日本全体が弱含みの中で、今週はそれほど大きな動きはありません。一点、12月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、全規模・全産業の景況感を示す指数がプラス2と、新型コロナウィルスの感染拡大後で初めてプラス圏に浮上したことが明らかになりました。

出典:日経新聞 1214() 3面 総合2

 

アメリカのインフレ傾向が明確になっている中、欧州を中心にオミクロン株が感染の主流となってきている状況です。オランダが1219日より都市封鎖となり、ドイツが英国からの旅行を停止するなど具体的な動きが出てきています。※(26

収束にはなかなか時間がかかりそうです。とは言え重傷者や死亡者の数は落ち着いてきているので冷静な判断も求められるところかと思います。

もろもろ劣勢に立たされている日本ですが、コロナウィルスの感染状況については低く抑えることができており、この点は今後も世界的な優位性を持てる日本の文化かもしれません。

 

今週もそのような状況の中でいくつかのトピックをピックアップしました。

 

 

■世界の食糧を押さえている中国

 

中国が世界人口の中に占める割合は2割程度です。にもかかわらず、とうもろこしや小麦、米などの穀物の世界最古の50%以上を購入していることが明らかになりました。※(28

出典:日経新聞 1219() 1

 

新興国や途上国においてはこの中国の食料の購買力によって食糧価格の上昇が悪影響を及ぼしています。コロナ後において、全体的にインフレ傾向にありますがコロナ後の需給状況のアンバランスではなく、中国の国家工場における食料戦略などの構造的な事由によって相場が上昇している面もあります。この点においては注意が必要です。

 

穀物等の国際価格の動向

出典:農水省資料「穀物等の国際価格の動向」(更新:2021126日)

 

中国は、経済成長によって国の産業が農業等の一次産業から二次産業、三次産業のサービス業まで転換してきています。その中で、食料品の国内生産量が頭打ちになってきており、海外からの食料調達を加速させている状況があります。

出典:日経新聞 1219() 1

 

中国においても国内の経済格差が明らかになってきており、食料の供給を確固たるものとすることによって国内の政治基盤を維持したいと言う思惑もあります。

今後の食料事情についても、国内だけでなく世界的な需給バランスにアンテナを立てていくことが必要なのかもしれません。

 

 

■大阪市の雑居ビルの放火事件

 

12月17日に大阪市の北新地の雑居ビルが放火されました。これによって24人の犠牲者を出す惨事となりました。

 

個別具体的な事象なので、社会的な構造と当てはめるのは考えすぎかもしれませんが、今後1人世帯が増加し、さらに経済の二極化が進む、また少子高齢化が進む中で将来の希望が見出せなくなった方が一時的な気の迷いでなんらかの犯罪を犯してしまうような事象が増加することも懸念されます。今後の社会情勢においてどうしようもなく追い詰められた個人が暴挙に出てしまうというリスクも可能性として認識しておく必要もあるのかもしれません。

 

冒頭で挙げた事件現場のように、不特定多数が出入りする場における警備はとても難しい状況となっており、すべての場所で警備する事はコスト面から考えても現実的ではありません。

このような状況の中で、どのような社会を描き、その社会においてどのように国民の安全を守っていくのか、対外的な防衛だけではなく国内における防衛についてもしっかりと考えていかなければならないことだと思います。

 

ソフトターゲットが標的のテロは海外で多発しているようで、2016年にフランスのニースで80人以上が死亡したテロ事件では、フランスの警察当局は社会的不満を募らせたLONE WOLF、一匹狼型の犯行だったと指摘しています。ベルギーでは駅や空港が狙われ、スリランカでは市街地で爆発が起きました。

ITやAIを活用した不審者対策の必要性を求める声が高まっていますが、これを究極まで高めた社会は中国社会かもしれません。現に中国においては犯罪や信号無視などの事案が減っていると言うことです。人間の性善説に立った自由な社会環境は理想的ではあるものの、ある程度の仕組みや監視によって最低限の安心を確保すると言う考え方も今後の社会情勢を踏まえると必要になってくる可能性もあります。

 

理想論も大切ですし、精神を高めていく必要もあるでしょう。一方で社会インフラとして最低限の整備を必ずしも性善説に立たないこれらの事象を反省材料として対応していくことも求められるのではないでしょうか。

 

 

■ Yahoo!が全社員を最先端IT人材に育成 8000人を再教育

 

Yahoo!が社員を先端IT人材への転換を進めると言うことです。再教育により業務でAIを活用できるようにしていくとのことです。

 

国家戦略においても生産性投資は人材への投資、研究開発投資、設備投資の3つがあります。

これは企業においても同じことで、中長期的に世の中に貢献し続ける企業になるためには、Yahoo!のようなIT関係の企業においては特にAIの活用が必要不可欠であると言う判断だと思います。

これは逆に言うと、Yahoo!に入社することによって、AI人材に育成してもらえる(入社したらすぐにAI人材になれると言う簡単なものでは無いのでしょうが)と言う事でもあるため、採用においても有利に働くと考えられます。

 

これからの企業は、優秀な人材を引きつけて育成して変化の激しい最中においても価値を提供し続けられる存在になることが必要です。待遇条件だけで入社を決めるわけでもなく、入社をしてから自分自身がどのように活躍できるのか、どのように成長できるのかと言うことを考えた上で人はどこで働くかを決めているはずです。

自分自身が生み出す価値、そこから得られる収入ややりがいなどを高めてくれる企業が働く人にとっても良い企業であると思います。これができる企業は、結局付加価値を生み出し続けられる企業です。付加価値を生み出し続けられない企業が多く存在していたとしても、社会にとってはなかなか貢献しづらいと言う事でもあります。

 

付加価値を生み出せない企業は、企業の存続自体も危ぶまれ、未来への投資もできない、そしてそこで働く従業員さんの待遇改善もできない、当然ながら株主還元や社会還元にも原資が回っていかないことになります。

付加価値を生み出せる状況においては、Yahoo!のように人材投資と言う未来投資、そして働く従業員さんにとってみれば自分自身がAI人材に成長できると言う、働く従業員さんの待遇改善に関する施策を打つ事はとても有効な手段です。もちろん、従業員さんの待遇改善のためだけではなく、従業員さんがAI人材になると言う事はYahoo!がこれから先の世の中に対して価値貢献できる企業であり続けると言う事でもあるでしょう。

 

人材投資や、研究開発、設備投資についてはここ12年程度の利益やキャッシュフローにはプラスの影響がないかもしれません。しかしながら、中長期で経営を考える際には必要不可欠なものです。付加価値を生み出せている間にこれらの投資に積極的に取り組み将来の貢献価値を上げることも企業経営にとっては非常に重要なことだと考えます。

 

 

■介護施設の人材配置基準の緩和 職員1人は入所者4人まで対応可能へ

 

政府が介護の人員規制の緩和を検討するようです。介護施設の入所者3人につき少なくとも1人の職員を配置する現行基準を見直し、1人で4人に対応できるようにする案を軸に調整すると言うことです。センサー等のIT活用で介護現場の生産性を高めると言うことです。※(19

出典:日経新聞 1221() 1

 

今後、さらに少子高齢化が進む中で介護事業は必然的に世の中にとって必要になってきます。しかしながら大変難しい問題としては介護でどれだけ貢献をしたとしても社会的な付加価値が向上することがなかなか見込めないと言うことです。特に介護を受ける人は社会保障の問題や財源等の問題でそれほど多くの対価を払えるような状況ではなくなってくることが想定されます。

今後の日本の社会を考えると介護においては非常に生産性高く対応していくことが求められます。これは道義的な問題は様々あれども人口構造が大幅に崩れた時に綺麗事でいられないような状況が間近に迫っています。

 

医療介護の費用の財政的な問題を考えると、今後も医療介護に従事する方の報酬はなかなか上げることができないでしょう。そのため、介護の人材は常に不足しており有効求人倍率は4倍を超えます。この構造は今後改善していく兆しは見えません。激務の上で報酬も安いので当然人が集まりづらいと言う実態があります。

今回の、介護の改正については生産性を上げる方向に向かっているため良い方向であるとは言えますが、生産性改善のレベルから言って根本的な問題を解決するには至っていないでしょう。

 

 

また、同様に医療においても同じことがいえます。診療報酬の総額が決まりました。本来、社会保障の問題を考えるときには医療費については抑えていかなければならないはずです。しかしながら、診療報酬が増額されると言う事は、また社会保障の問題に対して正面から向き合えていないことが浮き彫りになったのではないでしょうか。

 

おそらくは、全体の生産性を上げつつ、今回の新型コロナウィルスのようなパンデミックの事態にも対応できる体制を整えるとなると、医療業界にも統廃合の必要性が出てくるのでしょう。今回も小規模の病院が多すぎたために、コロナ病床が十分に確保できなかった課題があります。

医療についても統廃合を進めて必要な設備投資を行い、生産性を高めていかなければ再生問題についてもパンデミックなどの対応においても立ち行かない事は明らかでしょう。

また、柔軟な医療体制を作るためにもオンライン診療については推進をしていく必要があるのでしょうが、オンライン診療についての診療報酬についてはそれを推進するような改正が行われていません。

オンライン診療でも様々なハードルがあるのでしょうが、実現できればコロナウィルスの軽症者や中症者等の対応についても在宅診療や生産性の改善につながります。

 

残念ながら、人口構造を考えるにあたり医療介護については現状と同じ水準を将来にわたって行っていく事は不可能です。人間のぬくもりのある医療や介護といったものも大切にはしつつ、ここにはAIやロボットやその他生産性を高める工夫をしながら対応していくしかありません。外国人労働者の方に日本の将来の医療や介護の従事をお願いすると言う方法もあるでしょうが、それが果たして根本的な問題解決につながるのか疑問です。

将来を見据えた上で圧倒的な生産性の改善を行い、社会保障の問題をクリアしていく必要があるのです。

 

国の歳出に占める社会保障費(医療・介護等)の変化

注:1990年度は当初予算、2021年度は政府案ベース

出典:財務省「財政を考える」(令和34月)

 

現在は、何とか人口構造的にも医療介護が成り立っているように見えますが、財政的には成り立っていない事は明らかですが。これはこの先に人口構造の変化が起こってきたときによりリアリティーを持って明らかになっていくことです。そしてこのような未来がほぼ確実に見えている中では、医療介護については生産性とローコスト化が進んで行かざるを得ない事は確実です。これに備えて、社会がどのような変化をしていくのか、何がその変化を阻んでいるのかといったことにアンテナを立てながら生活をしていくことが大切でしょう。この変化は、今後高齢化を迎える我々の世代については都合の良い未来では無いかもしれませんが、持続可能な社会制度を保つためには必要なことです。

 


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