インフレがじわじわと、円安が急激に、進んでいます。
今回は、これらが今後の日本社会に与える影響について考えてみたいと思います。
一言で言うと、企業も人も二極化が加速していくことになるのではないかと考えられます。
インフレ(物価の上昇)とは、賃金が上がらない方々にしてみれば消費税の税率が上がるようなものです。消費に対して余計な負担がかかります。そして、消費税よりも悪いことに、余計な負担をした割に国家の財政は改善されないということでもあります。
これに対して、低所得世帯に対して政府が子供一人あたり1人5万円の物価上昇手当を支給する検討を始めたという記事が出ています。
物価上昇手当を払うということは、国家財政が改善されない中でさらに財政支出を負担するということになってしまいます。
今の状況においてはそれは仕方ないのでしょうが、将来的に経済を回復させ賃金を結果として上昇させる、一部の人ではなく底上げをしていく施策をとっていかなければ根本的に国民全体が豊かになる事は考えづらいといえるでしょう。
その上でウクライナ情勢や円安の影響によるエネルギー高、および海外の旺盛な需要に基づく輸入物価指数や卸売物価指数の上昇によって、世の中的なインフレ、特に企業が調達する原材料やその他のサービスの物価の上昇が顕著になっていきます。
企業の調達価格(原価)やコストが上がり、そこからじわじわと売価への転嫁が進み、消費者物価の上昇につながらざるを得ないことになるでしょう。また、体力のない企業は原価やコストの値上がりによる利益の圧迫分を人件費の圧縮に向けざるを得ないような状況も想定されるでしょう。
この円安とインフレ傾向はどこまで続くのでしょうか。
ある程度の期間は継続するという見方が一般的です。
日銀の金融政策の方向性がしばらくは変わらない中では、円安は構想的に継続むしろ加速せざるを得ない可能性があります。特に、最近の日経新聞には日銀の指値オペの記事が継続的に出ています。これは具体的に言えば、長期金利をイールドカーブコントロールと言う名のもとで統制している金融緩和政策のアクションの1つです。
日銀関係の記事がこれだけ出始めているということは、世間の関心が日本の金融政策に向いているということであり、世間の関心が日本の金融政策に向けば向くほど日銀に打ち手がないことが明らかになり、円の構造的な弱さの共通認識が際立ってくる可能性があります。
インフレは賃金の上昇と連動して起こることで実質賃金の上昇(物価の上昇よりも賃金の上昇幅が大きい)を伴い景気にも好影響になるのですが、それも企業や人によってまばらな状況です。
今週は、三菱UFJ銀行が3.5%超の賃上げを行う記事が出ていました。メガバンクは、過去から人材の増加抑制(実質的な削減)を進めてきています。そのような中で、残った人材に関してはインフレに対応するように3.5%超の賃上げを行います。
また円安の影響もあり、キャノンの純利益が2割増と言う記事もありました。このように、輸出の割合が大きい企業については円安が利益になります。しかしながらリーマンショック後の円高期を乗り切るために海外生産を推進した日本において、輸出産業は主流ではなくなってきつつあります。これは、基本的に日本の貿易収支が赤字基調であり、経常収支の黒字が主に所得収支によって実現されているということからも見て取れます。(この貿易収支の赤字基調も、円安の要因の一つでもあります)
円安傾向はこのように一部の輸出に頼る大型企業には追い風になりますが、これも結局は日本国内における二極化を推進する一つの要因になっている可能性が高いといえるでしょう。
このように、賃上げができる企業とそうでない企業、賃上げを享受できる人とそうでない人、が分けられつつあります。
円安とインフレによって、二極化の実感が加速していくことが想定されます。
このような状況の中で、中堅中小企業ができることといえば、良い会社になるために経営を実践していくことだと考えます。
外部環境としては、このように二極化が進み苦しい生活に追い込まれる方々が多くなる外部環境の中で、どのように商品・サービスを磨きお客さまから選んでいただくか、そして、働く人が働きがいをもって、活躍していただけるか。
中堅中小企業に勤める労働者人口の割合は7割を超えるわけですから、その一社一社が経営をより良くすることによって、そこで働く従業員さんやその家族を幸せにしていくことの集積の中で、今の国家全体を底上げしていく必要があるということです。
企業としていかに経営を改善できるか。世の中的に賃金がたいして上がらない中で、インフレが進んでいる状況の中で、その世の中の水準に合わせるのではなく経営をよりよく進めることによって自社の賃上げの水準をインフレ以上に合わせていくことで、従業員さんは生活を豊かにすることができます。
この一つ一つの積み重ねが、これから中長期的に日本に成り行きで陥る可能性がある「全体が停滞した中で二極化が進んでいく」というリスクを改善するための具体的な一歩であると考えます。