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なぜ円安が進行しているのか、また円安が与える影響

経済トピック
2022.04.29

この1ヵ月の経済情勢を見ていると、正直、今後のこの国の経済情勢や国民生活はどうなるのかと危惧を抱かざるをえません。

コロナ禍、物価高、円安・・・。特に円安になっている背景と、それが与える影響について考えてみたいと思います。

 

現在、諸外国がインフレ対策で金利が上がる一方で、日本は金利が上がっていません。421日の日経新聞総合2面「金利上昇、日本置き去り 主要国で最低水準」では、昨年末時点ではマイナス金利が多かった先進国も、現時点では軒並み金利が上昇し、マイナス金利が解消されていることが紹介されています。一方で日本も金利が多少上がったとはいえ、諸外国と比較すると低金利が継続しています。

 

資金は金利が高い方に流れる為、この金利差によりドルが買われる結果、円安となっているのです。

この結果、足元進んでいるエネルギー等の輸入物価の高騰に加え、この円安で更に物価が上がりかねない事態となっています(さもなくば、価格転嫁できない企業の収益が大幅に悪化し、所得や雇用に影響を与えます)

 

それであれば、日本の金利を上げればよいのでは、という考えになりそうです。実際、422日の日経新聞金融経済面「緩和修正、試される日銀」では長期金利の引き上げやマイナス金利の解除等、市場で考えられている金融緩和の修正策が紹介されていました。

 

しかしながら、金利の引き上げ等に向けては留意しないといけないことがあります。それは、日銀が債務超過となり、更に円安が進むリスクです。

 

これまで日本銀行は国債等の資産を吸い上げることで景気を維持してきました。21年末時点ではその保有額が521兆円と、ほぼGDPと同じ規模となっています。

詳細な説明は割愛しますが、金利が上がった場合、既に発行されている低金利の国債の価格(時価)は下落することになります。その為、日銀が保有している国債の資産価値も下がり、最悪の場合は日銀の債務超過が懸念されます。

 

日本円の紙幣は日本銀行が発行しているものです。その日本銀行が債務超過となった場合、更に円安が進みかねません。

この果てはどうなるのか。金利が上がり、住宅ローン等の負担が重たくなる一方で、円安により物価高はとどまらず、国民生活は破綻しかねません。その対策に財政を出動すれば、財政赤字の拡大、税負担の拡大を通して国民所得は更に減少し、困窮は広がる一方です。この負のサイクルはどこまでいくのかとぞっとします。

 

かつては円安は日本の輸出産業にとって収益増につながりました。しかし海外への生産拠点が進んだ今となっては、円安による収益改善よりも、輸入物価の増加等、負の側面が大きくなりつつあります。実際、エネルギー価格の上昇も織り込んでではありますが、円安の方が収益悪化となる製造メーカーも少なくありません。

 

アベノミクス以降の金融政策偏重の検証も必要ですが、足元はそれよりもこの局面に対してどのような手が打たれていくのか、よく注視していくことが必要です。


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