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今後懸念される電力需給の逼迫

経済トピック
2022.07.01

今週の話となりますが、経済産業省は626日に27日に電力需給が厳しくなる見通しを示し、初めての電力の需給逼迫注意報を発動しました。

この電力の需給逼迫注意報は、翌日の電力需要に対する供給の余力(予備率といいます)5%を下回る見通しとなれば発令されるものとされています。

 

電力需給が逼迫している原因として、第一に想定外の猛暑が続いていることがあります。

東京都心を始め、関東を中心に猛暑が襲っています。観測史上、東京都心で6月に猛暑となるのは5回目なのですが、2日連続の猛暑は1875(147年前)の観測開始以降で初めてとのことです。

こうした猛暑が冷房等の使用率を高めます。

 

第二に、現在の電力供給の主電源である火力発電所の供給力が落ちていることがあります。

長期的な理由としては、電力小売りの全面自由化に伴う電力の安売り競争や太陽光発電の普及を受け、古い火力発電所の休止や廃止が進んできたこと為です。

また、短期的な理由として、3月の福島県沖の地震で一部の火力発電所が損傷し、供給力が低下してことがあげられます。

 

いずれにしても、需要側が温暖化等により電力需要が増加する一方で、供給側が火力発電所等の供給力が落ちている為、電力が供給しきれない可能性が高くなっているのです。

そして、これは今年については更に猛暑が続くことが想定され、また来年以降も温暖化が進むならば、更なる電力逼迫が生じる可能性が高くなってきます。

 

それでは、電力需要に対応する為に、火力発電の増強に努めるべきなのでしょうか。

これに対しては二つの視点から疑問符がつきます。一つ目は地政学的リスクからエネルギー価格が高騰している中、また今後も高騰が続くことを想定すると、火力発電は高コストな電力となってしまいます。

 

実際、ウクライナ侵攻に端を発したエネルギー(ガス)の供給不安を受け、火力発電のエネルギーである石炭需要が増大し、石炭の価格が高騰しています。今後の地政学リスクを考えると、この傾向が続く可能性があります。

 

二つ目は火力発電所の強化は脱炭素の流れに反することです。火力発電所は温暖化ガスを大量に排出し、二酸化炭素を増加することになってしまいます。二酸化炭素の増加が更なる温暖化をもたらせば、今よりも電力需給が逼迫することが懸念されます

 

それでは、今後の電力供給はどうあるべきなのでしょうか。

太陽光や風力等の再生可能エネルギーの導入が進むのが最も望ましいかもしれません。しかしながら、十分な電力供給に向けた投資は道半ばであり、また送電線網もまだ不十分という問題もあります。

 

そうした流れの中で、原子力発電の再稼働が大きな論点となってきます。

原子力発電については、東日本大震災の経験もあり、根強い世論の反発があることも事実です。一方で、このままでは安定し、環境に優しい電力供給ができない恐れがあります。

そうした事も踏まえ、原子力発電の再稼働の是非、また仮に再稼働する場合の条件等について議論すべきだと考えます。


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