本日は、ボッシュの記事を踏まえて、これから先の働く人を活かし幸せにする組織について考えてみたいと思います。
先に書いてしまうとポイントは
中堅中小企業においては、
・経営としては将来のマーケティングとイノベーションを踏まえた人材育成環境の設定力の向上
とともに、
・働く人自身の学ぶ能動性が不可欠であり、そのためにも働きがいを高めることが大切
ということです。
7月7日の七夕の日経新聞14面にボッシュが全社員400,000人の高度人材教育、という世界の再教育に関する記事がありました。
仮想空間も駆使して、全社員がソフトウェアに精通するデジタル集団を目指すということです。
電気自動車(EV)の時代に入っていく中でソフトウェアが車の優劣を決める中心要素になることもあり、競争領域が変わってきた自動車産業において働く人を活かすためにもリスキリングを推進しているそうです。
ボッシュは大企業なので、
①社員の状況に合わせた最適なコースを選択できるようにして、
②仮想空間での教育環境や、
③実際に関連する職場を提供する
という非常に人が育つ上で魅力的な環境を設定しています。
①で、それぞれが自分自身の希望に合った具体的な教育の方向性を選択でき、②でそれぞれの事情に合わせた環境での教育を受けることができ、③ 学びのインプットを職場のアウトプットと近接させることで効果の向上を図ることができる
というわけです。
当たり前ですが、中堅中小企業においてはこのような恵まれた教育環境や環境設定は自社だけで提供するのは難しいでしょう。
また、そもそもリスキリングにおいて各個人にとって最適なスキル構成を教育プログラムに落とし込んでいる時点で、組織の技術に対する先読み力がなければ難しいことにもなります。
基本的な考え方や、外部環境に対するアンテナの立て方等をお伝えすることは我々でもできるのですが、皆様の事業が中長期的にお客さまに選ばれ続けるために、社員の方々が具体的に何を学ぶかということは、将来に対する具体的なマーケティングとイノベーションが前提となります。
将来において、自社の商品サービスをこのように変えていくからこそ、社員の方々には具体的にこのようなことを学んでもらいたいと提示することができるのです。
そのためには、将来に対する具体的な洞察とともに、マーケティングとイノベーションによって具体的な商品サービスのイメージまで落とし込み、そのために必要な学びの要素は何なのかと言うことを考える必要があります。
この部分を、マネジメントチームで検討することが人材育成の環境設定力につながります。
とはいえ、大企業と比較すると情報収集能力や人の先読み力(そのことに使える時間やリソースも含めて)にもある程度制限がかかることも否めません。
そのため、働く人を活かし幸せにする組織を実現するためには、働く人も学び貢献する意識が必要です。自らが、将来を洞察してどのように貢献をしていくのかということを能動的に考えることによって、自発的な学びができるはずです。
特に中堅中小企業においては、会社としても学びの環境や方向付けを具体化する努力をするとともに、働く人も働きがいが高まった環境の中で自らが能動的に学ぶ姿勢を高めていくことが必要になると考えます。
働く人の学びの能動性については、一朝一夕で高まるものではありません。そのためにも、働きがいを高めるために良い仕事を推進していくことが大切です。
お客さまから感謝され、働く仲間から感謝され、工夫によってさらにそれらの質を向上させていくというサイクルです。
このように考えていくと、結局はマーケティングとイノベーション、そして働きがいを高める組織、ということで、原理原則的な考え方に落ち着きます。
時代時代で、トレンドは変わりますが、そのために経営として行っていくべき本質の部分はそれほど変わらないことを痛感します。