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未来のお客さま、社会への貢献を考える

経済トピック
2022.10.14

今回は、直近の記事を踏まえて未来を予測した企業の動きがどうあるべきなのか

という点を考えてみたいと思います。

 

1010日の記事に、「スマートシティーに逆風 企業と住民、意識の違い」という内容がありました。

カナダのトロント、オンタリオ湖に面した一角の再開発計画において、グーグルの親会社であるアルファベットが多数のセンサーを利用してデータを集め、交通やエネルギー利用を効率化するスマートシティを建設する予定だったが、当時のフェイスブックのデータ利用スキャンダルなどもあり、住民の反発を買った。その結果、アルファベットは計画を中止し、新たな計画では脱炭素や低所得者向け住宅が焦点となり、イノベーションやデジタルといった言葉はなりを潜めた。ということです。

日本においても、静岡県裾野市が20年に始めたスソノ・デジタル・クリエイティブ・シティ(SDCC)構想の中止を決めたということです。トヨタが開発するウーブン・シティと呼ぶ次世代技術の実証都市とは直接関係がなく、開発は継続するようです。

企業側としては、スマートシティーとして、未来の都市、住環境を提供しようとしているが、住民自体はそれを求めていないということです。テクノロジーが大幅に進歩したとしても、人が本質的に求める価値や、嫌う価値というものは大きく変わらないといえるのかもしれません。

 

もちろん、Googleやトヨタにとっては、研究開発的な投資の要素もあるのでしょうが、未来のお客さま・社会に貢献をするために人間の本質的な感情や感覚、人間観といったものを深く考える必要があるということでしょう。

テクノロジーが圧倒的に早く進化したとしても、人間の心と体はそれに追いついて進化しているわけではないのです。

企業経営においても同じですが、未来を描いて、その未来にお客さまや社会が求めるものを提供しようとすることはとても大切です。それと同時に「テクノロジーの進歩と人間の心と体の進歩のギャップ」を踏まえてどのように商品サービスを提供していくか、という論点は忘れてはいけないことでしょう。

 

ちょっと違う観点ですが、未来を先取る商品サービスの提供はタイミングについてもよく考えなければいけないという事例として日産のEVがあります。

直近でルノーとの資本関係でのトピックがありましたが、日産は世界で最速でEVの開発を推進し、シェアナンバーワンだった時期がありました。一方で、現在は世界シェア7位に甘んじており、テスラの後塵を拝している状況です。

これは言ってみれば、先を読みすぎた動きが、ある種先を進みすぎ、すっぽ抜けてしまった感じと言えるかもしれません。

現在の地球環境に関する世界的な認識があって、世間が日産に追いついたといえるかもしれませんが、かならずしも先行しすぎることが経営において最適ではないことの実例といえるかもしれません。

 

どのように考えれば、時代の流れと企業の提供するもののタイミングを合わせられるのか。これは明確な答えがあるわけではありませんが、やはり外部環境を捉えて現実的に考えていくことが大切なのだろうと考えます。構造的に明らかなことは世の中の需要に対して商品・サービスがすっぽ抜けるリスクは少ないものと考えられます。

 

例えば、109日の記事に「進む円安、細る外国労働力 ドル建て賃金4割減、生活環境改善も急務」という記事がありました。

 

当たり前の話ですが、同じ200,000円の給料でも、1ドル100円の時と1ドル146円の今とではドルベースの金額で大きな差が出てしまいます。(1ドル100円であれば2000ドル、1ドル146円であれば約1370ドル)

ドルベースで換算すると、シンガポール(非製造業)や香港(非製造業および製造業)に賃金水準で日本は抜かれた状態となっています。

 

日本は少子高齢化が進んでおり、かつこのように円安の影響によって、外国人労働者の数は大幅に減少する可能性があります。ドルベースでの競争力を合わせようと日本円の額面を上げると、労働分配率が上がりすぎて、経営が成り立たなくなります。

未曽有の円安と水際対策の緩和を機に、インバウンドのお客さまに対して、しっかりと付加価値をつけた商売をする事など、基本的な経営の打ち手はあるのでしょうが、一方で、日本のお客さまについては賃金の上昇がままなりません。そのため、手放しに値上げだけを進めて経営が成り立つとも思えません。

 

このような状況においては、圧倒的に労働力不足の状況に陥ることは目に見えています。だからこそ、ロボティクスやAIなど人の稼働を代替するテクノロジーに関しては、その切り替え圧力は推進されていくことになっていくということです。

 

自動化、オートメーション化を進めることがすっぽ抜ける事は、構造的になさそうです。もちろん、自動化、オートメーション化がお客さまに対しての価値貢献を下げQPS に影響するのであれば問題ですが、今の外部環境や社会情勢を考えると、無理矢理にでも、自動化やオートメーション化を進めた上で、お客さまの満足をどのようにアジャストしていくかということに圧力をかけざるをえないでしょう。

 

ベンチャー企業でない中堅中小企業の経営において、時代を先取りしすぎて失敗するという事はなさそうです。一方で、財務的にも体力が限られている中堅中小企業として、ある程度の打率を想定した事業展開を行うためには、先に述べたようにテクノロジーほどに進化しない人間の心と身体を踏まえた人間観や、外部環境から構造的に業界・社会が抱える課題を解決する方向で商品サービスを磨いていくことが大切であると考えます。


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