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『新幹線から経済が見える』・・・20年後

小宮一慶のモノの見方・考え方
2022.11.08

今から約20年前の2003年、東海道新幹線の品川駅開業に合わせて実業之日本社から『新幹線から経済が見える』を出版しました。当時から新幹線での出張が多かったのですが、その車内や車窓から見える現象を通じて日本経済を説明した本でした。私のとてもお気に入りの本で、2009年には祥伝社から文庫本も出ました。ちなみに、2003年の本の表紙は、今はもう引退した東海道新幹線の700系のイラストで、2009年の文庫本の表紙はN700系の写真でした。今日も大阪から帰りののぞみの中ですが、こののぞみはN700Aです。今ではさらに進化したN700Sも走っています。(「A」は「Advanced」、「S」は「Supreme」の略です。)

 

ふと今年の春先に、『新幹線から経済が見える』の20年後バージョンを書きたくなり、実業之日本社の当時の編集者さんに相談したところ話が進み、私もこの夏にかけ結構気合いを入れて書き、来年早々には出版になりそうです。

 

この20年間で、日本経済は大きく変化しました。新幹線の車両は新しく進歩しましたが、日本経済全体では、残念ながら衰退の兆候がさらに顕著になってきました。東日本大震災もコロナもありました。前著を出したころは、90年代初めのバブル崩壊を経て、「失われた10年」とよく言われた頃で、これが「20年」となり、最近では「失われた30年」なのですが、それも言われなくなりました。残念ながら発展しないことに慣れてしまったのでしょうか。

 

その間、財政赤字は対名目GDP比では先進国中最悪、日銀も「異次元」と言われるほどの緩和を続けました。カンフル剤を打ち続けたのですが、もうそのカンフル剤を手放せなくなり、各国がインフレ対応で金利を上げる中、日銀はまったく身動きが取れなくなりました。政策のフリーハンド(自由度)を失ってしまったのです。そして、高齢化率は29%を超え、人口減少も顕著です。恐ろしいのは、今はまだ高齢化の入り口で、この先、高齢化率は40%まで上昇する予想です。「世代間扶助」という美名のもとで自転車操業を続けている社会保障が、これだけの少子化が進む中では、今のままで成り立たないのは常識的には明らかです。財政赤字もさらに増えることは必至です。

 

一方、悪いことばかりではありません。この20年間、AIなどのテクノロジーはさらに進歩しました。20年前にはなかったスマホをほとんどの人は使っています。また、インバウンド客も急増しました。コロナ前の2019年には3188万人の訪日客があり、5兆円弱の消費をしています。もう少しすれば訪日客はさらに増えるでしょう。

 

20年というのはかなり長い年月でしたが、残念ながら国力は低下しました。解決策はなかなか見つかりませんが、教育により国民の知的レベルを上げることが急務です。時間をかけてでも教育の再構築に取り組むことが必要です。この20年間で優秀な頭脳や超一流のスポーツ選手の海外流出が進んだことも残念なことです。

 

ちなみに、20年前に『新幹線から経済が見える』を担当してくれた編集者さんは今では実業之日本社の社長になられています。これからゲラチェックなどがありますが、本の出版が今から楽しみです。


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