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「金利上昇に備えよ」

小宮一慶のモノの見方・考え方
2024.03.26

日本銀行が今月18、19日の金融政策決定会合で、「マイナス金利」からの脱却を決定しました。具体的には、政策金利であるコールレート翌日物の誘導ゾーンを従来のマイナスから、0~0.1%としました。コールレート翌日物は、銀行間で1日だけお金を貸し借りする相対取引ですが、そこに日銀が毎日介入することで、その金利を一定水準に維持しているのです。1日という超短期の金利を、押しピンで押すように固定することで、他の金利の水準もある程度誘導しようとするものです。

もうひとつ、民間金融機関が日銀に預ける日銀当座預金というものがありますが、その一部の残高に、マイナス0.1%の金利が付されて(つまり預けると金利を取られるということ)いましたが、それも撤廃となりました。

これに関連して、他国の中央銀行では例を見なかった10年国債利回りの誘導、いわゆる「イールドカーブコントロール」も撤廃されることとなりました。ただし、長期金利が急騰する場合などには、従来同様国債を購入することで金利の上昇を抑えるとしています。

今回の利上げは、金融正常化に向けた第一歩、というか0.1歩程度のもので、それほどの実際上のインパクトはありませんが、金融を正常化させる意思表示であれば大きな意味を持っていると私は思っています。

おそらく、年内には再度の利上げがあり、景気後退などの兆候がなければ、年末には0.3%程度まで短期金利が上がる可能性があります。

昨年一年で3.1%、直近でも2%程度のインフレの下では、預金などの実質的な目減り分をこの金利ではまったくカバーしていませんので、金融を正常化するなら、さらなる利上げが必要なことは言うまでもありません。

利上げをすると国債などの利払いが増え、政府は困るという意見がありますが、現状、国債の半分以上は日銀が保有しており、金利増加分を日銀から吸い上げれば、大きな問題は生じないと考えます。

私が恐れているのは、もう少し長期の話です。現状、日本国債の格付けは上から5番目の「A+」です。米国債やドイツ国債は最上位の「AAA」の格付けを保有しています。米国債は10年債で4%強の金利が付くのに、日本国債は0.7%程度と、信用力が落ちる日本国債の金利のほうが低いという不思議な現象が起こっています。これは、日本国債の9割以上が日本国内で消化されているからです。つまり、海外勢は、日本国債など、空売りするとき以外は、たいして見向きもしないのです。

財政赤字が拡大する中、いずれは海外勢に日本国債を購入してもらわなければならない時が来るかもしれません。ましてや「貯蓄から投資」を促すことで、日本の金融機関の預貯金を通じての国債購入原資は減ります。そうしたときに海外勢に国債を買ってもらうためには現状の低い金利では無理で、予期せず金利が急騰するリスクもそろそろ視野に入れておいたほうがいいかもしれませんね。

【小宮 一慶】


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