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新幹線に見る付加価値転換経済

経済トピック
2022.11.18

「新幹線、変わる「価値」 上越40周年、大量輸送からサービスへ   専用席で通話・ウェブ会議も」

という日本の新幹線の付加価値が変わり始めたことについての記事が、日経新聞の1116日朝刊ビジネス1面にありました。

 

記事のリード文としては

「高速・大量輸送で日本経済を支えてきた日本の新幹線が変わり始めた。東海道新幹線ではグリーン車より料金が高い特別車両の導入が検討され、ビジネス専用席の設置も相次ぐ。新型コロナウイルス禍で苦しんだ利用急減も教訓に、単純な輸送力より移動にともなう付加価値の提供を重視するサービス競争が始まる。」

ということでした。

 

2階建ての新幹線など、利用された方々もいらっしゃることと思います。バブル時代や、日本の人口構造や成長が揺るがないと思われていた時期にできた車両は、それこそ輸送量に伴う効率重視でした。

 

一方で、コロナ禍による利用者数激減や、一人当たりGDPや生産性の議論の高まりからも、移動に伴う付加価値の提供を重視するサービス競争が始まっているということです。

移動の時間においても、仕事ができるようなS Work車両の存在など、移動に伴う利用者の方の生産性そのものを支援する付加価値と、グリーン車だけではなく、グランクラスなど、より移動における快適さを強化して、経営的にも付加価値を上げるための取り組みが重視され始めています。新幹線ではありませんが、ななつ星やその他の超高付加価値車両などもあります。

 

このように、人口構造は、大きくは変えられませんが、移動の時間や人が生活するすべての時間においての付加価値そのものを見直す動き、付加価値が上げられないのであれば、スピードをより向上することによって、その人の生産性そのものへの貢献をすることなども含めて、日本のインフラが高付加価値化、または移動に伴う時間、コストの低減により生産性向上(高付加価値化は生産性向上につながる)を意識した改善が進んでいることを実感します。

 

生産性=アウトプット/インプット、であり、アウトプット(付加価値)を高める取り組み、または移動のスピードを上げる、または移動中に仕事をすることによってインプット(コスト・投入量)の負担を軽くする取り組みですね。

 

昨今、円安やインフレが進んでおり、企業や生活する人の様々なコストが上がってきています。

企業であれば付加価値額、生活をする人であれば給与所得を中心とした収入が増えなければ厳しくなる一方です。

新幹線にも表れているように、運ぶ量そのものはもはや増えない(以下に述べるインバウンドの増加は今後も想定されるでしょうが)ので、その生産性を意識して単価を上げていくことによって付加価値を上げる、そして労働分配率が変わらないのであれば、給与が上がる、と言うサイクルをとっていくことが急務であると感じます。

 

グランクラスであれば、グリーン車よりも高いお金を払ってでも乗りたいほどの付加価値があるのか、S Work席は仕事はできるが、単価そのものは普通の車両と変わりません。

新幹線のような既存の商品サービスにも、新たな付加価値を吹き込んでいき、お客さまに認めていただける付加価値を示しながら、しっかりと価格にも反映させていくことが、これからの日本の健全化においては不可欠であると感じます。

 

今後、円安の影響で、インバウンドのお客さまが加速度的に増加することも想定されます。

安倍政権の当初は、インバウンドの数は年間3百万人程度でした。それが年間30百万人(10倍)まで増加したという安倍政権の成果があります。GDPへの貢献は20兆円とも言われていました。

フランスの観光客は年間80百万人です。今後、さらに、日本の観光資源を生かして、インバウンドを呼び込むことができれば、GDP1割位は観光業が担えるようになるかもしれません。

日本の様々な観光資源や自然の美しさなどは、それが価値として対価につながっていない分、GDPに現れない、付加価値と言うこともできるでしょう。今後のインバウンドの増加と、観光業の発展は、この埋蔵された日本の観光資源を具体的な対価に落とし込むための活動ということができるかもしれません。

少なくとも、経済的に日本が発展し、かつそこに住む人々が給与所得も上がって豊かに暮らすためには、なるべくこのように付加価値に転換されていない価値を価格に落とし込んで経済活動に取り込むことが必要になってきます。

 

付加価値は必ずしもゼロベースで作る必要はなく、もともとある資源を生かし、組み合わせながらお客さまに喜んでいただければいいのです。人口構造や円安、インフレなど日本の様々な現状や今後想定される状況を想定すると、新幹線の取り組みのように付加価値を生み出すことや、観光資源や文化資源など眠れる資源を経済活動の付加価値に乗せることができるように発掘する活動が重要なのだと感じます。

あらゆる日本の魅力を活かして魅力を発信し付加価値に転換することは、経営において人の強みを活かすことと同じことです。

そして、それを支える具体的な事業を担っているのが経営に携わっている皆さまであり、働く方々なのです。

付加価値を意識して、少しでも経済的付加価値に転換できることを追求していく貪欲な姿勢が今の日本には必要です。


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