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防衛産業の現状と課題

経済トピック
2022.11.25

日本を巡る国際環境が厳しさを増す中で、防衛体制の強化が求められつつあります。防衛体制の強化の大きなテーマとして、防衛産業の維持、成長も必要となってきます。今回の経済トピックの中では、防衛産業の現状と、今後の維持、成長に向けた課題について考えてみます。

 

【防衛産業の現状】

日本において防衛産業は裾野が広く、三菱重工業などの大企業から下請け企業まで含めると、約1万社近くが携わっています。戦闘機で1,000社、護衛艦で8,000社関わっていると言われます。

 

1万社の企業が目指す国内市場は2021年時点で1.8兆円ほどになります。後述するように、装備品の海外輸出が難しいこともあり、国内市場以外の売上はなく、各企業の売上高全体に占める防衛分野の比率も平均4%程であり、とても主力事業と呼べるものではありません。

 

利益率も高くないと言われます。契約時点では8%程度の利益率が見込まれますが、契約から納品までが長期に渡る為、その間の原価上昇や仕様変更により利益が圧迫されます。近年ではサイバー攻撃の対処費用等の膨らみ、更なるコスト上昇に繋がっています。

 

低い売上高や利益の為、防衛産業から退出する企業が後を絶えません。過去20年で100社を超える企業が撤退しています。この状況を放置すると、防衛産業の弱体化=日本の防衛力の弱体化に繋がりかねません。

 

【防衛産業の課題】

現状でも見てきたように、日本の防衛産業は低売上・低利益による撤退が続いています。

この状況を改善する為には、海外に販路を広げ、防衛産業が売上・利益をあげやすい環境を整えていくことが大事です。

 

日本は、戦後の平和憲法下で武器製造は国内の防衛目的に限られ、海外輸出の流れは長いこと途絶えていました。

 

しかしながら、中国の軍事力課題を受け、2014年に「防衛装備移転三原則」を定め、日本の安保に資する場合などの一定条件下で海外に完成品の輸出を認めることとしました。

 

但し、輸出が可能な装備が輸送、警戒、監査などの用途に限定されたこともあり、完成品の輸出はまだフィリピン向けのレーダー1件しかありません。

 

このような状況を見直していく為には、①防衛装備移転三原則の手続き合理化、②海外市場をにらんだ官民体制の強化等を行い、海外での販路市場の拡大を図るべきとの声も一部の識者から上がっています。もちろん、国際情勢に不要な緊張を与えないことにも配慮しつつの検討が必要です。

 

また、長期契約でも一定程度の利益が確保できる仕組み作りも必要となります。

 

こうした取組みが、防衛産業からの企業撤退を抑制し、逆に中小企業も含めた防衛産業への参加を促すことになると思います。日本の防衛力強化の為にも、待ったなしの状況と言わざるをえません。


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