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経営者保証について

経済トピック
2022.12.23

今回は経営者保証について考えてみたいと思います。

 

20221223日の朝刊11面に「経営者保証 来年から不要に」という記事がありました。

「経営者個人が会社の連帯保証人となる『経営者保証』を不要にできる制度の全容が22日、判明した。20233月に経営者保証が不要になる新興企業向けの融資制度を始めるほか、民間の銀行と政府系金融機関に不必要な経営者保証を外すように求める。事業再生や新興企業の育成を妨げる一因となってきた融資慣行を官民で見直す。」

 

事業承継で経営を引き継ぐ際や新規事業を始めるにあたって、この経営者保証が経営者・後継者の心理的な壁になることが多いことは皆さまも実感されるのではないでしょうか。日本では経営・事業に失敗すると、身ぐるみ剥がされるというイメージがついて回るのは、この経営者保証と言う制度があるからであるといっていいでしょう。

 

もちろん、金融機関もリスクとリターンのバランスを取るため、低利で融資をするのであればそれだけ融資の貸し倒れリスクを低減したいというのもビジネスの原則としては妥当です。

経営者保証は、このような金融機関側のリスクとリターンのバランスをとることと、経営者が経営にコミットする環境を作るという目的があります。安易に事業を始めて借り入れるだけ借り入れて事業をやめてしまう、というようなモラルハザードを防ぐために一定の責任を背負ってもらう仕組みです。安易に失敗されては困るということですね。

先行きがある程度読みやすかった時代において地道に事業を継続していくことによって、大きな成長まではいかなくとも融資をした金額を返せる位の経営ができる環境であれば、この経営者保証によるコミットメント効果が機能したのだと思います。

 

 

しかし、VUCA(社会あるいはビジネスにおいて、不確実性が高く将来の予測が困難な状況であることを示す造語: Volatility(ボラティリティ:変動性)」「Uncertainty(アンサートゥンティ:不確実性)」「Complexity(コムプレクシティ:複雑性)」「Ambiguity(アムビギュイティ:曖昧性)」の頭文字を並べたもの)と言われる時代の中で事業を新たに創造する、事業を承継し変化に対応していくとことを担う経営者・後継者の立場で考えれば、先行きがわからない中で、経営に失敗したら、身ぐるみ剥がされるというこの経営者保証の制度は、開業をする、事業を引きつぐというアクションの大きな障壁になる事は間違いありません。

 

生物の進化の過程を見ても、変化が激しい時代には「自然選択」が行われて、変化に適した特性を持つ種が生き延びるようになっています。

氷河期において、恐竜が滅びて小動物や爬虫類のような生き物が生き延びたのも、体の表面積が広く気温の変化の影響を受ける特性を持つ恐竜が氷河期と言う変化に不向きであり、小動物や爬虫類はその逆であったというだけです。

これを会社に置き換えると、様々な事業の柔軟性を持ちながら変化に対応していく。そして変化に対応できなかったならば、事業の継続ができないことを意味します。

VUCA時代の経営は、軌道修正や失敗がつきものであり、それが常態化するでしょう。そのような時代に経営者として、リスクを取ることはとても価値があることであり、誰もができることではありません。

 

とはいえ金融機関の立場として、過剰なリスクをとって経営者の輩出を支援するわけにもいきません。おそらく、これからの変化の時代は今まで以上に倒産・廃業による貸倒れリスクが高まることが予想されます。

経営者に過度な心理的負担を与えない、そして金融機関にも過剰なリスクをとらせない、そのための信用保証制度によって貸し倒れリスクを賄う事は制度としての妥当性はある考えます。

特に創業5年以内は経営者保証をとらない信用保証制度は、創業を後押しする一定の効果はあるのではないかと思います。

 

ドラッカーは書籍「マネジメント」において、「マネジメントとは、成果に対する責任に由来する客観的な機能である」と言っています。

マネジメントは組織をして成果を上げるための機能であり、会社という組織において、ドラッカーのいうマネジメントを実践しているのが経営者です。

ヒト、モノ、カネ、情報など、様々な集合体である組織は、マネジメントがあってはじめて商品サービスを世の中に提供し、顧客や世の中に貢献することができます。

 

そのための機能を担っている経営者のなり手を、過剰なリスクで縛るべきではないと考えます。もちろん、経営者としては財務的健全性を維持しながら、財務規律の範囲での投資活動を行うことが求められることは言うまでもありません。そういったことは創業してから学んで体験していただければよいのだと思います。


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