12月19日~20日に開かれた日本銀行の金融政策決定会合にて、いわゆる異次元緩和の修正が決定されました。事実上の「利上げ」と受け止められ、金融市場に与える影響も大きかった今回の決定。
今回の決定に向けた「これまでの経緯・背景」、「今回の決定の内容・意味合い」、「政府・企業・家計に与える影響」の3つに分けて考えてみたいと思います。
「これまでの経緯・背景」
現在の日銀・黒田総裁が13年3月に就任して以降、デフレ脱却を目指して大規模な金融緩和を打ち出してきました。その目的は、金利を低位に保つことで、企業が低い金利で資金を調達し、設備投資や事業拡大に向かうことでした。
しかしながら、なかなかデフレ脱却を実現できなかったこともあり、16年には短期金利をマイナス0.1%、長期金利を0%程度に誘導するイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)を導入しています。
10年間に渡り金融緩和を継続していましたが、今年に入り状況が大きく変わりました。それは米国がインフレ抑制等を目的として利上げを踏み切ったことにより、日米の金利差を起因とする円安・ドル高が加速します。円安はエネルギーを始めとした輸入物価の高騰に繋がり、世論の不満も大きくなっていました。
「今回の決定の内容・意味合い」
今回の日本銀行の金融政策決定会合の骨子は以下の通りとなります。
①長期金利の上限を0.25%から0.5%程度まで許容する。これまでは0.25%に抑えるように国債の購買を行っていましたが、0.5%までは許容するというものです。
②長期国債の購入額を毎月7.3兆円から毎月9兆円程度とする。
③短期金利のマイナス金利政策は変えない等、金融緩和政策は維持。
②・③を踏まえると、金融緩和を可能な限り維持したい思いも伺えますが、①は実質「利上げ」と金融市場では捉えられています。
実際、12月20日を境に長期金利は上昇し、本記事を書いている12月26日時点では長期金利は0.445%となり、上限の0.5%に近い数値となっています。また、1ドル137円近辺にいた為替相場も、131円近辺まで円高が進みました。
「政府・企業・家計に与える影響」
(政府)
現在、日本の国債残高は23年度末で1,068兆円に達する見通しです。これだけの国債でも財政が成立していたのは、低金利であったこともあります。
財務省の推計によると、金利が1%上がると元利払いにかかる負担が3.7兆円上振れ、2%上昇なら7.5兆円になります。これは公共事業費総額を超える規模です。
このような国債の負担増大は、重要政策に振り向ける原資が減少することとなります。
(企業・家計)
企業については、借入負債の金利上昇が収益を圧迫する懸念があります。特に財務基盤が弱い企業を中心に、設備投資を手控える可能性があります。
家計については、住宅ローンの金利上昇があります。但し、今回は長期金利の利上げのみとなりますので、金利固定型の住宅ローンのみが金利上昇の対象となります。
上記の影響はあくまで今回の決定の範囲となりますので、今後短期金利のマイナス金利等が見直されること等により、更に影響は拡大してきます。
今後も日銀の金融政策は注視が必要です。