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『わたしが、認知症になったら』を読んで

知恵のバトン
2023.01.10

昨年読んだ本の中では、もっとも大きな勇気をいただいた一冊でした。

「わたしが、認知症になったらー介護士の父が記していた20の手紙」
https://www.amazon.co.jp/dp/4502446211/

著者は、原川大介さん。実は、当社のコンサルタント養成講座の卒業生です。
KCに入社すると、この養成講座を無料で受講することができます。原川さんは、入社したばかりの私と一緒に受講した同期です。

認知症についての解説もありますが、教科書的な本ではありません。介護職を長く勤めてきた原川さん自身が「父であるわたしが認知症になったら、どのようにしてほしいか」を自分の娘に向けた手紙として書いています。この手紙からは、自分と向き合い、家族も自分も幸せとなる最期を迎えるための考え方を学ぶことができます。

本書全体を通じて感じるのは、原川さんが一人ひとりの人間の価値観を尊重しようとしていることです。それは決してきれいごとではなく、私たちの弱さや愚かさもありのままに捉えた現実的な生き方、考え方が語られています。そのあたりが、私にとっては勇気が湧いてくる内容でした。また、この本を世に出すための彼の努力と行動力からも勇気をもらいました。

あらためて、年末に読み返していて、ふと「彼がなぜ『自分の娘に向けた手紙』という表現を取ったのだろう」と思いました。
一人ひとりの価値観を大切に、利用者本位で考えようというのが介護職の基本的な姿勢です。ただ、よく知らない我々からすると「利用者本位」という言葉が、きれいごとのように響いてしまいます。「相手の立場に立って」とは、言葉でいうほど簡単ではありません。

本書の隠れた意義は、相手の立場に立ったら世の中がどのように映るのかを描いたところにあるのだと思います。これは原川さん本人にとっても、介護やそれを取り巻く環境が、利用者やその家族から見たらどのように映るのか、あらためて深く考えることになったのではないかと思います。

「ああ、つまり、お客さま第一なのか…?」
お客さま第一もまた、誤解の多い言葉です。お客さまに尽くすこと…のように思われがちですが、本質は違います。お客さまの立場に立って、商品・サービスを考えるということです。しかしながら、自分たちに都合のよい想像でお客さまを捉えているだけになっていることがよくあります。とはいうものの、これも悪気がないから厄介です。「良かれ」とは思っているわけです。

本書の最後に「もっと「助けられ上手」になりましょう。」という言葉が出てきます。提供する側から見れば、良かれと思って介護サービスの充実を考えます。しかしながら、利用者、ご家族の立場に立った時に見えてくるのは、「私たちが助けられ慣れていない」ことによる問題だと原川さんは指摘しています。このことを生々しく伝えるために「娘に向けた手紙」という表現をとったのだろうと思い至りました。

…深読みしすぎですかね、原川さん。同期として答え合わせさせてください。


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