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金利上昇が経済に与える影響

経済トピック
2023.01.06

日銀が長期金利の許容幅を従来の-0.25%+0.25%から-0.5%+0.5%への拡大を発表しました。黒田日銀総裁は、「利上げではないし、出口戦略の一歩でもない」と説明していますが、変更直後に長期金利も為替も大きく変動し、実質的な利上げであり異次元金融緩和政策の出口に向けての第一歩だと言えます。

 

米国のFRBも欧州のECBも減速したとはいえ利上げを継続しています。日本の本来の長期金利の水準は0.8%1%程度と言われており、日銀は2023年も長期金利の更なる許容幅の拡大(実質的な利上げ)や現在も据え置いている短期金利のマイナス金利政策を解除する可能性もあります。48日の黒田総裁退任が方針転換をするきっかけになるかもしれません。

 

日本は長年金融緩和が継続されており、もはや金利が上がる実感が無いという方も多い気もしますが、金利上昇は経済に大きな影響を与えます。

すぐに影響が出るものとしては株価です。金利が上がると企業の支払利息が増え、業績が悪化します。また成長投資のための新規借入も減るため経済全体の生産活動も停滞し、資金循環も悪くなり、結果的に企業業績に悪影響がでます。預金のメリットが増えるためリスクのある株式への投資が抑制されるという面もあります。そのような総合的な理由で金利上昇は株価にとってマイナスに作用します。日経平均株価も今回の許容幅の変更に伴い大きく値を下げてしますし、米国も欧州も2022年は株価が下落しました。

 

不動産市況にも悪影響が出ます。利上げは身近なところでいうと住宅ローン金利の上昇に繋がります。日本国内でも長期金利に連動する住宅ローンの固定金利は既に上昇し始めており、今後の不動産市況への影響が懸念されます。米国では秋口に30年ものの住宅ローンの金利が2002年以来、およそ20年ぶりに7%を超えました。上昇幅は一年間で約4ポイントです。仮に返済期間30年、借入金額3000万円だった場合、金利が0.5%から1.5%に上がった場合、返済総額は約3230万円から約3730万円と500万円ほど返済総額が増加します。7%になると返済総額は驚きの約7190万円です。

 

金利は為替にも影響を与えます。投資家はより金利の高い国の国債を購入したり、金利の高い国へ預金したりする傾向があります。為替は諸外国との金利差で変動するので、米国や欧州の金融政策にも左右されますが、金利が上がるとその国の通貨が買われ通貨の価値が上がります。2022年の年始に1ドル115円程度だった為替が10月には一時150円まで下落しました。これは利上げをする米国に対して日本が金融緩和の姿勢を崩さなかったことが要因です。FRBの利上げ減速や今回の日銀が長期金利の許容幅を変更し実質利上げを行ったことで円高が進み、現在は130135円のレンジで推移しています。

 

2022年は米国・欧州において歴史的に金利が変動した一年でした。日本としても長年維持してきた方針を転換した年だったと言えます。2023年も金利の影響で沢山の経済的波乱が起きそうな予感がしますので、注意深くチェックしていきたいです。


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