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賃上げについて

経済トピック
2023.01.27

欧米を中心としたインフレの波が、ようやく日本にも影響を及ぼしはじめ消費者物価指数も202212月の消費者物価指数も前年比4%上昇に達しました。

もともと経済が強くない日本においては、スタグフレーション(景気の回復のない物価上昇)の様相を呈してきました。

 

法人企業統計調査によると20227月~9月の経常利益は前年同期比18.3%増となっていながらも人件費は1.7%の減となっています。利益が人件費に回っていないことを示しています。当然、このままでは実質賃金が下がり労働者の生活が苦しくなってしまいます。

 

このような状況の中で、日本企業にも賃上げの空気がでてきています。最近の日経新聞などを見ると毎日なにがしかの賃上げの記事が出ています。

賃上げについて、個別の企業の賃上げの決定や、連合が春闘で5%程度の賃上げ要求を掲げるなどさまざまな記事があります。

ユニクロが4割の賃上げを行うことは、かなり大きなインパクトをもって受け止められたのではないでしょうか。

一方で、城南信用金庫の調査によると、賃上げを実施しないとしている企業は7割を超えているということです。

 

ユニクロや経団連の企業と中堅・中小企業の違いは、グローバルに活躍する企業と日本という地域・ローカルで活躍する企業と言えるかもしれません。低成長の日本で商売をする中堅・中小企業はインフレの影響をもろに受け付加価値が上がりづらいです。一方で、ユニクロなどグローバルな企業は海外の旺盛な需要を反映させて、また輸出産業であれば円安も追い風として好業績にもつなげられたという観点も考えられるでしょう。

 

上場企業の大半はグローバル企業であり、これらのグローバル企業は海外との取引の中で競争力を高めながら付加価値を上げてきました。一方で、日本の9割以上の企業は、日本を土台としながらサービスを提供する人とサービスを受ける人が近接したローカル事業を営んでいます。先ほども述べたように日本はこの30年間成長がなく給与も上がっていません。そのため日本を土台としてローカル事業として活躍する中堅・中小企業においては、一人当たり付加価値が上がるめどが今のところ立っていません。

 

そのような中で、上場企業を中心としたグローバルの企業と同じ水準で賃上げをしても、事業が苦しくなるだけです。

グローバル企業である多くの上場企業に対して、ローカル企業である中堅・中小企業は付加価値の上昇余地が少ないのです。

結局、日本を市場としているために、お客さまである日本人の方は、給料が30年間上がってない人たちになってしまうのです。そのため商品サービスに対して払う金額が制限されて、付加価値そのものが上がらないという負のスパイラルに陥っています。

円安やコロナ禍からの脱却によりインバウンドが増えることは、日本のサービス業にとっては追い風になると考えられます。うまく日本人以外の方からの需要を付加価値に転換する取り組みが求められます。

 

中堅中小企業においても、この賃上げの流れに応じて、自社も賃上げしなければならないのではないかというプレッシャーを感じている会社が多いようです。

 

当然従業員の方も賃上げがなされなければ実質賃金が下がり生活が苦しくなるため、働く人を活かし経済的にも幸せにするためにも必要なことではあるでしょう。また、人材採用においても、QPS(採用QPS)が有効であるため、給料を上げる事は、当然ながら採用競争力を強化することにはつながります。

一方で、従業員の方や採用される人にとってみれば、企業そのものの継続性が重要になります。だからこそ、付加価値の向上が伴わない短期的な賃上げは、彼らを幸せにするとは限りません。将来ビジョンに向けた道筋の中にあるストーリーとしての賃上げであれば、好意的に受け止められるでしょう。

 

大切な事は浮き足立たないことだと思います。改めて、一人当たりの付加価値額が増えていかないのであれば、賃上げをした分会社に残る金額が減るだけなのです。

賃上げの要請は、強烈な付加価値の向上、一人当たり付加価値の向上、生産性改善の圧力がかかっていると考えるべきです。賃上げをする事は一人当たりの人件費の向上につながり、労働分配率を変えないとするならば一人当たり付加価値の向上に対する圧力がかかるのです。

マーケティングとイノベーションを通じてQPSにおけるP:プライス(価格)を上げる、つまり、Q(商品サービスそのもの)の価値とS(その他の要素)の価値を上げることによって、それに釣り合うP:プライス(価格)の金額を上げることの工夫が求められるということです。

 

賃上げの流れ自体は推進していくべきでしょう。日本がこの30年間GDPも上がっておらず、一人当たりの給料も上がっていません。まずは一人当たりの給料を上げることで、付加価値向上の圧力をかけながら、個々の企業がマーケティングとイノベーションを推進して、ひいては日本のGDPそのものが底上がっていくという未来を目指したいところです。

結局、この30年間、日本が成長しなかったのは、マーケティングとイノベーションを怠ってきたからに他なりません。それぞれの個別の企業がマーケティングとイノベーションを強化して付加価値を上げていくことこそが、これからの日本に求められます。

 

特に労働者の9割、そしてGDP7割を担う中堅・中小企業のローカル企業が賃上げを実現できなければ、日本そのものの経済が良くなるわけがありません。グローバルの一部の企業だけが賃上げをするだけでは、単に2極化が進むだけになってしまいます。

 

付加価値そのもののボトムアップが求められる中で、中堅中小企業が付加価値を上げることが急務であるといえます。国に対して税金を下げろとか、育児の支援をしろとか、色々と注文をつけることもできますが、中堅・中小企業である皆さんが一人当たり付加価値を向上させて給料を上げることから流れを作ることが一丁目一番地です。むしろそれ以外に日本が再生する道は無いのではないかと思えるぐらいです。

皆さんにとってみれば押し付けられた価値観かもしれませんが、日本が経済的な豊かさを維持・向上させるには、もはやそうする以外にないように思います。中堅中小企業である皆さんが工夫をすることによって、一人当たり付加価値を上げてしっかりと賃上げを実現していくことが、これからの日本にとって不可欠なことだと思います。


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