地方銀行の再編、具体的には地方銀行間の統合が加速しつつあります。
1月26日には横浜銀行を傘下に置くコンコルディア・フィナンシャルグループが、同じく神奈川に地盤を置く神奈川銀行を完全子会社化する検討に入ったと発表しました。日本経済新聞でも大きく取り上げられていたので、目に止まられた方も多いかと思います。
本件に限らず、22年から地方銀行再編の報道が増えています。以下、少し列記してみたいと思います。
・青森県:青森銀行、みちのく銀行が「プロクレアホールディングス」を設立
・長野県:八十二銀行と長野銀行の統合合意
・愛知県:愛知銀行、中京銀行が「あいちフィナンシャルグループ(FG)」を設立
・福岡県:ふくおかFGが福岡中央銀行の完全子会社を表明
この他にも、SBIホールディングスが複数の地方銀行に出資する等、外部から地方銀行の再編を図ろうとする動きもあります。
今回は、なぜ地方銀行の再編がここに来て続いているのか、また今後の見込みについて考えてみたいと思います。
(地方銀行の再編が増えている理由)
これは複数の理由があると思いますので、以下、それぞれの理由ごとに考えてみます。
①日銀の金融政策の変化
2013年以降の金融緩和、特にマイナス金利政策等は銀行の収益をかなり厳しいものにしていました。マイナス金利が始まった16年からの6年間でみると、地銀、第二地銀全体の最終利益は約3割落ちています。
しかし、この状況に変化が見られます。日銀は昨年12月に長期金利の上限を0.25%から0.5%に引き上げ、実質的な利上げに動きました。今後、日銀総裁交代というイベントを控え、更なる利上げ等も見込まれています。
利上げは、融資や債券運用で稼ぐ銀行の収益を改善していきます。そして、規模が大きくなるほど「規模の利益」が働くほど、収益も更に高まっていきます。このことが、地方銀行がここに来て統合等の再編を進めている理由です。
②地方・地域の構造変化
地方や地域において人口や企業が減る中で、複数の地方銀行が金利競争を繰り広げれば、自ずと地方銀行の経営が厳しくなってきます。経営が厳しくなった結果、地方銀行の商品・サービス提供能力が弱くなれば、更なる地方・地域の衰退にも繋がります。
こうした状況も、地方銀行が再編を進めている大きな理由の一つです。
③その他
上記①、②以外にも、日銀や金融庁が再編する銀行に対して提供する各種支援策の期限切れが迫っていることも指摘されます。また、若年層減少の中での採用力強化や、システム投資等の固定費負担軽減も理由として考えられます。
(今後の見通し)
上記のような理由を考えて行くと、地方銀行の統合は今後も進んでいくことになりそうです。
特に大都市圏以外の地方、地域において、1県の中で複数の銀行が存在している場合は、今後再編が進む可能性があります。該当する銀行と取引されている企業様は、少し取引行の動向は注視した方がよいと思います。