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農林水産物・食品の輸出拡大のために業界は結束を強めるべき

経済トピック
2023.02.10

農林水産省が2月3日に発表した2022年の農林水産物・食品の輸出額は過去最高の14,148億円となり、2021年比では14.3%の増加となりました。

日本の輸出は工業製品中心のイメージが強いと思いますが、実は農林水産物・食品の輸出は増加傾向にあり、2022年は10年連続で過去最高を更新、10年前の2012年と比較すると3倍以上の金額になっています。

 

政府は令和211月に「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」を発表し、農林水産物・食品の輸出額を2025年に2兆円、2030年に5兆円にすることを目標としています。この戦略では輸出拡大の余地が大きい重点品目としています。これまで牛肉やホタテ貝、リンゴ、ウイスキーなど28品目を指定していましたが、昨年12月に29品目に錦鯉を指定したことで話題になりました。

 

日本の農林水産物・食品の輸出が増加した背景の一つにインバウンドの増加があります。日本に旅行に来て、日本の農林水産物・食品の品質の高さを知り、自国に帰ってからも食べたいというニーズが増えました。長い歴史で洗練された日本の食品は日本酒や焼酎などのようなアルコールのほか、味噌・醤油などの調味料においても独自性が高いものが多いです。しかし、そのような加工食品以外の一次産品である農林水産物の評価も非常に高いです。牛肉は10年で輸出額が約10倍になりましたが、和牛のようなにサシが入って柔らかい牛肉は海外ではほとんどお目に掛かることはありません。ブリは前年から3割以上輸出額が増加しており、水産物の輸出額ではホタテに次ぐ2位となっていますが、ブリは日本近海特有の魚種であり、あれほど身に引き締まって脂の乗った魚は他には無いそうです。リンゴにしても日本のリンゴほど甘みと香りが強いものは海外のスーパーや市場で探してもありません。

日本は自動車のような工業製品の国というイメージが強い方が多いと思いますが、実は高品質な農林水産物・食品の生産・製造においては世界トップクラスの国なのです。

 

しかし、品質が認められ輸出は増加傾向であるものの、米欧と比較するとその金額はまだまだ見劣りします。アメリカの輸出額は日本の24倍もあり、国土が九州ほどしかないオランダでも日本の15倍もあります。202216日付の日本経済新聞によると、日本の食品産業の国内生産額に占める輸出の割合は2%ほどで、米国は12%、オランダに至っては95%に達するそうです。

これらのデータと日本の農林水産物・食品のポテンシャルを考えると、まだまだ成長の余地はありそうです。日本は農林水産物・食品の製造において大規模化が遅れて業界が多く、それが生産性の低さや業界全体の輸出戦略の弱さに繋がっています。

昨今では大規模農家の比率も高まり価格面での国際競争力も高まってきています。今後は国内での販売競争だけでなく輸出の拡大を見据えて業界全体が結束していくことが望まれます。


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