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中小企業の賃上げ状況と影響

経済トピック
2023.03.10

1月頃より新聞やニュースでは賃上げの報道が続いていました。エネルギーや食料品等をはじめ、幅広く物価高が続いていたこともあり、大企業を中心に賃上げを表明する企業が沢山あります。

 

よく知られている企業で例示すると、下記のようになります。

・キャノン:20年ぶりにベア実施、3.8%賃上げ

・アサヒビール:5%の賃上げ検討

・サントリーHD:6%を超える賃上げ検討

・ファーストリテイリング:給与制度改定、国内正社員の年収最大約40%引き上げ

その他にもグローバルで展開している企業を中心に大幅な賃上げの報道が行われています。

 

それでは、中小企業の賃上げ状況はどのようになっているのでしょうか。商工中金が221112月に実施した調査では、23年の賃上げ率見込みは1.98%で、22年実績(1.95%)とほぼ同じ水準となっています。

1月の消費者物価上昇率は前年同月比4.2%となっていますので、物価上昇と比較すると賃上げ率は抑えられていると言わざるをえません。

 

この原因として、原材料価格やエネルギー費用が高騰しているのに加えて、中小企業は高騰したコストを価格に転嫁しきれていないことがあげられます。

中小企業庁の調査では、コスト増を受けた発注企業等との価格交渉が全くできていない中小企業は13.9%あったとのことです。価格転嫁ができたとしても、コスト増分を十分に転嫁できていない中小企業もたくさんあることも想定されます。

 

これは中小企業の収益悪化にも表れています。企業規模別の経常利益でみると、資本金10億円以上の企業は6%増と8四半期連続で増えているものの、資本金1億~10億円の企業は3%減、資本金1千万~1億円の企業は18%減と減少しています。規模が小さいほど収益が悪化しています。

 

実際、私も企業の昨年の決算状況等を拝見させて頂くことがありますが、傾向として前年度よりも売上は上昇しているものの、転嫁が不十分等により粗利が伸びず、エネルギーコスト増加等により営業利益が減少している企業が多く感じます。

 

上記のような収益悪化により、中小企業は物価上昇に対して十分な賃上げに至っていないと考えられます。

 

次にこの影響について考えてみたいと思います。

物価上昇に対して賃上げが十分ではない為、実質的には賃金が目減りすることになります。実際、厚生労働省によると、1月の実質賃金は4.1%減少したと発表されています。

 

実質賃金が減少すると、購買意欲も減少する為、消費が冷え込み、景気悪化につながりかねません。

 

また、大企業と中小企業との間で賃金格差が発生すると、中小企業の人材採用が更に難しくなる懸念があります。コロナ禍による経済活動回復に伴い、企業の人手不足感が高まっています。そうした中で中小企業の人材採用が難しいと、事業継続にも影響がでてくるかもしれません。

 

こうしたことを踏まえると、簡単なことではないですが、中小企業においても、足元はコスト増の価格転嫁を進めること、また付加価値向上等により収益を改善し、賃上げを進めることが求められていると考えます。


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