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創業家への代表権付与はイトーヨーカ堂幕引きの序章か?

経済トピック
2023.03.17

セブン&アイ・ホールディングスは9日、総合スーパー、イトーヨーカ堂の店舗を20262月末までに2割超削減すると発表しました。

イトーヨーカ堂は19932月期に売上高14975億円、営業利益 839億円と最高益達成以降、長らく低迷が続き、この7年間で黒字になったのは1度だけ。現在ではセブン&アイグループのお荷物的な存在となってしまっています。

 

公表されている直近の数字を見ても第3四半期(202211月期)までの累計で売上高(営業収益):7843億円、営業利益:-56億円と相変わらず厳しい状況が続いています。しかし総合スーパーが苦戦しているのはイトーヨーカ堂に限った話ではありません。総合スーパーで日本一の売上を誇るイオンGMS(総合スーパー)の業績は売上高(営業収益):23916億円、営業利益:-148億円と同様に赤字です。日本一の売上規模がありながら営業赤字に陥るというところにビジネスモデルの限界を感じます。

総合スーパーの衰退の原因は競合する業態と比べて良い商品を適正な価格で提供できなかったことに尽きると思います。2000年以降、総合スーパーはユニクロやニトリのような専門店、ドン・キホーテのようなディスカウントストア、Amazonを中心としたネット通販などにシェアを奪われ続けてきました。個人的にも以前と比べると総合スーパーで買い物をする頻度は減りましたし、妻の購買行動を観察しても食品以外で購入するものと言えば学校の上履きなど、どこで買ってもあまり変わらないような商品が中心です。

 

このように総合スーパーが衰退しイトーヨーカ堂が店舗を削減するなか、イオンについては引き続き出店を継続しています。イオンの強みは総合スーパーを核としたモールやショッピングセンターのディベロッパー事業や、買い物客に対する総合金融事業です。第3四半期までの累計営業利益はディベロッパー:333億円、総合金融:426億円と総合スーパーの赤字を埋めるのに十分な利益を出しています。

現在イオンが運営するイオンモールは海外含め約200店舗展開しているのに比べて、セブン&アイが運営するアリオは21店舗に留まっています。前述のようにイオンモールは新規出店を続けているのに対し、アリオは数年前に新規出店を凍結しています。

 

セブン&アイはコンビニが引き続き高い利益をあげ、海外コンビニ事業も堅調です。一方でそごう・西武売却やイトーヨーカ堂縮小とコンビニ以外の業態についてはリストラの動きが続いています。4月から創業家の伊藤順朗取締役が代表権を持ちスーパー事業の立て直しを主導することがイトーヨーカ堂店舗縮小と共に発表されました。セブン&アイ発足以降、創業家の出身者が代表権を持つのは初めてということですが、祖業の幕引きというアンタッチャブルな領域を創業家に任せるという裏の意味もあるのではないかと思います。奇しくも創業者で現・名誉会長の伊藤雅俊氏が310日にお亡くなりになりました。このことでイトーヨーカ堂縮小が加速するかもしれません。


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