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金融危機はやってくるのか

小宮一慶のモノの見方・考え方
2023.03.28

米国のシリコンバレーバンクの破綻にはじまり、それがスイス大手のクレディスイスに飛び火し、米国や欧州の銀行株が大きく値を下げています。金融危機となるかどうかの瀬戸際にいると言っても過言ではないでしょう。
銀行は、本来、資金をそれほど多く持っていないということをまず理解しておかなければなりません。というのは、銀行は預金されたお金を貸出しに回すか、債券や株式などで投資をすることで利益を得ています。つまり、預けられた資金の大部分は運用に回されており、銀行自身は資金を多く持っていないのです。そして貸出しに回したお金は、当然、借り手が期日まで借りることができる一方、預金はいつでも引き出せます。たとえ定期預金であっても、金利が低くなることを覚悟すれば、期日前でも引き出せます。そうすると何らかの理由で一気に預金の引き上げが起こった場合には、どの銀行も対応できないのです。取り付け騒ぎが起これば、ひとたまりもありません。
今回の危機の発端はインフレにより米国の中央銀行であるFRBが政策金利を急速に上昇させたことです。それにより、仕組みを説明すると煩雑になるので、結論的にシリコンバレーバンクが保有する国債などの債券価格が急落し、シリコンバレー銀行が危ないといううわさが流れ、取り付け騒ぎとなり、あえなく破綻したわけです。
通常、銀行はALM(アセット・ライアビリティ・マネジメント)を行っています。これは簡単に言うと、貸出しや債券などの資産と預金などの負債の満期の期日をある程度合わせることにより、金利が上下した際のリスクを回避するというもので、銀行経営の基本中の基本ですが、FRBのパウエル議長が言うまでもなく、シリコンバレーバンクはその基本的な操作を怠っていたのです。それに加え、ハイテク企業への融資が多く、現状のテック企業への逆風もあり、リスクが増し、預金が引き出され破綻したのです。
先ほども説明したように、銀行は基本的に十分な資金を持っていないので、「危ない」ということで取り付けが起こると、どんな銀行でももちこたえられません。もちろん、金融当局や政権は、銀行破綻の連鎖を食い止めようと必死になります。米国の場合だと、通常はFDICにより保護される預金は25万ドルですが、今回は無制限に保護すると発表しています。スイス政府はクレディスイスに対し、多額の資金支援をするとともに、スイスの大手銀行であるUBSによる買収を決めました。そうやって、金融危機の芽を早めに摘み取ろうとするのです。必死です。
しかし、現状は不安がすべて払しょくされたわけではなく、欧州ではドイツ銀行をはじめとし、多くの銀行の株価が大幅に下落しています。
そして、各銀行は、こういう状況になると、自行の資金確保のために、融資を削減するなどの対応策を取らざるをえなくなり、これが、一般企業の破綻につながることにもなりかねません。
現状、日本の金融機関に不安は小さく、そういうこともあり円が買われ少し円高に推移していますが、何度も言いますが、どの銀行でも取り付け騒ぎが起こると、ひとたまりもありません。
余談ですが、米国の預金保険機構であるFDICは、以前は保護する預金の上限は10万ドルでしたが、今は25万ドルです。一方、日本の預金保険機構はずっと1000万円が限度額です。これも日本が長い間成長せず、国民の資産も多くは増えていないということを表しているとすれば、とても残念なことですね。


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