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社会人としてリーダーは何を語るべきか

知恵のバトン
2023.03.28

まさに白駒の隙を過ぐるが如し。3月も間もなく終わり新たな期を迎える時節となりました。4月に至り新入社員を迎える企業もあれば、採用が叶わなかった企業もあるでしょう。私自身は有り難いことに毎年20名前後の新入社員の採用を継続している北海道の建設会社様で“社会人事始め”の場に臨みます。毎年、入社式直後から1週間の新入社員研修を預からせて頂くわけですが、毎年その責任の重さと共に、恍惚と不安を抱いて澄んだ目を輝かせる新社会人に出会うたびに自らの初心を思い出します。初心とはつまり“必死”であることです。

3月20日付の日経新聞電子版で「新入社員の挑戦意欲、最低に」との記事が掲載されていた。新入社員525人に「働くうえで大切にしたいこと」を複数選択で尋ねたところ、「失敗を恐れずにどんどん挑戦すること」は24.8%、「何があってもあきらめずにやりきること」は13.9%。いずれも調査を始めた10年以降で過去最低という(リクルートマネジメントソリューションズ社調べ)。一方で大切にしたいことのトップは「仕事に必要なスキルや知識を身につけること」(49.0%)で10年前から11.5ポイント増えたとのこと。さらに「周囲との良好な関係を築くこと」(45.0%)は過去最高の水準であったという。若い世代が望んだわけではないだろうが、過保護に育っているのが影響して失敗を過度に恐れる傾向があるという。ならばなおさら“必死さ”を伝えたい。このことを最初に知らなければ、20年後もリーダー枯渇の社会になってしまう。それが私の危機感です。“必死さ”がなければ、わが国固有の無形財産だった「勤勉さ」が失われていく。

ちょうど若い世代に社会人として大切なことをお伝えするのに好事例が満載の出来事があった。WBCの日本代表“侍JAPAN”の行動である。優勝したことは結果として本当に素晴らしいことだが、それ以上に個人的に有り難いと感じたのは、海外メディアでも称賛をもって取り上げられた日本人としての“礼を尽くす”姿である。ではその「礼」とは何か。このテーマが新入社員に最も時間を割いて伝えているテーマです。古典(人々が何千年も正しいと言ってきた正しい考え方)に則って、一言で「礼」を語るならば、それは「仁」と「義」の実践である、とお伝えします。「仁」とは社会とその構成要素である組織、あるいは社会の最小単位である「家」において必須の人間としてのあり方を説く言葉です。つまり他者に対する思いやりと優しさ、人間としてそうした人間性の発揮無くしては社会も組織も成り立たないという最重要の徳目です。『論語』では「死して後やむ」(死ぬまでやめない)のが「仁」であるとされています(『論語』泰伯第八)。そして「義」とは人間としての正しい道を示した言葉です。私は分かり易くするために“世の為人の為か”を問うことだとお伝えしています。この2つはどちらかだけではだめで、「仁」「義」二つを統合させて実践することが「礼」なわけです。学ぶことは必死さの始まりです。幕末維新の志士たちが共通の原理としていた「知行合一」が今も求められます。スキルはどんどん追い求めたらよい、しかしそれと同時に人間としての成長、つまり礼を尽くす人間としての成長を目指さなければ流行の“ウェルビーイング”(より良く生きる)こともままならない。100年前、冒頭の建設会社様の創業者が遺した『創始者の遺訓』には「社内の融和と団結」「世の為人の為に尽くせ」等の「仁」「義」の言葉と共に、仕事に人生に必死であることを基本精神とせよとの教えが事業に刻まれて今日の発展に至っています。要すれば「義を見てせざるは勇無きなり」との孔子教えを日本人の心のあり方にまで高めた武士道の精神が貫かれているのです。この事の本当の意味を分かち合って、新入社員だからこそ仕事をする上で最高のことを共有したい。最初が肝心。だからこそ最高を伝える。皆さんの会社でも新入社員がいるかいないかにかかわらず、春宵一刻、最も大切なことをもう一度分かち合って船を漕ぎ出しては如何でしょうか。


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